人事評価のコメントは、①評価の理由になった事実、②よかった点、③次の期に期待すること、の順に、具体的な行動と結果で書くと、部下に伝わり、次の行動につながります。「よく頑張った」「もう少し積極性がほしい」のようなコメントは、書く側には楽でも、読む側には何をどう変えればよいかが分かりません。評価の段階を付けた理由を、部下の行動や結果の事実で説明し、次の期に何ができれば一段上の評価になるのかを書くことが、評価のコメントの役割です。
評価のコメントを書くときの型
| 順番 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1 | 評価の理由になった事実 | 「新規の受注は目標 10 件に対し 12 件でした」 |
| 2 | よかった点(行動) | 「展示会の後、1 週間以内に訪問の約束を取った動きが結果につながりました」 |
| 3 | 足りなかった点(事実で) | 「提案の件数は目標 30 件に対し 24 件でした」 |
| 4 | 次の期に期待すること | 「見積の作成を早め、提案の件数を増やすことを期待します」 |
書く前に、評価の基準と、部下の期の初めの目標、部下が書いた自己評価を読み返します。部下の自己評価と自分の見方が違う点には印を付けておき、コメントではその点に必ず触れます。自己評価の書き方は、自己評価の書き方と例文で扱っています。
評価の段階別の例文
例文は説明のための例です。自分の会社の評価の基準と、部下の実際の仕事に合わせて書き換えてください。
期待を大きく上回った場合
担当の地域の売上は目標 3,000 万円に対し 3,600 万円で、部で最も高い達成率でした。既存の顧客への定期の訪問を続けながら、紹介を通じて新しい取引先を 4 社増やしたことが大きな要因です。後輩 2 名の提案書を見て助言し、2 名とも初めての受注につながりました。次の期は、ご自身の顧客の開拓の進め方を、チームの手順として共有してもらうことを期待します。
期待どおりの場合
月次の締めの作業を、期のすべての月で期限までに終えました。支払いの処理では、前の期にあった確認の漏れが無くなり、手順書の見直しが効いています。一方、部署からの問い合わせへの回答に数日かかることがあり、確かめる先が分からない問い合わせが残りがちでした。次の期は、問い合わせの種類ごとに確かめる先を一覧にし、回答までの日数を短くすることを期待します。
期待を下回った場合
新しい機能の公開は、予定の 9 月末から 1 か月遅れました。仕様の変更が重なったことに加え、遅れの見込みを関係者に伝えたのが公開の予定日の直前になり、営業の側で顧客への説明をやり直すことになりました。作業の品質には問題が無く、公開後の不具合は少なく済んでいます。次の期は、遅れの見込みが出た時点で、その日のうちに関係者に伝えることを基準にしてください。これができれば、評価は一段上がると考えます。
評価項目別の例文
| 項目 | 例文 |
|---|---|
| 仕事の成果 | 「担当の 5 件の案件のうち 4 件を期限までに終えました。残る 1 件も顧客と期限を合意し直し、影響を最小限にとどめました」 |
| 仕事の進め方 | 「作業の前に手順と期限を書き出し、週の初めに共有していたため、チームの予定が立てやすくなりました」 |
| 協力・チームワーク | 「繁忙期に他の担当の入力作業を引き受け、チーム全体の締めが期限に間に合いました」 |
| 顧客への対応 | 「苦情を受けた際、その日のうちに上司に伝え、翌日には顧客に対応の案を示しました」 |
| 部下の育成(管理職) | 「部下 3 名と月 1 回の面談を続け、うち 2 名が一人で顧客を担当できるようになりました」 |
| 改善 | 「請求書の確認の手順を見直し、発行の誤りを月平均 4 件から 1 件に減らしました」 |
評価項目そのものの作り方は、人事評価の評価項目の例で説明しています。
避けたい書き方
- 人柄や性格を書く:「真面目な性格」「やる気が感じられない」は、行動や結果ではなく人柄への判断で、本人は変えようがない。何をしたか、しなかったかを書く
- あいまいな言葉だけで書く:「よく頑張った」「積極性が足りない」では、何を続け、何を変えればよいかが分からない
- 期の終わりの出来事だけで書く:評価の直前の出来事が印象に残りやすく、期の前半の仕事が抜ける。期の間に気づいたことを記録しておく
- ほかの人と比べて書く:「〇〇さんに比べて」と書くと、本人は基準ではなく人と比べられたと受け取る。評価の基準に照らして書く
- 段階とコメントが合わない:段階は低いのにコメントはほめる言葉だけ、という書き方では、本人は理由が分からない
評価の直前の出来事に引きずられる、全員に真ん中の段階を付ける、といった評価をする側の偏りは、人事評価のエラーの種類と防ぎ方で扱っています。
書きやすくするための準備
評価のコメントを書くのに時間がかかるのは、期の終わりになってから部下の仕事を思い出そうとするためです。期の間に、部下の仕事で気づいたことを、日付と一緒に短く記録しておくと、コメントを書くときの材料になります。記録するのは、よかった行動も、足りなかった行動も両方です。
1on1 や月次の面談を行っている場合は、その記録も材料になります。面談で話した目標の進み具合や、部下が困っていたことを振り返ると、期の間の変化が見えてきます。
面談でコメントを伝えるときの注意
コメントは、書いて渡すだけでなく、評価の面談で伝えます。面談では、コメントを読み上げるより、まず部下に自己評価の説明をしてもらい、その後に、自分が見た事実と評価の理由を伝えます。部下の見方と違う点は、どの事実をどう見たかを話し合います。
低い評価を伝える場合も、事実と基準に照らして説明し、次の期に何ができれば評価が上がるのかを具体的に伝えます。部下が納得しない場合は、その場で結論を急がず、確かめたい事実を後日確かめると伝えます。面談の進め方は、評価面談の進め方で説明しています。
実行時の落とし穴
管理職ごとに書き方がばらばら
書き方の型や例文が共有されていないと、管理職ごとにコメントの詳しさが大きく違い、部署によって評価の伝わり方に差が出ます。人事の担当者が型と例文を配り、書き方をそろえておきます。
コメントを書かずに段階だけ付ける
段階だけで理由が書かれていないと、部下は評価の理由が分からず、次の期に何を変えればよいのかも分かりません。段階を付けたら、その理由を必ずコメントに書きます。
次の期の目標につなげない
コメントに書いた「次の期に期待すること」は、次の期の目標を立てるときの材料にします。コメントと次の期の目標がつながっていないと、同じ指摘が毎期繰り返されます。目標の書き方は、目標設定の書き方と例文で扱っています。




