人事評価の評価項目は、「成果(期首に決めた目標や役割をどれだけ果たしたか)」と「行動(仕事の中でどのような行動をとったか)」の二つに分け、1つの項目で1つのことだけを見るように書くと、評価者の解釈がずれにくくなります。項目の数は等級ごとに5〜8個程度に絞り、段階は点数ではなく「期待する行動がどのくらいとられていたか」で定義します。性格や人柄は項目にせず、仕事の中で見えた行動と結果だけを評価の対象にします。この記事では、営業・事務・技術・管理職の評価項目の例と評価シートの見本を示したうえで、項目が機能しなくなる原因と直し方を説明します。

評価項目が機能しなくなる構造

評価項目が形だけになる会社では、項目の書き方に共通の問題があります。

一つ目は、項目が抽象的な言葉だけで書かれていることです。「積極性」「協調性」「責任感」のような項目は、評価者が自分の経験で意味を補うため、同じ行動を見ても評価者によって段階が変わります。内閣人事局・人事院の「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」(2022年6月版)は、「几帳面だから仕事は正確だ」「まじめだからしっかりやっている」のように性格に引きずられた評価が公正性や納得性を損なうと指摘し、職務遂行における行動と結果に基づいて評価するよう求めています。

二つ目は、1つの項目に複数のことを詰め込んでいることです。「顧客対応が丁寧で、期限を守り、後輩の面倒も見る」という項目では、丁寧だが期限を守らない人をどの段階にすればよいか決められません。評価者は迷った末に中間の段階を付けるため、評価の差が出なくなります。

三つ目は、見えやすい行動だけが項目になっていることです。チャットの返信の速さや会議での発言の多さは目に付きやすい一方で、成果物の質や手戻りの少なさは意識して記録しないと評価の場に出てきません。項目に成果物を見る観点を入れておかないと、見えやすい行動をとる人の評価が高くなる傾向が生まれます。

評価項目の3つの区分と選び方

評価項目は、次の区分で整理すると選びやすくなります。

区分何を見るか項目の例向いている使い方
成果(業績)期首に決めた目標・役割の達成度売上目標、納期遵守率、改善件数賞与、半期ごとの評価
行動(能力の発揮)職務の中でとった行動報告・連絡、段取り、後輩の指導昇給、昇格、育成
知識・技能仕事に必要な知識と技能の習熟資格、社内の技能チェック等級の要件、配置

国家公務員の人事評価は、成果にあたる「業績評価」と、行動にあたる「能力評価」の2本立てで、能力評価は評価項目ごとに定めた行動に照らして、実際にとった行動を評価すると定めています(人事評価の基準、方法等に関する政令 第4条)。中小企業でも、この2本を基本にし、知識・技能は等級の要件として別に管理すると、評価シートが重くなりません。

項目の候補を集めるときは、厚生労働省の「職業能力評価基準」が使えます。仕事に必要な知識と技術・技能に加え、成果につながる職務行動例を、業種別、職種・職務別に整理したもので、56業種で作られています。自社の業種の基準から、自社の仕事に当てはまる行動例を選び、言葉を自社の業務に合わせて書き換えると、ゼロから考えるより早く項目がそろいます。

職種別の評価項目の例

以下は行動(能力の発揮)の項目の例です。成果の項目は、各人の期首の目標から立てます。

営業職

  • 商談の前に、顧客の課題と提案の狙いを記録に残している
  • 失注した案件の理由を記録し、次の提案に反映している
  • 見積・契約の手続きを社内の決まりどおりに進めている

事務職

  • 依頼を受けたときに、期限と完成の形を依頼者に確認している
  • 処理の誤りを見つけたら、原因と再発防止策を記録して共有している
  • 繰り返し発生する作業の手順を文書にし、他の人が代われる状態にしている

技術職

  • 作業に入る前に、仕様のあいまいな点を洗い出して確認している
  • 自分の成果物を、決められた検査の手順で確認してから渡している
  • 身につけた技術や不具合の知見を、チームが参照できる形で残している

管理職

  • チームの目標を、メンバーごとの役割と期限に分けて伝えている
  • メンバーと定期的に話す場を設け、仕事の進み具合と困りごとを把握している
  • 業務の取捨選択(やること・やめること)を判断し、理由を説明している

