コスト削減は、①費用を一覧にして大きい順に並べる、②費用ごとに効果と削った場合の影響を確かめる、③効果の低いものから見直す、④削った効果と影響を確かめ続ける、の順で進めます。よくある失敗は、全部署に一律で何%の削減を求める方法です。一律の削減は、効果の高い活動も同じ割合で削り、売上や品質を支えている活動を弱らせます。費用は、減らせば利益が増える単純なものではなく、売上や人の力を生むためのものです。どの費用が何を生んでいるかを確かめたうえで、効果の低いものから見直すことが、コスト削減の基本です。
一律削減の弊害
一律削減が選ばれやすいのは、判断が簡単で、公平に見えるからです。しかし、次のような弊害があります。
- 効果の高い活動も弱くなる:売上につながっている営業の活動や、品質を支えている点検の作業も、同じ割合で削られる
- 節約してきた部署ほど苦しくなる:普段から無駄を省いてきた部署には削る余地が少なく、削ると仕事が回らなくなる。逆に、余裕を持って予算を取ってきた部署は楽に達成できる
- 見えない費用が増える:研修を削って仕事の質が下がる、外注を削って社員の残業が増える、といった形で、帳簿に出にくい費用が増える
- 元に戻りやすい:費用の使い方そのものは変わっていないため、締め付けが緩むと元に戻る
手順 1:費用を一覧にして大きい順に並べる
会計の記録から、過去 1 年の費用を科目ごと、さらに取引先や活動ごとに一覧にします。大きい順に並べると、多くの会社では、上位のいくつかの費用が全体の大半を占めていることが分かります。見直しは、この上位の費用から始めます。
一覧には、費用ごとに、どの部署が使っているか、何のための費用か、前の年からどう変わったかを書き込みます。前の年から大きく増えている費用は、特に理由を確かめます。
手順 2:費用ごとに効果と影響を確かめる
上位の費用について、次の点を確かめます。
| 確かめること | 問いの例 |
|---|---|
| 目的 | この費用は何のために使っているか |
| 効果 | 使った結果、何が得られているか。数字で示せるか |
| 削った場合の影響 | 半分にしたら、やめたら何が起きるか |
| 代わりの方法 | 同じ効果を、より安い方法で得られないか |
| 決め方 | 誰が、どういう基準で使うことを決めているか |
効果を数字で示しにくい費用もあります。その場合も、「やめたら何が起きるか」を担当の部署に聞くと、その費用の役割が見えてきます。すべての費用の必要性を一から説明させる方法は、ゼロベース予算とはで説明しています。
手順 3:効果の低いものから見直す
確かめた結果をもとに、見直しの方法を決めます。
| 見直しの方法 | 向いている費用の例 |
|---|---|
| やめる | 使われていない仕組みの利用料、効果が確かめられない定期の広告、目的の分からない会費 |
| 量を減らす | 印刷、出張、会議の回数 |
| 単価を下げる | 取引先との条件の見直し、複数の取引先からの見積 |
| やり方を変える | 手作業の置き換え、対面から通信への切り替え、まとめて発注する |
| 残す・増やす | 売上や品質を支えている活動、人の育成、効果の出ている仕組み |
使われていない仕組みの利用料や、目的の分からない定期の支払いは、影響が小さく、すぐに見直せます。まずここから手を付けると、見直しの効果を早く示せます。
外注費は、単価だけを下げると品質が落ち、社内の手戻りの作業が増えることがあります。外注の総費用の考え方は、外注コスト削減で失敗しないTCO評価と手戻り工数の削減法で扱っています。事務の作業の手間を減らす方法は、事務の業務効率化のアイデアが参考になります。
削ってはいけない費用の見分け方
次のような費用は、削ると後で大きな損失になることがあるため、慎重に判断します。
1 つめは、売上に直接つながっている費用です。顧客との接点を生んでいる営業や広告の活動は、効果を確かめたうえで、効果の高いものは残します。
2 つめは、安全や法令の順守に関わる費用です。設備の点検、情報の守り、法令で求められる手続きにかかる費用を削ると、事故や違反につながるおそれがあります。
3 つめは、効果が出るまでに時間がかかる費用です。人の育成や研究、仕組みへの投資は、1 年の効果だけで見ると削られがちですが、削った影響は数年後に出てきます。こうした費用は、中期の計画の中で、何年で何を目指すのかを決めて判断します。
手順 4:削った効果と影響を確かめ続ける
見直しを決めたら、月ごとの予算と実績の比べ方の中で、削った費用が予定どおりに減っているか、元に戻っていないかを確かめます。予算と実績の比べ方は、予実管理のやり方で説明しています。
あわせて、削ったことによる影響も確かめます。売上や品質、社員の残業などに悪い変化が出ていないかを見て、影響が大きければ見直しを戻す判断もします。
実行時の落とし穴
現場の意見を聞かずに決める
費用が何を生んでいるかを一番よく知っているのは、その費用を使っている現場です。現場の意見を聞かずに削ると、思わぬところで仕事が回らなくなります。
削った分をどう使うかを決めない
削減で生まれた余裕を、何に使うかを決めていないと、社員には「締め付けられた」という印象だけが残ります。伸ばすべき活動への投資や、利益の確保など、削った分の使い道を示します。
小さな費用ばかりを細かく削る
備品や消耗品のような小さな費用を細かく締め付けると、手間の割に効果が小さく、社員の気持ちを下げます。見直しは、金額の大きい費用から始めます。




