テレワークのコミュニケーション不足は、会う回数を増やすことではなく、連絡の決まりを作ることで解消します。オフィスでは、隣の席の会話が聞こえる、通りがかりに声をかけられる、といった形で、意識しなくても情報が伝わっていました。テレワークでは、この「自然に伝わる」仕組みが無くなります。そのため、何をどの手段で伝えるか、返事はいつまでに返すか、どこに記録を残すか、を決めておかないと、情報の行き違い、相談の遅れ、孤立感が生まれます。

コミュニケーション不足が起きる原因

自然に伝わっていた情報が届かない

オフィスでは、ほかの人の電話の内容や、上司と同僚の会話から、チームの状況を自然に知ることができました。テレワークでは、話した人の間でしか情報が共有されず、ほかのメンバーは知らないまま仕事を進めてしまいます。

相談のハードルが上がる

オフィスなら「ちょっといいですか」と声をかけられた小さな相談も、テレワークでは、チャットを書く、通話の予定を入れる、といった手間がかかります。相手の状況が見えないため、「今話しかけてよいか」とためらい、相談が遅れます。

手段ごとの使い方がばらばら

チャット、メール、通話、共有の文書など、連絡の手段が増える一方、どれを何に使うかが決まっていないと、大事な連絡がチャットの流れに埋もれたり、同じ話が複数の手段に分かれたりします。

手段の使い分けを決める

最初に、連絡の手段ごとの使い方をチームで決めます。

手段使う場面返事の目安
チャット(チームの場)日々の連絡、簡単な質問、進み具合の共有半日以内
チャット(個人あて)個人への依頼、ほかの人に見せる必要が無い相談半日以内
通話・ビデオ会議こみいった相談、認識のすり合わせ、急ぎの連絡その場
共有の文書決まったこと、手順、議事録など、後から見返す情報―
メール社外とのやり取り、正式な通知1 営業日以内

大切なのは、決まったことを共有の文書に残す決まりです。チャットで話して決まったことも、その場で共有の文書に書き写しておかないと、後から入った人や、その場にいなかった人には伝わりません。チームの情報の置き場所の決め方は、社内の情報共有の方法が参考になります。

定例の場を作る

テレワークでは、決まった時間に顔を合わせる場があると、小さな困りごとを早く拾えます。

短い朝会

毎日や週に数回、15 分程度の短い会を開き、今日やること、困っていること、ほかの人に頼みたいことを 1 人ずつ短く話します。長い議論はその場でせず、関係者だけで別に話します。

週の定例

週に 1 回、チームの目標に対する進み具合と、翌週の予定を確かめます。進み具合は、会の前に共有の文書に書いておいてもらうと、会の時間を短くできます。

上司と部下の面談

上司と部下が 1 対 1 で話す時間を、定期的に取ります。テレワークでは、部下の様子の変化に上司が気づきにくくなるため、仕事の困りごとだけでなく、働き方や体調の変化も聞きます。部下との会話の場面ごとの進め方は、部下とのコミュニケーションの取り方で説明しています。

相談しやすくする工夫

相談のハードルを下げるために、相談を受ける時間をあらかじめ決めておく方法があります。例えば、上司が毎日決まった 30 分は通話をつないだままにしておき、その間はいつでも話しかけてよい、とする形です。また、チャットで「今話せますか」と聞くより、相談の中身を先に書いてもらう決まりにすると、受ける側も準備ができ、やり取りが早く済みます。

チャットの状態表示(会議中、集中したい時間など)を使い、話しかけてよい時間を互いに分かるようにしておくことも役立ちます。

雑談の機会を作る

テレワークでは、仕事の話以外の会話が極端に減ります。雑談は、互いの人となりを知り、相談しやすい関係を作るきっかけになります。チャットに仕事以外の話題の場を作る、定例の最初の数分を近況の話にあてる、といった小さな工夫で、雑談の機会を補えます。ただし、参加を強いると負担になるため、自由に参加できる形にします。

出社する人とテレワークの人が混ざるチーム

出社する人とテレワークの人が混ざるチームでは、出社している人どうしの会話で物事が決まり、テレワークの人に伝わらない、という偏りが起きやすくなります。会議室に集まった人と、画面の向こうの人が一緒に参加する会議では、会議室の中の会話が画面の向こうに聞こえにくく、発言の機会も偏ります。

この偏りを防ぐには、出社している人も含めて、決まったことは必ず共有の文書に残す決まりを守ります。会議では、進行役が画面の向こうの人に意見を求める順番を意識して作り、会議室の中だけで話が進まないようにします。出社の日を決めているチームでは、全員が出社する日に、顔を合わせて話したほうがよい議論や相談をまとめて行う、という使い分けも役立ちます。出社とテレワークが混ざる働き方での仕事の進め方は、ハイブリッドワークの生産性低下を防ぐ非同期プロセス設計で扱っています。

新しく入った人の受け入れ

テレワークで新しく入った人は、チームの人となりや、暗黙のうちに共有されている決まりを知る機会がほとんどありません。質問してよい相手が分からず、1 人で悩みを抱え込みがちです。

受け入れの最初の数週間は、決まった先輩を相談相手にし、毎日短く話す時間を取ります。チームの連絡の決まりや、よく使う文書の置き場所をまとめた案内を用意しておくと、新しく入った人が自分で調べられるようになります。最初の出社の機会に、チームの人と顔を合わせる場を作ることも、その後の相談のしやすさにつながります。

実行時の落とし穴

会議を増やしすぎる

コミュニケーション不足を補おうとして会議を増やすと、会議の時間ばかりが増え、仕事が進みません。会議の目的を決め、文章で共有できることは文章にします。

決まりを作っても書き残さない

手段の使い分けや返事の目安を口頭で決めただけでは、新しく入った人に伝わりません。決まりは共有の文書に書き、見られる場所に置きます。

見張ることが目的になる

働いているかを確かめるために、頻繁に連絡を求めたり、画面を監視したりすると、信頼が損なわれます。確かめるのは、働いているかではなく、仕事の成果と進み具合です。成果の基準の決め方は、リモートワークの評価が難しい問題を解決する成果基準の作り方で扱っています。