中途採用の面接では、評価したい項目ごとに「過去に実際にとった行動」を聞く質問を用意し、同じ質問を全員に同じ順で聞くと、候補者を同じ物差しで比べられます。「あなたの強みは何ですか」のような自己評価を聞く質問は、準備した答えが返ってくるだけで差がつきません。一方で、本籍・家族・思想などは、厚生労働省が採用選考で聞くべきでないとしている事項です。この記事では、目的別の質問例と深掘りの質問、聞いてはいけない質問と言い換えを先に一覧で示し、後半で質問リストの作り方と、作ったリストが使われなくなる理由と直し方を扱います。

面接の質問が判断に使えなくなる構造

面接のあとで「結局どの人がよいのか決められない」となるのは、質問の中身より次の構造に原因があります。

  1. 面接官ごとに聞くことが違う:候補者Aには経験を、候補者Bには志望動機を中心に聞き、比べる材料がそろわない
  2. 自己評価を聞いている:「リーダーシップはありますか」と聞けば、ほとんどの人が「あります」と答える
  3. 何を見る質問かが決まっていない:答えを聞いても、よいのか悪いのかの基準がない
  4. その場の印象で深掘りする:話が合った候補者には深く聞き、合わない候補者には浅く終わる

面接そのものの予測力が質問の設計でどう変わるかは、面接は意味ないのか|予測力を分ける構造化の設計で扱っています。

中途採用の面接質問例

目的別の質問例と評価の着眼点

目的主の質問深掘りの質問評価の着眼点
経験の確認直近の職場で担当していた業務を、1日の流れで教えてくださいその中で、ご自身の判断で進めていた部分はどこですか任されていた範囲の広さと、自分で判断していた範囲
成果の確認直近の仕事で、一番大きな成果を1つ挙げてくださいそのとき、ご自身が担った部分と、周りが担った部分を分けて教えてください成果のうち本人の行動による部分
困難への対応仕事で想定外の問題が起きたときのことを、1つ具体的に教えてください最初に何をしましたか。結果はどうなりましたか。今ならどうしますか状況の把握、打った手、振り返り
周囲との協力意見の合わない相手と一緒に仕事を進めた経験を教えてください相手の言い分をどう確かめましたか。最終的にどう決まりましたか相手の意見を確かめる行動、合意の作り方
学び方新しい業務や道具を短い期間で覚えた経験を教えてください何から手を付けましたか。どのくらいで一人でできるようになりましたか覚え方の手順、かかった期間
仕事の場面入社後、〇〇のような場面になったら、どう進めますかそう判断する理由は何ですか自社の実際の仕事に近い判断ができるか
条件のすり合わせこの仕事の勤務時間・業務の変更の範囲は〇〇です。ご自身の希望と合っていますか合わない点があれば、どの点ですか入社後に食い違いが起きないか

「困難への対応」「周囲との協力」のように、過去の具体的な場面を1つ挙げてもらい、状況・行動・結果の順で深掘りするのが基本の形です。候補者が「普段は〜しています」と一般論で答えたら、「直近で実際にあった1回を教えてください」と戻します。

聞いてはいけない質問と言い換え

厚生労働省「公正な採用選考の基本」は、応募者の適性・能力に関係のない事項で採否を決めないよう、次のような事項を把握しないことを求めています。

配慮すべき事項避けたい質問の例確かめたいことがある場合の言い換え
本籍・出生地「ご出身はどちらですか」(確かめる必要がない)
家族「ご両親のお仕事は」「ご家族は転勤に賛成していますか」「転勤があります。ご自身として対応できますか」
住宅状況「持ち家ですか」(確かめる必要がない)
生活環境・家庭環境「家庭の事情で残業できないことはありますか」「この仕事の残業は月〇時間程度です。対応できますか」
宗教・支持政党・思想「信仰している宗教は」「支持政党は」(確かめる必要がない)
人生観・尊敬する人物「尊敬する人物は誰ですか」「仕事で手本にしている進め方はありますか」
労働組合・社会運動「労働組合に入っていましたか」(確かめる必要がない)
購読新聞・愛読書「普段読んでいる新聞は」「業務の知識をどう更新していますか」

職業安定法第5条の5は、求職者の個人情報を業務の目的に必要な範囲で、目的を明らかにして集め、その範囲で使うことを求めています。同法にもとづく指針も、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地など差別のもとになるおそれのある事項、思想・信条、労働組合への加入状況を集めてはならないとしています。

質問リストの作り方と面接の進め方

手順1:評価したい項目を4〜5つに絞る 入社後の仕事で欠かせない行動を、今活躍している社員の仕事から書き出します。求める人物像を言葉にする方法は、採用ミスマッチの原因は要件の曖昧さ。選考基準を可視化するで扱っています。

手順2:項目ごとに主の質問と深掘りの質問を決める 上の一覧から選び、自社の仕事に合わせて言葉を直します。

手順3:答えの良し悪しの目安を書く 項目ごとに「高い評価」「普通」「低い評価」に当たる答えの例を書いておきます。評価シートへの落とし込みは、面接評価シートの形骸化を防ぐ、基準の構造化とデータ運用設計が参考になります。

手順4:全員に同じ順で聞き、面接の直後に採点する 面接官が複数いる場合は、相談する前にそれぞれ採点します。

手順5:面接の最後に、条件を示して質問を受ける 仕事の内容・勤務地・労働時間に加え、2024年4月からは、募集時に業務の内容と就業場所の「変更の範囲」も示すことになっています。条件のずれは、ここで解消しておきます。

質問リストが使われなくなる理由と直し方

使われなくなる理由起きること直し方
質問が多すぎる時間が足りず、面接官が一部を飛ばす評価項目を絞り、1項目1問にする
答えの目安がない聞いても採点できず、印象で決まる高い・普通・低いの答えの例を足す
面接官に説明していない慣れた面接官ほど自分の質問に戻る面接の前に10分、質問と目安を読み合わせる
入社後の結果と照らしていない質問が本当に役立っているか分からない半年後の働きぶりと面接の点数を並べて見直す

もう一つの落とし穴は、面接官の思い込みです。質問をそろえても、学歴や話し方の印象で採点が引きずられることがあります。採点の偏りを減らす工夫は、面接官のバイアスを排除し採用精度を高める評価設計で扱っています。個別の質問が法令に照らして問題ないか迷うときは、ハローワークや都道府県労働局に確認してください。

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