企業のSNSの使い分けは、どのサービスが流行っているかではなく、次の3つで決めます。届けたい相手がどの年代で、どのSNSを使っているか。SNSで相手に何をしてもらいたいか(知ってもらう、来店・予約する、問い合わせる、既存客として関係を続ける)。そして、写真や文章を出し続けられる人手があるか、です。この3つを確かめたうえで、主に使うSNSを1つ、補助を1つに絞ると、少ない人手でも運用が止まりにくくなります。以下、総務省の調査で年代別の利用率を確かめ、目的別の比較表で候補を絞り、社内の運用の決まりを作るまでの手順を説明します。

使い分けに失敗する構造

とりあえず全部始めて、全部止まる

中小企業のSNSでよく見かけるのは、複数のSNSでアカウントを作ったものの、どれも更新が止まっている状態です。SNSはそれぞれ投稿の形(写真、短い動画、文章)が違い、同じ人手で複数を回すには、題材を集め、形を変えて投稿し、コメントに返す時間が数倍かかります。人手に対してアカウントが多すぎることが、止まる原因です。

担当者の好みで選んでいる

担当者が個人で使い慣れているSNSを会社でも選ぶと、届けたい相手がそこにいない場合があります。担当者が20代で、顧客の中心が50代という組み合わせは珍しくありません。

目的と評価の数字が無い

「認知を上げる」とだけ決めてSNSを始めると、フォロワー数や「いいね」の数を追うことになります。それが来店や問い合わせにつながっているかを確かめる数字が無いため、続けるか、やめるか、SNSを替えるかの判断ができません。

利用者の層をデータで確かめる

総務省情報通信政策研究所の「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年公表)は、全国の13〜79歳1,800人を対象に、主なSNSや動画共有サービスの利用率を年代別に示しています。報告書の概要から、主なサービスの利用率を抜き出すと次のとおりです。

サービス全年代20代30代40代50代60代
LINE91.1%97.7%97.9%94.8%94.5%91.1%
YouTube80.8%97.2%97.9%91.8%83.0%71.2%
Instagram52.6%78.0%70.5%67.0%52.7%34.7%
X(旧Twitter)43.3%78.0%61.6%48.7%43.6%22.1%
TikTok33.2%58.7%39.7%39.9%25.5%18.8%
Facebook26.8%22.9%39.2%38.6%32.1%26.6%

この表から読み取れるのは次の点です。

  • LINEは、どの年代でも利用率が高く、既存の顧客への連絡の手段として年代を選ばない
  • InstagramとXは、若い年代ほど利用率が高く、50代以上では下がる
  • Facebookは全年代では低いものの、30代・40代では20代より利用率が高い

利用率は「使っている人の割合」であり、そのSNSで商品を探したり、企業の投稿を見たりする人の割合ではありません。候補を絞る材料として使い、最終的には自社の顧客に「普段どのSNSを見ているか」を聞いて確かめるのが確実です。

目的別に候補を絞る

SNSで相手にしてもらいたい行動ごとに、候補になりやすいサービスと、投稿の形を整理します。

してもらいたいこと候補になりやすいサービス投稿の形評価の数字の例
新しい客に店や商品を知ってもらうInstagram、TikTok写真・短い動画プロフィールの閲覧、保存の数
来店・予約をしてもらうInstagram、Googleビジネスプロフィール写真・営業の情報予約のリンクのクリック、ルートの検索
既存の客に再来店してもらうLINE公式アカウント、メルマガお知らせ・クーポン配信からの予約・来店
専門の情報で問い合わせを得る(BtoB)X、Facebook、YouTube文章・解説の動画サイトへの訪問、資料請求
採用の応募を得る求職者の年代に合わせてInstagram、X職場の様子・仕事の説明採用ページへの訪問、応募

表の「候補」は目安です。前の章の利用率の表と組み合わせ、届けたい相手の年代で使われているかを確かめて絞ります。

主と補助を決める手順

  1. 届けたい相手を1つに絞る。年代、住んでいる地域、SNSを見る場面(通勤中、仕事中の情報収集など)を書き出します
  2. してもらいたい行動を1つに決める。来店なのか、問い合わせなのか、採用の応募なのかで、選ぶSNSと評価の数字が変わります
  3. 候補を2つまでに絞る。利用率の表と目的別の表を重ね、相手がいて、目的に合う投稿の形のSNSを選びます
  4. 続けられるかを確かめる。週に何回投稿できるか、写真や動画を撮れる人がいるか、コメントに誰が返すかを決めます。決められないSNSは候補から外します
  5. 主と補助を決め、3か月後に見る数字を決める。主のSNSには投稿の手間の大半をかけ、補助は主の題材を形を変えて出す程度にします

