意思決定のフレームワークは、選択肢を並べ、比べ、決めるための型です。判断に迷う原因の多くは、何を決めるのかがあいまいなこと、選択肢が出そろっていないこと、比べる物差しが人によって違うことにあります。フレームワークを使うと、考えるべきことの抜けが減り、判断の理由を周りと共有しやすくなります。ただし、フレームワークは答えを自動で出すものではありません。場面に合った型を選び、前提を書き出して確かめながら使うことが大切です。

意思決定の流れと、使うフレームワーク

意思決定は、①何を決めるのかをはっきりさせる、②選択肢を出す、③比べる、④決めて実行する、の流れで進みます。それぞれの段階で役に立つフレームワークが違います。

段階やること役に立つフレームワーク
何を決めるのかをはっきりさせる問題を分解し、原因や論点を絞るロジックツリー
選択肢を出す考えられる案を漏れなく並べるロジックツリー(解決策の木)、ブレーンストーミング
比べる物差しを決めて案を比べる意思決定マトリクス、プロコン表、デシジョンツリー
優先順位を付ける複数の課題の順番を決める緊急度と重要度の表、効果と手間の表
決めて実行する決めた理由と次の行動を残す決定の記録、振り返り

代表的なフレームワーク

ロジックツリー

大きな問題を、木の枝のように小さな要素に分けていく型です。「売上が下がった」を「客数」と「客単価」に分け、客数をさらに「新しい客」と「続けて買う客」に分ける、というように分解します。原因を探すときは「なぜ」で、解決策を探すときは「どうやって」で分けていきます。分けるときは、同じ階層の要素が重ならず、漏れもないように意識します。

意思決定マトリクス

複数の案を、決めた評価の軸(費用、効果、実行のしやすさ、危険の大きさなど)で点数を付け、軸ごとの重みを掛けて合計し、比べる型です。軸と重みを先に決めてから点数を付けることで、声の大きい人の好みで決まることを防げます。作り方は、意思決定マトリクスの作り方で詳しく説明しています。

プロコン表

案ごとに、良い点(プロ)と悪い点(コン)を書き出して比べる型です。選択肢が 2〜3 個の、比較的小さな判断に向いています。書き出すだけで、見落としていた悪い点に気づくことがあります。良い点と悪い点の数だけで決めず、それぞれの重さを考えて判断します。

デシジョンツリー

判断の分かれ道と、その先に起こりうる結果を、木の形で書き出す型です。「新しい商品を出すか、出さないか」「出した場合、売れるか、売れないか」のように、決める分かれ道と、自分では決められない分かれ道を分けて書きます。それぞれの結果の見込みの確からしさと、得られるもの・失うものを書き入れると、どの選択が見込みとして有利かを比べられます。見込みの確からしさは推定なので、数字を変えると結論が変わらないかを確かめます。

緊急度と重要度の表

課題を、緊急度(急ぐかどうか)と重要度(大きな影響があるかどうか)の 2 つの軸で 4 つに分け、取り組む順番を決める型です。急ぐが重要でない課題に時間を取られ、重要だが急がない課題(仕組みづくり、人の育成など)が後回しになっていないかを確かめるのに役立ちます。

効果と手間の表

複数の改善案を、効果の大きさと、実行の手間の 2 つの軸で並べる型です。効果が大きく手間の小さい案から取りかかると、早く成果が出ます。

場面に応じた選び方

場面向いているフレームワーク
問題の原因がはっきりしないロジックツリー(なぜの木)
取引先や仕組みなど、複数の候補から 1 つを選ぶ意思決定マトリクス
やるか、やらないかの小さな判断プロコン表
先の見通しによって結果が大きく変わる投資の判断デシジョンツリー
やることが多すぎて手が回らない緊急度と重要度の表、効果と手間の表

1 つの判断で、複数のフレームワークを組み合わせることもあります。例えば、ロジックツリーで原因を絞り、解決策を出し、意思決定マトリクスで比べる、という流れです。

フレームワークだけでは防げないこと

フレームワークを使っても、判断の前提となる情報の集め方や、評価の軸の決め方に偏りがあれば、結論も偏ります。人は、自分の考えに合う情報ばかりを集めたり、最初に聞いた数字に引きずられたりしがちです。こうした判断の偏り(認知バイアス)への対策は、経営判断を狂わす認知バイアスの罠と対策で扱っています。

また、誰が決めるのか、いつまでに決めるのかが決まっていないと、フレームワークで案を比べても、決まらないまま時間が過ぎます。決め方を先に決めておく考え方は、決断の先送りが続く組織で説明しています。複数の人で決めるときの決め方(全員一致・多数決・一任)の使い分けは、集団意思決定とはが参考になります。

実行時の落とし穴

表を作ることが目的になる

フレームワークの表をきれいに作ることに時間をかけすぎると、判断が遅れます。判断の大きさに見合った手間にとどめます。

結論に合わせて点数を付ける

先に結論を決めてから、その結論が勝つように軸や点数を調整すると、フレームワークを使う意味がありません。軸と重みは、案を見る前に決めます。

決めた理由を残さない

決めた理由と前提を記録しておかないと、後で状況が変わったときに、判断を見直すべきかどうかが分かりません。決めた内容とあわせて、理由と前提を残します。