評価面談は、評価の結果を伝えること自体が目的ではなく、結果を材料にして部下が次の期にどう行動するかを決める場です。進め方の基本は、面談の前に目標と期中の記録を読み、伝える事実を用意しておくこと、当日は部下の振り返りを先に聞き、認識が一致する点から話し始め、事実に基づいて評価の理由を伝え、次の期に向けた提案と前向きな言葉で終えることです。この記事では、国家公務員の人事評価で使われている面談ガイドラインを手がかりに、期首・期中・期末の面談で行うこと、準備、当日の流れ、伝え方を説明し、面談が「未達の言い訳を聞く場」になる原因と防ぎ方も扱います。
評価面談の種類と目的
評価面談は、期末の1回だけを指すものではありません。国家公務員の人事評価では、期首に目標を確定させる面談と、期末に結果を開示して指導・助言を行う面談があり、その間の期中にも定期的な対話を行うこととされています(人事評価の基準、方法等に関する政令 第10条〜第12条、内閣人事局「面談ガイドライン」令和4年6月)。
| 面談 | 時期 | 主な目的 | 時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 期首面談 | 評価期間の始め | 今期の役割と期待を伝え、目標を合意して確定する | 15〜30分程度 |
| 期中の対話 | 評価期間中に定期的に | 進み具合を確かめ、目標の変更や支援を話し合う | 決まりはない |
| 期末面談 | 評価の確定後 | 評価結果と理由を伝え、次の期に向けて指導・助言する | 15〜30分程度 |
時間の目安は同ガイドラインが示しているものです。面談の中身を決めるのは時間の長さではなく、評価者が事前に用意した事実の量です。
面談が未達の言い訳を聞く場になる原因
期末面談が、部下が目標に届かなかった理由を説明し、上司がそれを聞くだけの場になっている会社は少なくありません。部下にとっては弁明の場、上司にとっては結論が決まった話を伝える場になり、どちらにとっても次の期につながりません。
原因の一つ目は、期中に進み具合を確かめていないことです。期首に目標を決めた後、期末まで目標の話をしなければ、遅れに気づくのは期末です。その時点では手を打つ時間が残っておらず、話せることは届かなかった理由だけになります。面談ガイドラインも、期首・期末の面談を行うことでよしとするのではなく、期中にも定期的に対話の機会を設け、状況を把握し、相談に応じ、指導・助言を行うよう求めています。
二つ目は、評価者が事実を持っていないことです。期中の行動や成果の記録がなければ、評価者は部下の説明を聞いて判断するしかありません。すると、説明のうまい部下の評価が上がり、面談は説明の出来を競う場になります。
三つ目は、結果の良し悪しだけを話すことです。「達成したか、しなかったか」だけを話題にすると、部下は達成しなかった理由を外部の事情に求めます。ガイドラインは、結果の良し悪しよりも原因に目を向け、プロセスを十分に分析して話し合うこと、理由や原因を詰問するのではなく「今後どうしたらできるか、何をすればよいか」と相手の考えを尋ねることを勧めています。
面談の前に準備すること
期末面談の前には、次の準備をしておきます。
- 目標と自己評価を読む:部下が期首に立てた目標と、期末に提出した自己評価を読み、評価者の見方と違う点に印を付けます。
- 期中の記録を見返す:期中に書き留めた行動や成果の事実を見返し、評価の根拠として伝える事実を選びます。強みと改善点の両方を、具体的な場面で説明できるようにしておきます。
- 伝えることを決める:評価の結果と理由、次の期に伸ばしてほしい点、改善してほしい点を、それぞれ一つか二つに絞ります。多くを伝えようとすると、部下に残るものがなくなります。
- 場所と時間を確保する:ほかの社員に聞こえない場所で、途中で中断されない時間を取ります。
期首面談の前には、部下が出した目標の案を読み、具体的に書かれているか、職位にふさわしい水準か、会社や部署の目標とつながっているかを確かめておきます。目標の書き方の確かめ方は目標設定の書き方と例文で示しています。
期末面談の当日の流れ
面談ガイドラインが示す期末面談の流れは、次のとおりです。企業で使うときも、この順番がそのまま参考になります。
- 今期の振り返りを部下から聞く:労をねぎらう言葉から始め、部下に今期の取り組みを話してもらいます。目標を達成した、または届かなかった要因も部下から聞きます。部下が話している間は、途中で口を挟みません。
- 評価の結果と理由を伝える:期中に集めた事実に基づいて、評価者の見方と結果を説明します。話し合いは、評価者と部下の認識が一致する点から始め、次に一致しない点に進むと、対立になりにくくなります。
