BI ツール(Business Intelligence ツール)は、社内のいくつもの仕組みや表計算のデータを集め、表やグラフで見られるようにして、判断に使うための道具です。売上や受注、費用、在庫などの数字を、決まった形の画面(ダッシュボード)にまとめ、元のデータが更新されれば画面の数字も更新されます。毎月の集計を担当者が手作業でまとめる手間を減らし、経営者や管理職が同じ数字を早く見られるようになることが主な効果です。一方で、導入しても使われなくなる例も多く、その原因の多くは、何を判断するための数字かが決まっていないことと、元になるデータがそろっていないことにあります。
BI ツールでできること
| できること | 中身 |
|---|---|
| データを集める | 会計、販売、顧客の管理などの仕組みや、表計算のファイルからデータを取り込む |
| 集計して見せる | 期間、部署、商品、取引先などの切り口で集計し、表やグラフにする |
| 画面を共有する | 決まった形の画面を、権限に応じて社内の人が見られるようにする |
| 掘り下げる | 全体の数字から、部署別、商品別、月別へと細かく見ていく |
| 知らせる | 数字が決めた基準を超えたときに知らせる(道具による) |
表計算との違い
表計算のソフトでも、集計やグラフは作れます。違いが出るのは、データの元が多いときと、見る人が多いときです。
表計算で毎月の数字をまとめる場合、担当者が各仕組みからデータを書き出し、1 つのファイルに貼り合わせ、式で集計し、グラフを作り直す、という作業を毎月繰り返します。貼り合わせの手順を誤ると数字が狂い、ファイルの写しが何種類もできると、どれが正しいのか分からなくなります。
BI ツールでは、データの取り込みと集計の手順を一度決めておけば、元のデータの更新に合わせて画面が更新されます。見る人は同じ画面を見るため、会議で「どの数字が正しいのか」を確かめる時間が減ります。
導入の前に決めること
何を判断するための数字か
最初に、誰が、何を判断するために、どの数字を見るのかを決めます。「売上を見られるようにする」では足りません。「営業の責任者が、毎週の会議で、受注の見込みが目標に届くかを判断し、届かない部署に手を打つ」のように、判断の場面まで決めます。
判断の場面が決まっていないまま画面を作ると、見られる数字は増えても、誰も見ない画面が増えていきます。DX の取り組みの成果の指標の決め方は、DXのKPIの決め方で扱っています。
元になるデータがそろっているか
BI ツールは、元のデータを集めて見せる道具です。元のデータで、取引先や商品の名前が部署ごとに違っていたり、同じ取引先が何度も登録されていたりすると、集計の結果も正しくなりません。導入の前に、元のデータの名前や分け方がそろっているかを確かめます。そろっていない場合は、先に整えます。整え方は、マスタデータ管理とはで説明しています。
誰が画面を作り、直すか
画面を作る人と、数字の定義や画面を直す人を決めます。外部の会社に最初の画面を作ってもらう場合も、その後の手直しを社内で行えるかを確かめておきます。直せる人がいないと、業務が変わったときに画面が古いまま残り、使われなくなります。
誰が何を見られるか
給与や個人の成績など、見られる人を限るべき数字があります。部署や役職ごとに、見られる範囲を決めておきます。
使われなくなる原因
- 判断の場面が無い:画面はあっても、会議や判断の場でその画面を使う決まりが無い
- 数字が信用されない:元のデータの誤りで、画面の数字が現場の感覚と合わず、担当者が表計算で作り直す
- 画面が多すぎる:作れるだけ画面を作り、どれを見ればよいか分からない
- 直せない:業務や組織が変わっても画面が直されず、実態と合わなくなる
中でも「数字が信用されない」は、一度起きると取り戻すのが難しい問題です。画面の数字と、各部署が持っている数字が合わないと、会議のたびに「どちらが正しいのか」の確認が始まり、結局は表計算の集計に戻ります。
定着させるための進め方
定着させるには、画面を作ることより、使う場面を先に作ります。まず、毎月の経営の会議や、毎週の営業の会議など、すでにある会議を 1 つ選び、その会議で見る数字を BI ツールの画面に移します。会議の資料を表計算で作るのをやめ、画面を見ながら話す形にします。
最初の画面は、数字を 5〜6 個程度に絞ります。使いながら、足りない数字や、見方の要望を集めて足していきます。予算と実績の比べ方など、会議で見る数字の形は、予実管理のやり方が参考になります。
道具を選ぶときに確かめること
判断の場面と見る数字が決まったら、道具を選びます。確かめるのは、次のような点です。
1 つめは、今使っている仕組みからデータを取り込めるかです。会計や販売の仕組みとつなぐ機能が用意されているか、つなげない場合は書き出したファイルを取り込めるかを確かめます。取り込みに毎回手作業が要る形だと、表計算で集計していたときと手間が変わらないことがあります。
2 つめは、社内の人が画面を直せるかです。画面の作り方が難しく、外部の会社に頼まないと直せない道具では、業務の変化に画面が追い付きません。試しに使える期間があれば、社内で画面を直す担当になる人が実際に触って確かめます。
3 つめは、見る人の数と費用の関係です。道具によって、使う人の数や、画面を見るだけの人の扱いで費用が変わります。最初は見る人を絞って始め、使われるようになってから広げる形にすると、使われないまま費用だけがかかることを避けられます。
4 つめは、権限の細かさです。部署ごとに見られる範囲を分けられるか、給与などの数字を見られる人を限れるかを確かめます。
実行時の落とし穴
道具選びから始める
道具の機能を比べることから始めると、何を見るのかが決まらないまま、機能の多い道具を選びがちです。判断の場面と見る数字を決めてから、道具を選びます。
手作業の集計を残す
BI ツールを入れた後も、表計算の集計を並行して続けると、どちらの数字が正しいのかという確認が続きます。移行の期間を決め、期間が終わったら表計算の集計をやめます。
担当者 1 人に任せる
画面を作れる人が 1 人しかいないと、その人が異動や退職をしたときに、画面を直せなくなります。少なくとも 2 人が直せるようにします。



