人事評価の目標は、「何を」「いつまでに」「どの水準まで」「どのように(方法・手段)」の4つの要素に、「自分がどのような役割を果たし、どう貢献するか」を加えて書くと、期末に達成したかどうかを判断できる目標になります。「売上を伸ばす」「業務を効率化する」のように方向だけを書いた目標は、期末に評価者と本人の解釈が分かれ、評価の根拠になりません。この記事では、目標の書き方の型と職種別の例文、数字にしにくい仕事の書き方、提出前に確かめるチェック項目を示したうえで、立てた目標が期中に放置される原因と防ぎ方を説明します。

目標の書き方の型

内閣人事局・人事院の「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」(2022年6月版)は、期末に達成状況を判定できるよう、目標をできる限り具体的に、「何を、いつまでに、どの水準まで、どのように(方法・手段)」の形で書くよう求めています。あわせて、チームや組織が成果を挙げるうえで、職位に応じてどのような役割を果たし、どう貢献するかも記載するとしています。

要素書く内容書き方の例
何を取り組む仕事や対象既存顧客への定期訪問、請求書の発行手順
いつまでに期限9月末までに、今期中に
どの水準まで達成したと判断する状態や数値20社訪問する、処理時間を1件10分以内にする
どのように方法・手段訪問記録の様式を作って、手順書を作成して
役割・貢献自分が担う部分と周囲への貢献手順書の作成を担当し、後輩2名に説明する

この型に当てはめると、「業務を効率化する」は「9月末までに、請求書の発行手順を手順書にまとめ、担当者2名が単独で処理できる状態にする」のように書き直せます。期末には「手順書はできたか」「2名が単独で処理できるか」を確かめるだけで、達成したかどうかを判断できます。

職種別の目標の例文

以下は、型に沿って書いた例文です。数値や期限は自社の状況に合わせて置き換えて使います。

営業職

  • 9月末までに、既存顧客のうち取引額の上位20社を訪問し、来期の発注予定を聞き取って記録に残す
  • 今期中に、失注した案件の理由を案件ごとに記録し、四半期ごとに傾向をまとめて課内で共有する
  • 今期の新規受注額を前期より1割増やす。そのために、紹介の依頼を既存顧客に月5件以上行う

事務職

  • 8月末までに、請求書の発行手順を手順書にまとめ、担当者2名が単独で処理できる状態にする
  • 今期中に、経費精算の差し戻し件数を前期の半分にする。差し戻しの理由を集計し、申請の手引きを改訂する
  • 9月末までに、紙で保管している契約書を一覧表にし、更新期限を管理できるようにする

技術職

  • 今期中に、担当する製品の不具合の再発件数を前期より減らす。原因と対策を記録する様式を作り、全件に記入する
  • 7月末までに、手作業で行っている検査データの集計を自動化し、集計にかかる時間を半分にする
  • 今期中に、担当分野の技術資料を3本作成し、チームが参照できる場所に置く

管理職

  • 今期中に、課のメンバー全員と月1回の個別面談を行い、仕事の進み具合と困りごとを記録する
  • 9月末までに、課の業務を一覧にして、やめる仕事・減らす仕事を3件以上決め、残業時間を前期より減らす
  • 今期中に、後任の候補者を1名決め、担当業務の半分を任せられる状態にする

管理職の目標には、部下の育成や業務の見直しのように、チームの運営そのものを対象にした目標を1つ以上入れます。国家公務員の人事評価でも、課室長級以上の職員は、業務運営や組織統率・人材育成に関する課題について、達成状況を振り返ることができる具体的な目標(マネジメント目標)を1つ以上設定するとされています。

数字にしにくい仕事の目標の書き方

企画や管理部門の仕事のように、成果を数字で表しにくい仕事もあります。その場合は、数値の代わりに「期限までにどういう状態になっていれば達成か」を書きます。たとえば「制度の見直しを進める」ではなく、「9月末までに、現行制度の課題を5つ以上洗い出し、見直し案を部長会に提出する」とすれば、期末に提出したかどうかで判断できます。

