採用の歩留まりとは、応募から入社までの各段階で、前の段階の人数のうち次の段階に進んだ人の割合です。計算は「次の段階の人数 ÷ 前の段階の人数 × 100」で、段階ごとに出します。改善の要点は、全体の数字ではなく、一番大きく減っている段階を見つけ、その段階の原因を1つずつ潰すことです。内定の後に辞退が多い会社では、選考の途中の連絡の遅さと、労働条件の示し方が原因になっていることが少なくありません。この記事では、段階別の計算表の見本と原因の見分け方を先に示し、後半で連絡の期限と条件の示し方を直す手順と、歩留まりを追うと起きやすい落とし穴を扱います。
候補者が途中で減っていく構造
選考の途中で候補者が減る理由は、候補者の側の事情だけではありません。会社の側の進め方で、次の4つが起きています。
- 連絡が遅い:応募から最初の連絡まで、面接から結果の連絡までに日数がかかり、その間にほかの会社の選考が進みます
- 選考の回数が多い:面接が3回、4回と続くと、そのたびに日程調整と待ち時間が生じます
- 条件の提示が遅い、または途中で変わる:賃金や勤務地が内定の段階で初めて示され、想定と違えば辞退されます
- 面接が「見極め」だけで終わる:会社が候補者を評価する場としてしか使われず、候補者が会社を知る場になっていません
どの段階で減っているかによって、効く打ち手は変わります。まず数えるところから始めます。
歩留まりの計算表と判断材料
段階別の計算表の見本
| 段階 | 人数 | 前の段階からの歩留まり | 前の段階から次の段階までの日数 |
|---|---|---|---|
| 応募 | (数える) | ― | ― |
| 書類選考の通過 | (数える) | 通過数 ÷ 応募数 × 100 | 応募から連絡までの日数 |
| 一次面接の実施 | (数える) | 実施数 ÷ 書類通過数 × 100 | 通過連絡から面接日までの日数 |
| 最終面接の実施 | (数える) | 実施数 ÷ 一次面接実施数 × 100 | 一次面接から最終面接までの日数 |
| 内定 | (数える) | 内定数 ÷ 最終面接実施数 × 100 | 最終面接から内定連絡までの日数 |
| 内定の承諾 | (数える) | 承諾数 ÷ 内定数 × 100 | 内定連絡から回答までの日数 |
| 入社 | (数える) | 入社数 ÷ 承諾数 × 100 | 承諾から入社日までの日数 |
人数だけでなく、段階の間の日数を並べておくのが要点です。どの段階で候補者が止まっているかが、日数から見えます。
計算例
応募が40人、書類選考の通過が20人、一次面接の実施が12人の場合、書類から一次面接への歩留まりは12 ÷ 20 × 100 で60%です。書類を通過した8人が面接に来ていないので、通過の連絡から面接日までの日数と、連絡の手段を確かめます。
減っている段階ごとに疑う原因
| 減っている段階 | 疑う原因 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 書類通過 → 一次面接 | 連絡が遅い、面接日の候補が少ない | 通過の連絡までの日数、提示した日程の数を数える |
| 一次面接 → 最終面接 | 面接での印象が悪い、次の面接までが長い | 辞退した人に理由を聞く、面接の間の日数を数える |
| 最終面接 → 内定 | 基準が面接官ごとに違う | 不合格の理由を面接官ごとに並べる |
| 内定 → 承諾 | 条件の提示が遅い、想定と違う、回答の期限が短い | 条件を最初に示した時期と、辞退の理由を並べる |
| 承諾 → 入社 | 入社までの間に連絡がない、他社に移る | 承諾から入社までの連絡の回数を数える |
点検のチェックリスト
- □ 応募から最初の連絡まで、何日かかっているか把握しているか
- □ 賃金・勤務地・業務内容の変更の範囲を、最初の面接までに示しているか
- □ 面接の回数は、評価項目を確かめるのに必要な回数か
- □ 辞退した人に、理由を聞いているか
- □ 内定から入社までの間に、会社から連絡する予定を決めているか
歩留まりと内定辞退を改善する手順
手順1:3か月分を数える 上の計算表で、直近3か月の人数と日数を埋めます。一番大きく減っている段階を1つ決めます。
手順2:連絡の期限を決める 「応募から2営業日以内に最初の連絡」「面接から3営業日以内に結果の連絡」のように、段階ごとの連絡の期限を決め、担当者を決めます。
手順3:選考の回数を見直す 面接ごとに何を確かめるかを書き出し、重なっている面接はまとめます。面接で確かめる項目と質問の決め方は、中途採用の面接質問例|目的別の一覧と聞いてはいけない質問で扱っています。
手順4:労働条件を早く、書面で示す 職業安定法第5条の3は、募集にあたって業務の内容・賃金・労働時間などの労働条件を示すことを求め、最初に示した条件を変える場合は、変える内容を示すことを求めています。同法にもとづく指針は、変更の内容を最初の条件と見比べられる書面で示すことが望ましいとし、候補者が契約を結ぶかどうか考える時間を確保できるよう、できる限り速やかに示すことを求めています。また、最初に示した条件を安易に変えてはならないとしています。
内定を伝えるときに渡す書面の項目
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 業務の内容 | 入社直後の業務と、将来の「変更の範囲」 |
| 就業の場所 | 入社直後の場所と、将来の「変更の範囲」 |
| 契約の期間 | 期間の定めの有無。有期の場合は更新の基準と、更新の上限があればその内容 |
| 労働時間・休日 | 始業・終業の時刻、休憩、休日、所定外労働の有無 |
| 賃金 | 基本給、手当、締め日と支払日、昇給の考え方 |
| 入社日 | 入社予定日と、入社日までの連絡の予定 |
| 回答の期限と問い合わせ先 | 考える時間が取れる期限と、質問を受ける担当者 |
2024年4月から、募集の段階で示す事項に、業務の内容と就業場所の「変更の範囲」、有期契約の更新の上限が加わっています。面接の途中で示した条件と書面の内容が違えば、そこで辞退が起きます。書面を渡す前に、求人票や面接で伝えた内容と見比べておきます。
手順5:内定から入社までの連絡を決める 入社日までに、配属先の上司との面談、入社初日の案内などを予定として組んでおきます。
歩留まりを追うときの落とし穴
- 歩留まりを上げるために基準を下げる:通過の割合を上げても、合わない人が入社すれば早期の離職につながります。求める人物像を言葉にして基準をそろえる方法は、採用ミスマッチの原因は要件の曖昧さ。選考基準を可視化するで扱っています
- 内定の承諾を急がせる:回答の期限を極端に短くしたり、ほかの会社の選考を断るよう求めたりすると、承諾しても入社前に辞退されます
- 少ない人数で割合を比べる:内定が2人なら、1人の辞退で承諾率は半分になります。人数が少ない段階は、割合より一人ひとりの辞退理由を見ます
- 会社の都合で内定を取り消す:厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況」(令和7年度)では、「採用内定取消し」に関する民事上の相談が2,316件ありました。内定を出す前に、採用の枠と入社時期を社内で固めておきます。内定の取り消しを考える事情が生じた場合は、都道府県労働局や専門家に早めに相談してください
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出典
- e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- 厚生労働省「職業安定法にもとづく指針(平成11年労働省告示第141号)」(最終改正2024年) https://www.mhlw.go.jp/content/001003997.pdf
- 厚生労働省「令和6年4月から募集時等に明示すべき事項が追加されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
- 厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2026年) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00235.html