業態ごとの組み合わせの目安は次のとおりです。

業態主補助考え方
飲食・美容などの店舗InstagramLINE公式アカウント写真で知ってもらい、来店した客との連絡を続ける
地域の住まい・車などのサービスGoogleビジネスプロフィールInstagram検索から来る客を受け止め、施工や作業の写真で補う
BtoBの専門サービス・製造X または Facebookメルマガ専門の情報で知ってもらい、関心のある人を名簿に移す
採用を強めたい会社求職者の年代に合うSNS採用ページ職場の様子を出し、詳しい条件は自社のページで伝える

運用の決まりを作る

SNSは、担当者1人の判断で回していると、担当の交代や、投稿での失敗のときに止まります。始める前に、次の項目を1枚にまとめます。

項目決めること
担当と承認投稿する人、事前に確認する人、確認の要らない投稿の範囲
頻度と曜日週に何回、どの曜日に投稿するか
返信の基準コメントやメッセージに誰がいつまでに返すか、返さない内容は何か
書かないこと顧客が写った写真、取引先の名前、価格の約束、他社の批判など
問題が起きたとき誤った投稿や批判が集まったときの連絡先と、削除・謝罪を決める人
アカウントの管理会社のアドレスで登録する、ログインの情報の保管場所、2段階認証

従業員に個人のアカウントで自社の商品を紹介してもらう場合は、景品表示法の告示にも注意します。消費者庁のQ&Aは、従業員が個人のSNSで自社の商品の感想を投稿しても、それだけで直ちに告示違反になるわけではないとしつつ、販売を促進する立場にある人(販売や開発の担当、管理職など)が販売促進のために投稿する場合は「事業者の表示」に当たり、「広告」などと分かりやすく書かなければ告示に違反するとしています(消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」問3)。

実行時の落とし穴

フォロワー数を目標にする

フォロワー数は、プレゼントの企画などで一時的に増やせますが、その人たちが来店や問い合わせをするとは限りません。目的別の表の「評価の数字」のように、SNSの外での行動につながる数字を目標にします。

投稿の形を合わせない

同じ画像や文章をすべてのSNSにそのまま流すと、どのSNSでも中途半端な投稿になります。Instagramの公式の説明では、低い解像度の動画や、他のアプリの透かしが入った動画、以前に投稿された動画などが、おすすめに表示されにくい例として挙げられています(Instagram「Instagramのランキングを解説」、2023年)。題材は共通にしても、形はSNSごとに作ります。

止まったアカウントを放置する

更新が止まったアカウントは、検索で見つけた人に「今も営業しているのか」という疑問を残します。続けられないと判断したSNSは、最後の投稿で主に使うSNSや自社サイトへ案内し、プロフィールにも案内を残します。

SNS以外の集客の手段との組み合わせは、広告費をかけないWeb集客の選び方と続け方で整理しています。店舗の集客では、SNSより先にGoogleビジネスプロフィールの登録とMEOを整えておくと、検索から来る客を取りこぼしません。Instagramを主に選んだ店舗は店舗のインスタの投稿ネタと続け方、BtoBでXを選んだ会社はXの企業アカウントの運用に進んでください。

出典

まとめ

  • SNSの使い分けは、届けたい相手の年代、してもらいたい行動、続けられる人手の3つで決めます
  • 総務省の調査では、LINEはどの年代でも利用率が高く、InstagramとXは若い年代ほど高く、Facebookは30代・40代で相対的に高くなっています
  • 主に使うSNSを1つ、補助を1つに絞り、SNSの外での行動につながる数字で評価します
  • 担当・承認・返信の基準・書かないこと・問題が起きたときの連絡先・アカウントの管理を決めてから始めます
  • 従業員に自社の商品を投稿してもらうときは、広告であることを分かりやすく示します