期首の時点では定量的に書けない仕事もあります。前出のガイドは、期首の目標は定性的なものとし、期末に振り返り型で成果を検証する方法を示しています。この場合は、目標の達成度ではなく、成し遂げた仕事の内容が期待された役割にかなうものだったかを評価します。振り返り型にするときも、期首に「当期に意識を集中すべき点」をはっきりさせておくことが前提になります。

短期間で成果が出ない仕事は、評価期間の中で到達すべき中間の地点を目標にします。「来年度に事業の見直しができるよう、〇月末までに現行事業の課題を洗い出した評価資料を作る」のように、最終的な成果に向けた途中の到達点を書きます。

提出前に確かめるチェック項目

前出のガイドは「目標設定チェックリスト」を示しています。企業でも使いやすいように言葉を置き換えると、次のようになります。

  • 何を・いつまでに・どの水準まで・どのように、が書かれ、期末に達成したかを判断できるか
  • 自分の役割と、周囲への貢献が書かれているか
  • 達成しやすい目標だけになっていないか。目標の達成にこだわって水準を低くしていないか
  • 会社や部署の目標とつながっているか
  • 今の自分の力では簡単には届かない、挑戦的な目標が1つ以上入っているか
  • (管理職)チームの運営や部下の育成についての目標が1つ以上入っているか
  • 目標ごとに、難しさと、仕事の中での比重が決まっているか

目標の難しさと比重を上司と確かめておくことも大切です。国家公務員の業績評価では、目標ごとに「困難度」と「重要度」を設定し、重要度は業務に占める比重が特に高い目標に付けるもので、全ての目標に付けるものではないとされています。易しすぎる目標を立てた場合は、期首の面談で職位にふさわしい水準に設定し直すよう指導することも求められています。目標を低く立てるほど評価が上がる仕組みの問題は、目標を低く立てる社員が生まれる減点評価の罠で詳しく扱っています。

目標が期中に放置される原因

目標を立てても、期末まで見返されないまま評価の時期を迎える会社は少なくありません。原因は、目標の書き方よりも、立てた後の運用にあります。

一つ目は、期中に目標を見る場が決まっていないことです。期首に目標を決め、期末に評価するだけでは、その間の半年は目標が使われません。進み具合を確かめる機会がないため、遅れに気づくのは期末になり、手を打つ時間が残っていません。前出のガイドは、評価期間中も目標の達成状況や職務遂行の中でとられた行動をよく観察し、指導・助言や評価事実の記録を行うよう求めています。

二つ目は、仕事の内容が変わっても目標を直さないことです。期の途中で担当が替わったり、優先する仕事が変わったりすると、期首の目標は実際の仕事と合わなくなります。目標を変える手続きがないと、本人は合わない目標を放置し、期末には実際にしていない仕事で評価されることになります。ガイドも、評価期間中に業務の変更があった場合は目標の変更・追加ができるとしています。

三つ目は、目標と日々の仕事がつながっていないことです。評価シートの目標と、週ごとの打ち合わせで話す仕事の中身が別々になっていると、目標は評価のためだけの書類になります。月に1回の個別面談で目標の進み具合を確かめるようにすると、目標が日々の仕事の話題に戻ってきます。1on1 と目標管理を結びつける方法は、1on1を目標管理と連動させる方法で説明しています。

目標を書くときの落とし穴

  • 会社の目標をそのまま自分の目標にする:「全社の売上を1割伸ばす」を個人の目標にすると、自分が何をするのかが書かれていません。会社の目標のうち、自分が担う部分に分けてから書きます。部署ごとの目標が互いにぶつかる問題は、部門間の対立を生まないKPI設計で扱っています。
  • 行動だけを書いて水準を書かない:「顧客を訪問する」だけでは、何社訪問すれば達成かが分かりません。水準の欄を空けないようにします。
  • 目標の数を増やしすぎる:目標が多いほど一つあたりの比重が下がり、期中に確かめる手間も増えます。比重の大きい仕事に絞ります。

評価の項目そのものの作り方は人事評価の評価項目の例で、目標管理が形だけになった組織の立て直し方は意味のない目標管理を立て直す方法で扱っています。人事・評価のほかの記事は人事・評価にまとめています。

出典