離職率は、一定期間の離職者数を、期間の初めの在籍者数で割って100を掛けるのが基本の計算方法です。厚生労働省「雇用動向調査」は、1年間の離職者数を1月1日現在の常用労働者数で割っており、この定義で2024年の離職率は14.2%でした。ただし、自社の数字を全国平均と並べて多い少ないを判断するだけでは、打ち手は出てきません。雇用形態・業種・入社年によって離職率は大きく違うからです。この記事では、計算式と計算例、比べるときの公的な数字を先に示し、後半で入社年・部署・理由で分けて原因を突き止める手順と、数字の読み違いを防ぐ注意点を扱います。

離職率の数字が役に立たなくなる構造

離職率を出したのに何も変わらない会社では、次のことが起きています。

  1. 分母の取り方が年ごとに違う:期首の人数で割った年と、平均人数で割った年を並べて比べている
  2. 全部の離職をひとまとめにしている:定年・契約満了・自己都合・会社都合が1つの数字に混ざり、どれが増えたのか分からない
  3. 人数が少ないのに比率だけを見ている:社員30人の会社では、1人の退職で離職率が3ポイント以上動きます
  4. 平均と比べて安心して止まる:平均を下回っていても、特定の部署や入社1年目に離職が集まっていれば、そこが問題です

離職率は「どこで、誰が、なぜ辞めているか」を探すための入口の数字で、それ自体が答えではありません。

離職率の計算式と比べる数字

目的別の計算式

知りたいこと計算式使いどころ
1年間の離職率1年間の離職者数 ÷ 期首(1月1日など)の在籍者数 × 100公的統計と同じ形で比べる
月ごとの離職率その月の離職者数 ÷ 月初の在籍者数 × 100繁忙期や制度変更の前後で変化を見る
入社年ごとの離職率ある年の入社者のうち一定期間内に辞めた人数 ÷ その年の入社者数 × 100採用や受け入れの問題を見る
入職超過率入職率 − 離職率人が増えているか減っているかを見る

「雇用動向調査」では、入職率も同じく1月1日現在の常用労働者数で割り、入職率から離職率を引いた値を入職超過率と呼んでいます。年齢別の率は、6月末日現在の常用労働者数を分母にしています。

計算例

期首の在籍者が50人、1年間に6人が辞めた場合、6 ÷ 50 × 100 で離職率は12%です。6人のうち2人が定年退職なら、定年を除いた離職率は4 ÷ 50 × 100 で8%になります。どちらの数字を使ったかを、資料に必ず書き添えます。

比べるときの公的な数字

区分数字出典
全体の離職率(2024年)14.2%雇用動向調査(令和6年)
一般労働者/パートタイム労働者11.5%/21.4%同上
男性/女性12.6%/16.0%同上
新規大卒の3年以内離職率(2022年3月卒)33.8%新規学卒就職者の離職状況(令和7年公表)
新規高卒の3年以内離職率(2022年3月卒)37.9%同上
大卒の3年以内離職率・事業所規模5〜29人52.0%同上
大卒の3年以内離職率・事業所規模1,000人以上27.0%同上

同じ「雇用動向調査」で、一般労働者の離職率が最も高い産業は「サービス業(他に分類されないもの)」19.0%、次いで「宿泊業,飲食サービス業」18.1%でした。自社の数字は、雇用形態と業種、規模をそろえた数字と比べます。

離職の原因を突き止める手順

手順1:退職者の一覧を作る 過去3年分の退職者について、入社日・退職日・部署・直属の上司・雇用形態・職種・退職理由の区分を1行ずつ並べます。見本は次のとおりです。

列記入の例分析での使い道
入社年月2024年4月入社年ごとの離職率を出す
退職年月2025年3月在籍期間を出す
在籍期間1年未満/1〜3年/3年以上早期離職かどうかを分ける
部署・職種製造/営業/事務部署ごとの偏りを見る
直属の上司上司の役職名上司ごとの偏りを見る(社内限りで扱う)
雇用形態正社員/契約社員/パート公的統計と比べる単位をそろえる
退職理由の区分個人的理由/事業所側の理由/定年・契約満了全国の数字と比べる
面談で聞いた理由労働時間、仕事内容、人間関係など本当の理由を探す

上司の名前が入る一覧は評価に直結する情報なので、見られる人を人事と経営者に限ります。

手順2:退職理由を区分する 「雇用動向調査」は離職理由を、個人的理由、事業所側の理由、定年、契約期間の満了などに分けています。個人的理由は「結婚」「出産・育児」「介護・看護」「その他の個人的理由」の合計、事業所側の理由は「経営上の都合」「出向」「出向元への復帰」の合計です。2024年の離職理由別の離職率は、個人的理由が10.7%、事業所側の理由が0.8%でした。自社でも同じ区分で分けておくと、全国の数字と比べられます。

手順3:分けて計算する 入社年ごと、部署ごと、在籍年数ごと、上司ごとに離職率を出します。全体では目立たなくても、特定の部署や入社1年目に集まっていることがよくあります。

手順4:集まっている所の「本当の理由」を聞き直す 退職届の「一身上の都合」は手続き上の言葉です。退職面談の記録や、残っている同僚への聞き取りと照らします。退職理由が表に出にくい構造は、退職理由の「一身上の都合」はすべて建前?で扱っています。

手順5:打ち手と、見る数字を決める 入社1年目に集まっているなら受け入れと教え方、特定の上司の下に集まっているならマネジメントの見直しです。打ち手ごとに、次の期に見る数字(入社年ごとの1年以内離職率など)を決めます。定着を管理職の目標にどう組み込むかは、退職を「自己責任」で片付けるマネージャーを生む構造。人材定着をKPIに組み込む方法が参考になります。

実行時の落とし穴

  • 離職率ゼロを目標にする:辞めてほしくない人が辞めることと、合わない人が辞めることは別です。目標は「入社1年以内の離職」「高い評価の人の離職」のように対象を絞って置きます
  • 少人数の部署の比率で判断する:人数が少ない部署は、比率ではなく人数と理由で見ます
  • 分母を途中で変える:計算の形を変えたら、過去の年も同じ形で計算し直してから比べます
  • 新卒の離職状況を聞かれて答えられない:新卒者などを対象に募集する会社は、応募者から求められれば青少年雇用情報を提供しなければなりません(若者雇用促進法第13条)。直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数は、日頃から数えておきます

退職理由の集め方の設計は、退職面談は意味ないと言われる理由と、退職理由データの設計手順で扱っています。離職と定着を扱うほかの記事は、人事・評価にまとめています。

出典