部下とのコミュニケーションをよくするには、雑談の量を増やすより、仕事の場面ごとに伝え方と聞き方の型を持つことが大切です。上司と部下の会話は、仕事の指示、進み具合の確認、相談、フィードバック、面談、の 5 つの場面にほぼ分けられます。会話がかみ合わない原因は、指示があいまい、相談しにくい、フィードバックが伝わらない、など、場面ごとに違います。どの場面でつまずいているかを見極め、その場面の型を整えると、部下との意思疎通は大きく変わります。

場面ごとのつまずきと直し方

場面よくあるつまずき直し方
仕事の指示目的・期限・出来上がりの形が伝わっていない目的、期限、出来上がりの形、判断に迷ったときの相談先をそろえて伝える
進み具合の確認遅れが分かるのが期限の直前確かめる時期を先に決め、途中の段階で見せてもらう
相談部下が相談してこない相談を受ける時間を決め、相談してくれたことをまず認める
フィードバック何を直せばよいかが伝わらない見た行動、その影響、次にしてほしいことの順で伝える
面談上司ばかり話し、部下の本音が出ない上司が話す時間より部下が話す時間を長くし、問いかけで進める

仕事の指示

指示がかみ合わない原因の多くは、上司の頭の中にある前提が伝わっていないことです。「なるべく早く」「いい感じに」といった言葉は、上司と部下で受け取り方が違います。指示を出すときは、何のための仕事か(目的)、いつまでか(期限)、どんな形で出してほしいか(出来上がりの形)、迷ったときに誰に聞けばよいか、をそろえて伝えます。指示の最後に、部下の言葉で内容を言い直してもらうと、食い違いに早く気づけます。指示の型は、仕事の指示の出し方で詳しく説明しています。

進み具合の確認

進み具合を確かめる時期を決めていないと、上司は気になって何度も声をかけ、部下は監視されていると感じます。反対に、任せきりにすると、遅れや方向の違いが期限の直前まで分かりません。指示を出すときに、「全体の 3 割ほどできた段階で一度見せてほしい」のように、確かめる時期を先に決めておきます。確かめる時期が決まっていれば、上司はそれまで口を出さずに待てます。

相談を受ける

部下が相談してこないのは、相談しにくい状態があるためです。上司が常に忙しそうにしている、相談すると「なぜもっと早く言わないのか」と叱られる、相談しても答えが返ってこない、といった経験が重なると、部下は相談をためらいます。

相談を受けやすくするには、まず、相談してくれたこと自体を認めます。内容に問題があっても、早く相談してくれたことはよい行動です。すぐに答えられない相談には、いつまでに返事をするかを伝えます。毎日や毎週、相談を受ける時間を決めておくと、部下は声をかける時機に迷わずに済みます。

フィードバック

フィードバックは、部下の行動のよかった点と直してほしい点を伝える場面です。「もっとしっかりやって」「いい感じだった」のような言葉では、何を続け、何を直せばよいかが伝わりません。見た行動、その行動が周りに与えた影響、次にしてほしいこと、の順で伝えます。伝え方の型と例文は、フィードバックの仕方で説明しています。

面談

1on1 などの面談では、上司が話す時間より、部下が話す時間を長くすることを目安にします。答えを教える前に、「どう考えているか」「何に困っているか」と問いかけ、部下が自分で考えを整理するのを手助けします。問いかけで面談を進める方法は、コーチングとはで扱っています。面談で使える質問の例は、1on1の質問例が参考になります。

相手によって変えること

年上の部下

年上の部下にも、役割としての指示や判断ははっきり伝えます。遠慮して指示をあいまいにすると、本人も何を求められているのか分からず困ります。そのうえで、言葉づかいを丁寧にし、経験から学ぶ姿勢を示し、判断の前に意見を求める場面を意識して作ります。

経験の浅い部下

経験の浅い部下には、仕事の手順や判断の基準を具体的に伝えます。「自分で考えて」と言うだけでは、何から考えればよいか分からずに止まってしまいます。手順を示したうえで、少しずつ任せる範囲を広げます。

離れて働く部下

リモートで働く部下とは、顔を合わせる機会が少ない分、ちょっとした相談や、進み具合の小さな変化が伝わりにくくなります。チャットでの相談の窓口と返事の目安の時間を決め、短い定例の場を設けて、困りごとを早く拾えるようにします。離れて働くチームの管理の考え方は、リモートワークのマネジメントが難しい理由と非同期型評価設計で扱っています。

上司が陥りやすい失敗

自分の若いころのやり方を求める

上司が若いころに通用したやり方が、今の部下や仕事に合うとは限りません。「自分はこうしてきた」という話は、押し付けではなく、1 つの例として伝えます。

忙しさを理由に後回しにする

部下との会話を後回しにすると、小さな問題が大きくなってから表に出ます。相談を受ける時間や面談の時間を予定に入れ、ほかの予定と同じように守ります。

部下によって態度を変える

特定の部下とだけよく話し、ほかの部下とはあまり話さないと、チームの中に不公平感が生まれます。全員と話す機会を同じように作ります。