クレド(credo)は、ラテン語の「私は信じる」に由来する言葉で、会社では、理念や価値観を、社員が日々の仕事で判断し行動するときのよりどころとして、短い言葉にまとめたものを指します。よく知られた例に、米国のジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」があります。同社の説明によれば、当時の会長ロバート・ウッド・ジョンソンが 1943 年に自ら起草したもので、患者や医師・看護師などの顧客、社員、地域社会、株主の順に、会社が負う責任を書いています。クレドの価値は、立派な言葉が並んでいることではなく、社員が迷ったときに「このクレドならどう判断するか」と立ち返れることにあります。

経営理念・行動指針との違い

言葉中身例
経営理念・ミッション会社が何のために存在するか「地域の暮らしを支える」
ビジョン将来どんな姿を目指すか「10 年後に地域でいちばん頼られる会社になる」
クレド・バリュー何を大切にし、どう判断するか「迷ったときは、顧客の長い目で見た利益を優先する」
行動指針具体的にどう行動するか「問い合わせには当日中に返事をする」

経営理念やビジョンは会社の方向を示し、クレドや行動指針は、その方向に向かうために社員がどう判断し行動するかを示します。経営理念・ビジョン・バリューの作り方全体は、ミッション・ビジョン・バリューの作り方で説明しています。

クレドの作り方

1. 判断に迷う場面を集める

社員が日々の仕事で判断に迷う場面を集めます。例えば、「顧客の無理な要望にどこまで応えるか」「期限と品質のどちらを優先するか」「ほかの部署の仕事を手伝うか」といった場面です。管理職や現場の社員に聞き取ると、会社の中でよく起きる迷いが見えてきます。

2. 迷ったときの判断の基準を言葉にする

集めた場面ごとに、会社としてどう判断してほしいかを話し合い、その理由まで言葉にします。理由をたどっていくと、会社が大切にしている価値観が見えてきます。経営陣だけで決めず、社員の代表にも話し合いに加わってもらうと、現場の言葉で書かれたクレドになりやすくなります。

3. 項目を絞って書く

出てきた価値観を、5〜10 程度の項目に絞ります。1 つの項目は短く、行動や判断の形で書きます。「誠実であること」のような抽象的な言葉だけでは判断の基準になりにくいため、「誤りに気づいたら、自分に不利でもすぐに伝える」のように、行動が思い浮かぶ形にします。

4. 例を添える

項目ごとに、その項目に沿った行動の例を添えます。例があると、社員がクレドの意味を自分の仕事に当てはめやすくなります。

書き方の例

よくない書き方よい書き方
お客様第一迷ったときは、今日の売上より、お客様の長い目で見た利益を優先します
チームワークを大切にする自分の仕事が終わったら、困っている人がいないかを確かめ、手を貸します
挑戦する前例が無いことも、まず小さく試し、結果を全員に共有します
誠実である誤りに気づいたら、自分に不利なことでもすぐに上司と相手に伝えます

作ったのに使われない原因

判断の場面で使われない

クレドを作って掲示し、カードを配っても、仕事の判断の場面でクレドが話題にならなければ、社員はクレドを思い出しません。会議で判断に迷ったときに、「クレドに照らすとどうか」と問う習慣を、まず経営陣と管理職が作ります。

評価や登用とつながっていない

クレドに沿った行動をとっても評価されず、クレドに反した行動をとっても成果が出ていれば評価される状態では、社員はクレドより成果の数字を優先します。人事評価の行動の項目にクレドの中身を取り入れる、登用の判断でクレドに沿った行動を見る、といった形で、クレドを人事の仕組みとつなげます。行動で評価する項目の作り方は、コンピテンシー評価とはで扱っています。

経営陣がクレドに反した判断をする

経営陣や管理職がクレドに反した判断をすると、社員は「クレドは建前だ」と受け取ります。クレドを最も厳しく守るべきなのは、経営陣と管理職です。

浸透させる方法

クレドを浸透させるには、使う場面を決めることが近道です。朝礼や定例の会議で、クレドの 1 項目を取り上げ、その項目に沿った行動の例を社員に紹介してもらう方法があります。紹介された行動を、社内の共有の場に残していくと、クレドの項目ごとの具体例が増え、新しく入った社員にも伝わりやすくなります。

管理職の役目も大きくなります。経営陣の言葉を、各部署の仕事の場面に置き換えて部下に伝えるのは、管理職の仕事です。管理職が、部下の判断や行動をクレドに照らしてほめたり、話し合ったりすることで、クレドは日々の仕事の言葉になっていきます。理念を管理職が現場の言葉に置き換える方法は、経営理念・ビジョンの浸透方法で説明しています。評価や予算の仕組みに理念を組み込む方法は、企業理念の形骸化を防ぐ対策が参考になります。

見直しの時期

事業の中身や会社の規模が大きく変わると、作ったときのクレドが今の仕事に合わなくなることがあります。数年に 1 回など時期を決めて、社員の判断に実際に使われているか、使われていない項目はなぜかを確かめ、必要なら書き直します。書き直すときも、作ったときと同じように、社員が判断に迷う場面から出発します。

出典