予実管理は、月ごとの予算と実績を並べて差を出し、差が出た理由を確かめて、次の手を決める仕組みです。進め方は、①予算を月ごと・項目ごとに分ける、②実績を同じ項目で集める、③差を出し、決めた基準を超えた項目の理由を確かめる、④次の月以降の手と見込みを決める、の 4 つです。予実管理の表を作っても管理にならない原因の多くは、差を出したところで止まり、理由を確かめて手を打つところまで進まないことにあります。表は、差に気づくための道具で、目的は、ずれに早く気づいて手を打つことです。

予実管理の表に入れる項目

予実管理の表は、行に勘定の項目、列に月を並べ、月ごとに「予算」「実績」「差異」「達成率」を置く形が基本です。

項目予算実績差異(実績 − 予算)達成率(実績 ÷ 予算)理由・対応
売上高1,000920−8092%大口の案件の受注が翌月にずれた
売上原価600560−4093%売上の減少に伴う
売上総利益400360−4090%
人件費1501500100%
広告費5065+15130%展示会の出展費が前倒し
営業利益12070−5058%

(単位:万円。数字は説明のための例です)

表には、その月の数字に加えて、期の初めからの累計の予算と実績も並べます。月ごとの数字だけでは、一時的なずれか、続いているずれかが見分けにくいためです。累計で見ると、期末までに取り戻せる範囲かどうかが分かります。

費用の項目では、差異の符号の意味が売上と逆になる点に注意します。売上は実績が予算を上回れば良い知らせですが、費用は実績が予算を上回れば使いすぎです。表の中で色を付ける場合は、「会社にとって良い方向か悪い方向か」で色を分けると、読み違いを防げます。

エクセルでの作り方

エクセルで作る場合は、次の順で作ると、毎月の手間を減らせます。

  1. 予算のシートを作る:項目と月の表に、期の初めに決めた予算を入れる。期の途中で予算を見直した場合も、元の予算は消さずに残し、見直した予算を別の列に置く
  2. 実績のシートを作る:会計の仕組みから、月ごとの試算表を同じ項目の並びで書き出して貼る。項目の並びを予算と同じにしておくと、写す手間が減る
  3. 比べるシートを作る:予算と実績のシートを参照して、差異と達成率を計算する。手で数字を打たず、参照の式だけにする
  4. 理由の欄を設ける:基準を超えた項目の横に、理由と対応を書く欄を置く

大切なのは、予算と実績を同じ項目の並び・同じ単位でそろえることです。予算は部門ごと、実績は会社全体、のように単位がそろっていないと、比べることができません。予算を立てるときから、実績を集める単位を考えておきます。

差異の見方と原因の分け方

差異が出たら、原因を次のように分けて確かめます。

原因の種類例対応の考え方
時期のずれ受注や支払いが翌月にずれた累計や期末の見込みで影響を確かめる。手は打たなくてよいことが多い
数量のずれ販売の件数が予定より少ない件数が減った理由(引き合いの数、受注の率など)までさかのぼる
単価のずれ値引きが増えた、仕入の値段が上がった値付けや仕入先との条件を見直す
予算の立て方のずれそもそも予算が実態に合っていなかった次の予算の立て方を見直す。期の途中の見込みも直す
一時的な出来事設備の故障、大口の取引先の倒産一時的か続くのかを判断し、続くなら見込みを直す

売上の差異は、「件数 × 単価」に分けると原因が見えやすくなります。売上が予算を下回ったときに、件数が足りないのか、単価が下がっているのかで、打つ手が変わるためです。件数が足りないなら営業の活動の量を、単価が下がっているなら値引きの判断を確かめます。

会議での使い方

予実管理の表は、月に 1 回の会議で使います。会議の進め方は次のとおりです。

  • 事前に配る:会議の前に表と理由の欄を埋めて配り、出席者は読んでから参加する
  • 基準を超えた項目だけを話す:すべての項目を読み上げない。差異が基準を超えた項目と、累計で期末の目標に届かないおそれのある項目に絞る
  • 見込みを更新する:その月の差異を受けて、期末までの見込みを直す。予算と見込みの差が、これから手を打つべき大きさになる
  • 手と担当と期限を決める:理由を確かめたら、誰が、いつまでに、何をするかを決め、次の月の会議で結果を確かめる

期の途中で見込みが大きく変わった場合は、予算そのものを見直すかどうかも判断します。中期の計画と照らし合わせて、資源の配分を変える判断の仕方は、中期経営計画の作り方で扱っています。設備や仕組みへの投資が計画どおりに回収できているかを確かめる方法は、投資回収計画の見直しを仕組み化し資金効率を最大化するで説明しています。

予実管理を早く回すための工夫

予実管理が遅れる一番の原因は、実績の数字が固まるのが遅いことです。月次の決算が翌月の半ばまで固まらないと、差異に気づくのが 1 か月以上遅れます。月次の決算を早める工夫として、請求書や経費の締め日を早める、概算で計上して後で直す項目を決める、といった方法があります。

売上や受注のように、動きを早く知りたい数字は、月次の決算を待たずに、営業の記録などから週ごとに実績を確かめます。週ごとの数字は概算でかまいません。大きなずれに早く気づけることが大切です。

実行時の落とし穴

差を出して終わる

差異を計算して表を配るだけで、理由を確かめず、手を打たない運用では、予実管理は数字の報告にとどまります。基準を超えた項目には、必ず理由と対応を書く決まりにします。

予算を達成することが目的になる

予算を守ることが目的になると、期末に使い切るための支出や、翌期に回すべき売上の前倒しが起きます。予実管理の目的は、ずれに早く気づいて手を打つことで、数字を予算に合わせることではありません。

表の版がいくつもできる

担当者ごとに表を写して手を加えると、数字の合わない版がいくつもできます。正本の表を 1 つに決め、置き場所と更新の担当者を決めておきます。