定型業務が多い職種では、処理量だけでなく、正確さや所要時間、ミスの発生率、関係者とのやり取りの工夫も観点にできます。前出のガイドも、定型業務を時間当たりの業務量、正確性、ミスの発生率、所要時間などの観点で評価すると説明しています。

成果の項目と配点(ウェイト)の決め方

成果の項目は、全員に共通の項目として置くのではなく、期首に一人ひとりの目標から立てます。目標は「何を、いつまでに、どの水準まで、どのように」の形で書いておくと、期末に達成したかどうかを判断できます。数字で表せない仕事でも、「〇月までに手順書を作り、担当者2名が単独で処理できる状態にする」のように、完成の状態を具体的に書けば成果の項目になります。

成果と行動の配点は、等級によって変えるのが一般的な考え方です。担当者の段階では、決められた仕事を確実にこなす行動を育てることが中心になるため、行動の比重を高めにします。管理職に近づくほど、チームとして結果を出す責任が大きくなるため、成果の比重を高めます。ただし、成果の比重を極端に高くすると、目標を低めに立てる動機が生まれます。目標の難しさを期首の面談で確認し、易しすぎる目標を立てた場合は書き直してもらう手順を、配点とあわせて決めておきます。

項目ごとの配点に差を付けるかどうかも決めておきます。すべて同じ重みにすると計算は簡単ですが、仕事の中で比重の大きい項目と小さい項目が同じ扱いになります。国家公務員の業績評価では、目標ごとに「重要度」と「困難度」を設定し、業務に占める比重が特に高い目標に印を付ける仕組みをとっています(前出ガイド)。すべての目標に高い重要度を付けるものではない、とも明記されています。中小企業でも、重要な項目に印を付ける程度の簡単な差の付け方から始めると、評価者の負担を増やさずに済みます。

評価シートの見本と段階の書き方

評価シートは、1行に「項目」「期待する行動」「評価の段階」「根拠となった事実」を並べる形にします。根拠の欄を設けると、評価者は期間中の記録を見返してから段階を付けるようになります。

項目期待する行動段階根拠となった事実(評価者が記入)
報告・連絡問題が起きたときに、その日のうちに上司へ報告している優良〇月の納期遅れを当日に報告し、代替案も添えていた
段取り作業の前に手順と必要な確認先を洗い出している良好大型案件の前に確認表を作成していた
成果物の確認渡す前に決められた手順で確認しているやや不十分手戻りが期中に3回あった

段階は、行動の頻度で定義するとぶれにくくなります。国家公務員の能力評価では、課長級以下の個別の評語を6段階とし、次のように定義しています(前出ガイド 参考資料「評語等の解説」)。

段階定義
卓越して優秀望ましい行動を上回る行動が常に確実にとられ、または大きく上回る行動がとられていた
非常に優秀望ましい行動を上回る行動が頻繁にとられていた
優良望ましい行動がとられており、かつ、しばしば望ましい行動を上回る行動も見られた
良好望ましい行動が基本的にとられていた
やや不十分望ましい行動がとられないことがやや多かった
不十分望ましい行動が全くとられていなかった

中小企業では6段階は細かすぎることもあります。その場合でも「基本的にとられていた」を真ん中の段階に置き、そこから上下を頻度の言葉で書き分けると、評価者どうしの目線が合いやすくなります。

項目を作るときの落とし穴

  • 理念や行動指針をそのまま項目にする:「顧客第一」のような言葉は項目にせず、その言葉が指す行動に分解してから項目にします。分解の手順は評価基準の曖昧さを解消する行動要件の言語化プロセスで扱っています。
  • 全等級で同じ項目を使う:新人と管理職に同じ「報告・連絡」の項目を当てると、管理職の評価が高止まりします。等級が上がるほど、期待する行動の範囲を広げて書きます。
  • 目立たない貢献を拾う項目がない:手順書づくりや他部署の支援のように、成果の数字に表れない貢献は、項目にしておかないと評価の場に出てきません。この問題は見えない貢献が評価されず人が辞める構造で詳しく説明しています。
  • 期末にまとめて思い出して付ける:記憶は時間とともに薄れ、評価期日に近い出来事ばかりが評価に残ります。期中に事実を書き留める欄や記録の習慣を、項目とあわせて用意します。

役職定年後の社員のように期待する役割が変わる人には、項目そのものを別に用意する必要があります。考え方は役職定年の評価制度の設計を参照してください。人事・評価のほかの記事は人事・評価にまとめています。

出典