リーダーシップの理論は、大きく分けて、リーダーの資質に注目した「特性理論」、リーダーの行動に注目した「行動理論」、状況によって望ましいリーダーシップが変わるとする「条件適合理論」の順に発展し、その後、組織の変化を導く「変革型リーダーシップ」や、メンバーを支える「サーバント・リーダーシップ」などの考え方へと広がってきました。理論の流れを追うと、「どんな人がリーダーに向いているか」から「どんな行動が効くか」「どの場面で何が効くか」へと、問いが変わってきたことが分かります。職場で使うときは、どれか 1 つを正解とするのではなく、自分の行動を振り返る物差しとして、目的に合わせて使い分けます。

理論の流れ

分類主な問い代表的な理論
特性理論優れたリーダーに共通する資質は何か資質の研究(知性、自信、誠実さなど)
行動理論成果を上げるリーダーは、どんな行動をとっているかオハイオ州立大学の研究、ミシガン大学の研究、PM 理論、マネジリアル・グリッド
条件適合理論状況によって、望ましいリーダーシップはどう変わるかフィードラーの条件適合理論、SL 理論、パス・ゴール理論
その後の考え方変化を導く、メンバーを支える、自分らしさを生かす、役割を分け合う変革型リーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、オーセンティック・リーダーシップ、シェアドリーダーシップ

特性理論

特性理論は、優れたリーダーに共通する資質(知性、自信、決断力、誠実さなど)を探す研究です。20 世紀の前半に盛んに行われました。しかし、研究が進むにつれ、どんな場面でも通用する資質の一覧ははっきりせず、同じ資質を持っていても、場面によって成果が違うことが分かってきました。この限界から、研究の関心は、目に見えて身に付けられる「行動」へと移っていきます。

行動理論

行動理論は、成果を上げるリーダーがどんな行動をとっているかに注目します。多くの研究で共通して見つかったのが、仕事を前に進める行動と、人との関係を保つ行動の 2 つの軸です。

米国のオハイオ州立大学の研究では、仕事の枠組みを決める行動(構造づくり)と、メンバーへの気配り(配慮)の 2 つが示されました。日本では、社会心理学者の三隅二不二が、目標を達成させる働き(P)と集団をまとめる働き(M)の 2 つで捉える PM 理論を提唱しました。ブレークとムートンのマネジリアル・グリッドも、業績への関心と人への関心の 2 つの軸でリーダーの型を分けます。

行動理論の利点は、リーダーシップを身に付けられるものとして扱える点です。自分に足りない行動が分かれば、その行動を増やすことで変われます。PM 理論の中身と使い方は、PM理論とはで説明しています。

条件適合理論

条件適合理論は、望ましいリーダーシップは状況によって変わる、と考えます。行動理論が「どの場面でもよい行動」を探したのに対し、条件適合理論は「どの場面で、どの行動がよいか」を問います。

フィードラーの理論は、リーダーとメンバーの関係、仕事の決まり具合、リーダーの権限の強さによって、仕事を重視するリーダーと人間関係を重視するリーダーのどちらが成果を上げやすいかが変わるとしました。ハーシーとブランチャードの SL 理論(状況対応型リーダーシップ)は、メンバーの成熟の度合いに応じて、指示を多くする段階から、任せる段階へと、リーダーの行動を変えるべきだとします。ハウスのパス・ゴール理論は、メンバーが目標にたどり着くための道筋を示し、障害を取り除くことがリーダーの役目だとします。

条件適合理論は、職場の実感に近い考え方です。新人には手順をはっきり示し、経験を積んだメンバーには任せる、という使い分けは、多くの管理職が自然に行っていることを理論として整理したものといえます。

その後の考え方

1970 年代以降、組織を取り巻く変化が大きくなる中で、リーダーの役目についての新しい考え方が出てきました。

変革型リーダーシップは、目指す姿を示してメンバーの意欲を高め、組織の変化を導くリーダーシップです。バーンズが提唱し、バスが発展させました。決まった仕事を回すことより、変化の方向を示し、メンバーの考え方や行動を変えていくことに重きを置きます。

サーバント・リーダーシップは、リーダーがまずメンバーに仕え、支えることで成果を引き出す考え方で、グリーンリーフが提唱しました。中身は、サーバント・リーダーシップとはで説明しています。

オーセンティック・リーダーシップは、リーダーが自分の価値観に正直に振る舞うことで、メンバーの信頼を得る考え方です。中身は、オーセンティック・リーダーシップとはで扱っています。

シェアドリーダーシップは、リーダーの役割を 1 人の上司だけでなく、場面に応じて複数のメンバーが担う考え方です。中身は、シェアドリーダーシップとはで説明しています。

職場での使い分け

知りたいこと・場面役に立つ理論
自分の行動に何が足りないかを振り返りたい行動理論(PM 理論、マネジリアル・グリッド)
メンバーによって接し方を変えたい条件適合理論(SL 理論、パス・ゴール理論)
組織の大きな変化を導く立場になった変革型リーダーシップ
メンバーの成長と自律を支えたいサーバント・リーダーシップ
チームの判断が自分に集中して回らないシェアドリーダーシップ

理論は、自分の行動を振り返るための物差しです。例えば、行動理論で自分に足りない行動が分かったら、次の 1 か月で増やす行動を 1 つ決め、メンバーの反応で確かめます。条件適合理論を使うなら、メンバーごとに経験と意欲の度合いを見立て、接し方を変えてみます。

理論をまたいで共通しているのは、仕事を前に進めることと、人との関係を保つことの 2 つを、場面に応じて使い分けることが、リーダーに求められるという点です。どの理論から入っても、最後はこの 2 つをどう組み合わせるか、という問いに戻ってきます。

リーダーシップとマネジメントの違いについては、リーダーシップとマネジメントの違いで扱っています。

理論を学ぶときの注意

型に人を当てはめて終わる

「あなたは○○型」と型を当てはめるだけでは、行動は変わりません。型は、次に増やす行動を決めるための入口として使います。

1 つの理論ですべてを説明しようとする

それぞれの理論は、リーダーシップの一部に光を当てたものです。1 つの理論だけで職場のすべてを説明しようとせず、場面に合わせて使い分けます。

自分の見立てだけで判断する

自分の行動についての見立ては、メンバーから見た姿と食い違うことがよくあります。メンバーの声を聞いて、自分の見立てを確かめます。