社内の情報共有がうまくいかない原因の多くは、社員の意識ではなく、情報の種類ごとの置き場所と、誰が書いて誰が読むかが決まっていないことにあります。情報共有の仕組みは、①共有する情報の種類を分ける、②種類ごとに置き場所を決める、③誰が、いつ書くかを決める、④読んだ側が反応する決まりを作る、の順で作ります。特に大切なのは、チャットのように流れていく情報と、手順や決まったことのように残しておく情報を分けることです。流れていく場所にしか書かれていない情報は、後から入った人や休んでいた人には届きません。置き場所が決まっていれば、「どこに書いてあるか」を探す時間も減ります。
情報共有がうまくいかない原因
置き場所が決まっていない
同じ種類の情報が、チャット、メール、個人のフォルダ、共有のフォルダに散らばっていると、探す人はどこを見ればよいか分かりません。探しても見つからなければ、詳しい人に聞くことになり、聞かれる人の時間も取られます。
流れていく場所にしか書かれていない
チャットや会議の場で決まったことが、そのままになっていると、その場にいなかった人には伝わりません。チャットの書き込みは次々に流れ、後から探すのは難しくなります。「聞いていない」という行き違いの多くは、ここから起きます。
書いても読まれない、反応が無い
情報を書いて共有しても、誰からも反応が無ければ、書く側は「読まれていない」と感じ、書かなくなります。反対に、何でも全員に共有すると、読む側は情報の多さに疲れ、大事な情報まで読み飛ばすようになります。
共有する時間と動機が無い
情報を書き残すことが業務として認められておらず、評価にもつながらないなら、忙しい人ほど書かなくなります。自分だけが知っている情報を持っていることが、職場での立場を守ることにつながっている場合もあります。
情報の種類を分ける
共有する情報は、流れていく情報と、残しておく情報に分けて考えます。
| 種類 | 例 | 向いている置き場所 |
|---|---|---|
| 流れていく情報 | その場の相談、ちょっとした確認、日々の連絡 | チャット |
| 残しておく情報 | 仕事の手順、決まったこと、よくある質問への答え、社内の決まり | 共有の文書、社内の手順書の置き場所 |
| 進み具合の情報 | 誰が何をしていて、どこまで進んでいるか | タスクの一覧、案件の記録 |
| 顧客や取引先の情報 | やり取りの経緯、担当者、約束したこと | 顧客の記録 |
| ファイル | 書類、資料、データ | 共有のフォルダ |
流れていく情報の中から、残しておくべきものが生まれることがあります。チャットで相談して決まったこと、質問への答えで同じ質問がまた来そうなものは、残しておく情報の置き場所に書き写します。
置き場所を決める
情報の種類ごとに、置き場所を 1 つに決めます。同じ種類の情報の置き場所が 2 つあると、どちらが新しいのか分からなくなります。
置き場所を決めたら、次のことも決めておきます。
- 置き場所の中の分け方:部署ごと、業務ごと、案件ごと、など
- 名前の付け方:ファイルや文書の名前に、日付や種類を入れる決まり
- 見られる人の範囲:全社、部署、案件の関係者、など
- 古い情報の扱い:使わなくなった情報を消すか、別の場所に移すか
置き場所の一覧を 1 枚にまとめ、「この情報はここ」と誰でも確かめられるようにします。新しく入った人には、最初の週にこの一覧を説明します。
誰が、いつ書くかを決める
置き場所を決めても、誰も書かなければ情報は集まりません。情報の種類ごとに、誰がいつ書くかを決めます。
| 情報 | 書く人 | 書く時期 |
|---|---|---|
| 会議で決まったこと | 会議の記録の担当 | 会議の当日 |
| 仕事の手順 | その業務の担当者 | 手順が変わったとき |
| よくある質問への答え | 質問に答えた人 | 同じ質問が 2 回来たとき |
| 案件の経緯 | 案件の担当者 | やり取りのたび |
会議の記録の書き方は、再確認の会議を減らす議事録の残し方で、仕事の手順の書き方は、業務マニュアルの作り方で扱っています。
共有を習慣にする工夫
仕組みを作っても、使われなければ意味がありません。共有を習慣にするには、普段の仕事の中で、置き場所の情報に触れる機会を作ります。
1 つめは、質問を受けたときに、答えだけでなく置き場所を示すことです。「共有の文書のこのページに書いてあります」と示すと、質問した人は次から自分で探すようになります。書かれていないことを聞かれたら、答えた後に書き足します。
2 つめは、会議やチャットで、置き場所の情報を示してから話すことです。「この件は文書にまとめてあるので、読んだうえで意見をください」という進め方にすると、文書が読まれるようになり、会議の時間も短くなります。この進め方は、ハイブリッドでの情報共有漏れを防ぐドキュメントファーストで説明しています。
3 つめは、共有したことに反応することです。書かれた情報に「助かりました」と一言返すだけでも、書く側の動機になります。共有した情報がほかの人の役に立ったことを、評価の場で取り上げることも効果があります。
チャットの使い方の決まりは、社内チャットのルールの例で、手段ごとの使い分けは、メールとチャットの使い分けで扱っています。
実行時の落とし穴
道具を入れれば解決すると考える
新しい道具を入れても、置き場所と書く人が決まっていなければ、情報は相変わらず散らばります。道具を選ぶ前に、情報の種類と置き場所を決めます。
すべてを全員に共有する
何でも全員に届けると、読む側は大事な情報を見落とします。全員が知るべき情報だけを全員に届け、ほかは置き場所に置いて、必要な人が探せるようにします。
古い情報を放っておく
古くなった情報が残っていると、読む人は、どれが正しいのか分からなくなります。情報ごとに更新の担当を決め、定期的に見直します。




