キックオフミーティングは、プロジェクトの始めに、①目的と終わりの形、②範囲とやらないこと、③進め方と日程、④役割と決める人、⑤連絡と報告の決まり、の 5 つを関係者全員でそろえる会議です。あいさつと意気込みを伝えるだけで終わると、プロジェクトが進んでから「そこは自分の担当だと思っていなかった」「その判断は誰がするのか」という食い違いが起き、手戻りが生まれます。キックオフの価値は、始まる前に食い違いを見つけて、その場で決めておけることにあります。
キックオフミーティングのアジェンダの例
1 時間半の会議を想定した例です。時間は目安で、プロジェクトの規模に合わせて変えます。
| 順番 | 議題 | 時間 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | 開会と参加者の紹介 | 10 分 | 参加者の名前と、プロジェクトでの役目を 1 人ずつ短く |
| 2 | 目的と背景 | 10 分 | なぜこのプロジェクトをやるのか、何が変われば成功か |
| 3 | 範囲と成果物 | 15 分 | やること、やらないこと、最後に何を渡すか |
| 4 | 日程と節目 | 15 分 | 全体の日程、途中の節目、それぞれの節目で確かめること |
| 5 | 役割と決める人 | 15 分 | 誰が作業をし、誰が確かめ、誰が決めるか |
| 6 | 連絡と報告の決まり | 10 分 | 連絡の手段、定例の会議、進み具合の報告の形 |
| 7 | 気になっていることの確認 | 10 分 | 心配な点、先に決めておくべきことを出してもらう |
| 8 | 決まったことと宿題の確認 | 5 分 | 会議で決まったこと、次にやることを読み上げる |
会議のアジェンダ全般の作り方は、会議アジェンダのテンプレートと書き方で説明しています。
キックオフの資料に入れる項目
資料は、会議の後もプロジェクトの間ずっと見返す文書になります。次の項目を入れておきます。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| プロジェクトの名前と期間 | 開始日と終了の予定日 |
| 目的と背景 | なぜやるのか。今どんな問題があるのか |
| 成功の基準 | 何がどうなれば成功と言えるか。数字で表せるものは数字で |
| 範囲 | やること、やらないこと。やらないことも必ず書く |
| 成果物 | 最後に何を、誰に渡すか |
| 日程と節目 | 全体の日程と、途中で確かめる節目の日付 |
| 体制と役割 | 参加者の名前、担当する作業、決める権限の範囲 |
| 連絡の決まり | 連絡の手段、定例の会議の日時、報告の形と頻度 |
| 心配な点 | 今の時点で分かっている心配な点と、その対応の担当 |
「やらないこと」を書いておくと、プロジェクトの途中で「ついでにこれもお願いしたい」という依頼が来たときに、範囲の外であることを示して、日程や費用を話し合うきっかけにできます。
役割と決める人をそろえる
キックオフでいちばん時間をかけたいのが、役割の確認です。作業の担当者を並べるだけでなく、それぞれの作業について、誰が確かめ、誰が最終的に決めるのかを決めます。担当と決める人を分けて整理する方法には、RACI(実行する人、説明の責任を持つ人、相談を受ける人、報告を受ける人を分ける考え方)を使った役割分担表があります。作り方は役割分担表の作り方で説明しています。
会議の場では、役割分担表を画面に映し、1 行ずつ「この作業はこの人が担当し、この人が決める、でよいですか」と確かめます。とくに、複数の部署にまたがる作業、取引先と自社の境目にある作業、判断が必要な作業は、担当が空いていたり、2 人の担当が重なっていたりしやすいため、丁寧に確かめます。
事前の準備
資料を前もって配る
資料は会議の数日前に配り、目を通してもらうよう頼みます。会議の中で資料を読み上げる時間を減らせれば、そのぶん、質問と確認に時間を使えます。
決める人の予定を先に押さえる
プロジェクトの目的や範囲について最終的に決める人の予定を、最初に押さえます。決める人が出られない日にキックオフを開くと、範囲や優先順位についての質問に誰も答えられず、持ち帰りが増えます。
決めておきたいことを書き出す
キックオフの場で決めておきたいこと(例:定例の会議の曜日、成果物の確かめ方、連絡の手段)を事前に書き出し、案を用意しておきます。案があれば、会議の場では「この案でよいか」を確かめるだけで済みます。
当日の進め方
進行役は、議題ごとに時間を区切り、話が広がりすぎたら「この件は別に時間を取ります」と区切ります。説明の後には、必ず質問の時間を取ります。キックオフの場で出た質問は、後から出る食い違いの芽です。答えがその場で出ない質問は、誰がいつまでに答えるかを決めて、宿題に入れます。
終わりの 5 分では、決まったことと宿題を読み上げて確かめます。記録の役目を決めておき、会議が終わった時点で議事録がほぼ出来上がっている状態を目指します。議事録の書き方は、議事録の書き方とテンプレートで説明しています。
会議の後にやること
キックオフの当日か翌営業日までに、議事録と、会議で直した資料を関係者に共有します。共有の場所を決めておき、プロジェクトの間の資料は全部そこに置くようにすると、後から入った人も同じ情報にたどり着けます。
最初の定例の会議では、キックオフで出た宿題の進み具合を確かめます。キックオフで決めた役割や連絡の決まりが、実際に回っているかも確かめ、合わないところがあれば早めに直します。決めたことを変えた場合は、資料の該当する箇所を直し、変えた日と理由を書き添えます。
よくある失敗
あいさつと意気込みで終わる
責任者のあいさつと、プロジェクトへの期待を伝えるだけで終わると、参加者は何をすればよいかが分からないまま会議を出ます。役割と日程と連絡の決まりまで決めて、初めてキックオフの役目を果たします。
やらないことを決めない
範囲の中身だけを話して、やらないことを決めないと、途中で依頼が膨らみ、日程が延びます。やらないことを資料に書き、関係者に確かめてもらいます。
決める人が出ていない
作業の担当者だけが集まり、決める権限を持つ人がいないと、範囲や優先順位の質問が全部持ち帰りになります。決める人の予定を最初に押さえます。
資料を作って終わる
キックオフの資料を作っても、その後に誰も見返さなければ、決めたことは忘れられます。定例の会議で資料を開き、役割や日程が変わったら資料を直す習慣を付けます。



