会議の決定事項は、議事録の本文に埋めたままにせず、決定台帳(決まったことの一覧)と宿題の表(誰がいつまでに何をするか)に分けて共有すると、実行まで追えるようになります。会議で決めたことが実行されない原因の多くは、決定そのものではなく、決定の書き方と届け方にあります。「〇〇の方向で進める」のような曖昧な書き方、長い議事録の途中に埋もれた決定、会議に出ていない人に届かない共有が重なると、決めたはずのことが会議の外で消えていきます。この記事では、決定事項の書き方の型、台帳と宿題の表の見本、共有の手順、取締役会の議事録で法律が求める事項、決まったことが実行されない原因を順に説明します。
決まったことが実行されない理由
| 起きていること | 原因 |
|---|---|
| 参加者によって、決まった内容の理解が違う | 会議の最後に、決定事項を言葉にして確かめていない |
| 決定がどこに書いてあるか分からない | 決定が議事録の本文に埋もれていて、一覧になっていない |
| 会議に出ていない人が、決まったことを知らない | 共有の相手と期限が決まっていない |
| 宿題が進んでいない | 担当が複数、または期限がない。次の会議で確かめる枠がない |
| 以前の決定と矛盾する決定が出る | 過去の決定を一覧で確かめられない |
どれも、会議の進め方ではなく、会議の後の仕組みの問題です。
決定事項の書き方の型
決定事項は、あとから読んだ人が、会議に出ていなくても同じ理解になるように書きます。次の5つの要素を入れると、解釈の幅が小さくなります。
| 要素 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 何を | 決めた内容を、行動や基準の形で | 下期の重点顧客を、候補10社のうち上期の受注額の上位3社とする |
| 誰が決めたか | 決定者 | 営業部長 |
| なぜ | 決定の理由を1〜2行 | 上期の受注額と来期の予算計画から選んだ |
| いつから | 適用の開始日 | 10月1日から |
| いつ見直すか | 見直しの時期や条件 | 12月の部門会議で受注の状況を見て見直す |
「前向きに検討する」「〇〇の方向で進める」のような書き方は、決定ではなく持ち越しです。結論が出なかった議題は、決定事項ではなく「持ち越し」として、何が揃えば誰がいつ決めるかを書きます。
決定台帳と宿題の表の見本
決定台帳
| 決定番号 | 決定日 | 会議名 | 決定事項 | 決定者 | 理由 | 適用開始 | 見直し | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| D-001 | 9月30日 | 営業部門会議 | 下期の重点顧客を3社とする | 営業部長 | 上期実績と来期予算から | 10月1日 | 12月の部門会議 | 有効 |
「状態」の列には「有効」「変更」「廃止」を入れます。決定を変えるときは元の行を消さず、状態を変えて新しい行を足します。
宿題の表
| 番号 | 決定番号 | 内容 | 担当(1人) | 期限 | 状況 | 次に確かめる会議 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| T-001 | D-001 | 3社の担当者と訪問計画を決める | 営業課長 | 10月10日 | 未着手 | 10月の部門会議 |
宿題の担当は必ず1人にします。複数の人が関わる場合でも、進み具合に責任を持つ人を1人決め、ほかの人は内容の欄に書きます。
会議後の共有の手順
- 会議の最後に読み上げる。 書記が決定事項と宿題を読み上げ、決定者と担当者がその場で確かめます。
- 期限を決めて共有する。 翌営業日までなど、共有の期限を会議のルールとして決めておきます。
- 届ける相手を3つに分ける。 参加者、欠席者、決定の影響を受ける部署です。影響を受ける部署には、決定事項と適用開始日、問い合わせ先だけを短く伝えます。
- チャットやメールには要点とリンクを送る。 本体は台帳に置き、通知にはその行へのリンクを付けます。
- 次の会議の冒頭で宿題を確かめる。 アジェンダの最初に「前回の宿題の確認」の枠を置き、宿題の表の状況を更新します。アジェンダの組み方は、会議アジェンダのテンプレートと書き方で扱っています。
議事録そのものの書き方と、記録を残す習慣の作り方は、議事録を書かない組織で再確認会議を減らす記録の仕組みで扱っています。報告を会議の外に出して文書で共有する運用は、定例会議を非同期のドキュメント共有に移す方法も参考になります。
取締役会の議事録で法律が求める事項
社内の会議の記録の形は会社が自由に決められますが、取締役会の議事録は会社法で作り方が定められています。
- 会社法第369条第3項は、取締役会の議事について、法務省令で定めるところにより議事録を作成し、書面で作成されているときは、出席した取締役と監査役が署名または記名押印しなければならないと定めています。
- 会社法施行規則第101条第3項は、議事録の内容として、開催の日時と場所、議事の経過の要領とその結果、決議について特別の利害関係を持つ取締役がいるときはその氏名、議長がいるときはその氏名などを挙げています。
- 会社法第371条第1項は、取締役会設置会社は、取締役会の日から10年間、議事録などを本店に備え置かなければならないと定めています。
取締役会の議事録は、社内の決定台帳とは別に、法律の要件に沿って作る必要があります。具体的な書き方や自社の定款との関係は、司法書士・弁護士などの専門家に確かめてください。役員会議の議題の組み方は、役員会議のアジェンダを決議事項に絞る設計手順で扱っています。
運用で起きやすい失敗
- 台帳を作っても更新されない。 台帳の更新を書記の仕事として明記し、会議の最後の読み上げと同時に台帳を書き換える運用にします。会議が終わってから書こうとすると、後回しになります。
- 決定事項が多すぎて読まれない。 細かな確認事項まで決定として載せると、重要な決定が埋もれます。台帳に載せるのは、方針・基準・担当・予算など、あとから参照される決定に絞ります。
- 宿題の期限が過ぎても何も起きない。 次の会議の冒頭で必ず宿題を確かめ、期限を過ぎたものは新しい期限と障害の有無を確かめます。
- 欠席者が決定に異議を唱えて蒸し返す。 欠席者が事前に意見を出せる仕組みと、決定後に異議を出すときの窓口と期限を決めておくと、決定の蒸し返しを減らせます。
まとめ
- 決まったことが実行されないのは、決定の書き方と届け方の問題であることが多い
- 決定事項は、何を・誰が決めたか・なぜ・いつから・いつ見直すか、の5つの要素で書く
- 決定台帳と宿題の表に分け、宿題の担当は1人にし、次の会議の冒頭で確かめる
- 取締役会の議事録は、会社法と会社法施行規則の定めに沿って別に作り、10年間本店に備え置く
出典
- 会社法(平成17年法律第86号)第369条・第371条 — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第101条 — e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012