- 次の期に向けて指導・助言する:強みと改善点を事実に即して示し、どこを伸ばすとよいかを伝えます。改善点は、非難ではなく「こうすればよくなる」という提案の形にします。
- 前向きな言葉で終える:次の期にも期待していることを伝えて面談を終えます。
国家公務員の人事評価では、評価結果の開示を希望しない職員の意思も確認します。ただし、一般の職員の全体評語が「やや不十分」「不十分」の場合は、人材育成の観点から、開示を希望しない職員にも開示することとされています(人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》)。低い評価ほど、本人が知らないままでは改善のしようがないためです。
伝え方の例
伝え方は、評価の印象ではなく、場面と行動と結果の事実で組み立てます。
- 強みを伝える:「〇月の大型案件で、作業の前に確認表を作って関係部署と共有してくれたので、手戻りが一度もありませんでした。この段取りの仕方は、来期は後輩にも教えてほしいと考えています。」
- 改善点を伝える:「成果物を渡した後の手戻りが期中に3回ありました。3回とも、渡す前の確認の手順が一部抜けていたことが原因です。来期は、渡す前に確認表で点検する手順を入れてはどうでしょうか。」
- 評価が本人の予想より低いとき:「目標の数字には届きましたが、目標の水準が職位に求める水準より低めに設定されていたため、この段階にしています。来期は、期首の面談で水準を一緒に確かめましょう。」
いずれも、評価者の感想ではなく、部下が「その場面なら覚えている」と思い出せる事実から話し始めているのが共通点です。事実から話すと、部下は評価の理由を自分の行動と結びつけて受け取れます。
部下が評価に納得しないときの進め方
事実に基づいて説明しても、部下が評価に納得しないことはあります。そのときに避けたいのは、その場で評価者が説得を続けることと、反対に評価をその場で変えることの両方です。説得を続けると面談は言い争いになり、その場で評価を変えると、強く主張した人ほど評価が上がるという前例を作ってしまいます。
まず、部下がどの項目のどの点に納得していないのかを具体的に聞き取ります。多くの場合、食い違いは「評価者が知らない事実があった」か「同じ事実を違う見方で受け取っている」かのどちらかです。評価者が知らない事実が出てきたときは、その場で結論を出さず、関係者に確かめてから改めて話す時間を取ります。国家公務員の人事評価でも、評価者の評価は調整者や実施権者による確認を経て確定する仕組みになっており、評価者一人の判断で完結させない形がとられています(人事評価の基準、方法等に関する政令 第9条)。
同じ事実を違う見方で受け取っている場合は、段階の定義の文章を一緒に読み、その事実がどの段階の説明に当てはまるかを確かめます。それでも見方が一致しないときは、次の期に向けて何ができていれば上の段階になるのかを具体的に合意し、面談の記録に残します。評価に対する意見を申し出られる窓口を制度として用意しておくと、面談の場で決着をつける必要がなくなり、評価者も部下も落ち着いて話せます。
オンラインで面談する場合も、進め方の基本は同じです。国家公務員の人事評価に関する政令は、映像と音声で互いの状態を認識しながら行う通話も面談に含めています(同政令 第11条)。画面越しでは表情の変化が伝わりにくいため、要所で部下の受け止め方を言葉で確かめるようにします。
評価面談の落とし穴
- 評価の印象で話す:「頑張っていた」「物足りなかった」は評価者の感想であり、部下は反論も改善もできません。印象で評価してしまう偏りについては人事評価のエラーの種類と対策で整理しています。
- 1on1 と評価面談の区別をなくす:日々の1on1 がすべて評価の話になると、部下は困りごとを相談しにくくなります。役割の分け方は1on1を評価の場にしないための切り分け方を参照してください。
- 面談の内容を記録しない:合意した改善点や来期の期待を記録しておかないと、次の面談で前回の話を確かめられません。面談ガイドラインも、期首面談では前期の期末面談で伝えたメッセージを確かめることを勧めています。
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出典
- 人事評価の基準、方法等に関する政令(平成21年政令第31号)第9条〜第12条(e-Gov 法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/421CO0000000031
- 内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」(2022年6月版)と参考資料集 資料8「面談ガイドライン」(令和4年6月、内閣人事局)https://www.jinji.go.jp/content/900006264.pdf




