業務フロー図は、仕事が誰によって、どの順番で、どんな判断を経て進むかを、記号と矢印で表した図です。書き方の基本は、①図にする業務の範囲(始まりと終わり)を決める、②担当者や部署ごとに列を分ける、③作業を順番に並べ、判断の分かれ道を入れる、④関係者に見せて直す、の 4 つです。記号は、始まりと終わり、作業、判断、書類やデータ、の 4 種類ほどを使えば、多くの業務を表せます。業務フロー図を描くと、担当者の頭の中にしかなかった仕事の流れが見えるようになり、引き継ぎや仕組みの入れ替え、無駄な作業の見直しに使えます。
業務フロー図を描く目的
業務フロー図は、描くこと自体が目的ではありません。目的によって、描く範囲や細かさが変わります。
| 目的 | 描き方の目安 |
|---|---|
| 業務の全体像を関係者で共有する | 部署をまたぐ流れを、1 枚に収まる粗さで描く |
| 引き継ぎに使う | 作業と判断を 1 つずつ分け、例外のときの流れも入れる |
| 仕組みの入れ替えや自動化の準備 | 使っている仕組みや書類、データの受け渡しを描き込む |
| 無駄な作業の見直し | 今の流れを描き、待ち時間や、同じ入力の繰り返しに印を付ける |
描き始める前に、何のために描くのかを決めておくと、描きすぎや描き足りないことを防げます。
よく使う記号
業務フロー図で使う記号は、次の 4 種類ほどで十分です。記号の形にはいくつかの流儀がありますが、チームの中でそろっていれば、どれを使っても構いません。
| 記号 | 形 | 意味 |
|---|---|---|
| 端子 | 角の丸い長方形 | 業務の始まりと終わり |
| 処理 | 長方形 | 作業(「見積を作る」「請求書を送る」など) |
| 判断 | ひし形 | 分かれ道(「金額は 50 万円以上か」など)。出口に「はい」「いいえ」を書く |
| 書類・データ | 下が波形の長方形、または円柱 | 作業で使う、または作られる書類やデータ |
情報処理の分野では、流れ図の記号は日本産業規格の JIS X 0121 で定められています。また、業務の流れを表す記法として BPMN(Business Process Model and Notation)があり、国際規格の ISO/IEC 19510 になっています。社内で使う業務フロー図なら、これらの規格の記号をすべて覚える必要はなく、上の 4 種類を決まった意味で使えば十分です。
担当者ごとに列を分ける
業務フロー図は、担当者や部署ごとに列(または行)を分けて描くと、誰がどの作業をするのかがひと目で分かります。この描き方は、水泳のプールのコースにたとえて、スイムレーンと呼ばれます。
列は、左から順に、業務が最初に始まる担当者から並べます。例えば、顧客から注文を受けて出荷するまでの業務なら、「顧客」「営業」「受注の事務」「倉庫」「経理」のように並べます。顧客や取引先のような社外の相手も、列として入れておくと、社外とのやり取りが見えます。
列をまたぐ矢印は、仕事の受け渡しを表します。受け渡しのところは、待ち時間や伝え漏れが起きやすい場所です。
業務フロー図を描く手順
手順 1:範囲を決める
図にする業務の始まりと終わりを決めます。「顧客から注文を受けてから、代金を受け取るまで」のように、何が起きたら始まり、何が済んだら終わりかを言葉にします。範囲が広すぎると図が大きくなりすぎるため、1 枚の図は 1 つのまとまった業務に絞ります。
手順 2:担当者に聞き取る
実際にその業務を行っている担当者に、仕事の流れを聞き取ります。聞き取りでは、次の点を順に確かめます。
- 何がきっかけで仕事が始まるか(メールが来る、書類が届く、決まった日が来る、など)
- 次に何をするか、それは誰がするか
- 使う仕組みや書類は何か
- 途中で判断が要るところはどこか、何を基準に判断しているか
- 例外のとき(書類に不備がある、金額が大きい、急ぎ、など)はどうしているか
担当者が複数いる業務では、人によってやり方が違うことがよくあります。違いが見つかったら、その場で決めずに、図に両方を書き残しておき、後で関係者と話し合います。
手順 3:作業を並べて線でつなぐ
聞き取った作業を、付箋や図の道具の上に 1 つずつ書き出し、担当者の列に置いていきます。上から下(または左から右)へ、時間の順に並べ、矢印でつなぎます。判断のところはひし形にし、「はい」と「いいえ」の両方の行き先を描きます。
最初は、例外を入れずに、一番よくある流れだけを描きます。よくある流れが描けたら、例外の流れを足していきます。最初から例外を全部入れようとすると、図が複雑になり、全体の流れが見えなくなります。
手順 4:関係者に見せて直す
描いた図を、担当者と、前後の工程の担当者に見せます。「実際はこうではない」「この間にもう 1 つ作業がある」といった指摘をもらい、図を直します。前後の工程の担当者に見せると、受け渡しのところで、お互いが相手の作業を誤解していたことが分かることもあります。
分かりやすく描くこつ
- 作業の名前は「〇〇を△△する」と書く:「見積」ではなく「見積を作る」「見積を送る」のように、動作が分かる言葉で書く
- 線を交差させない:線が交差すると流れを追いにくくなる。列の並び順や作業の置き場所を変えて、交差を減らす
- 流れの向きをそろえる:上から下、または左から右に流れるようにし、戻る矢印は差し戻しなどの例外に限る
- 1 枚に詰め込まない:大きな業務は、全体の流れを描いた図と、部分ごとの詳しい図に分ける
- 使う仕組みや書類を書き添える:作業の横に、使う仕組みの名前や書類の名前を書くと、引き継ぎや仕組みの入れ替えのときに役に立つ
描いた図を業務の見直しに使う
今の業務の流れを描くと、見直すべきところが見えてきます。図を見ながら、次の点を確かめます。
| 確かめる点 | 見直しの例 |
|---|---|
| 同じ内容を何度も入力していないか | 仕組みの間でデータを受け渡し、入力を 1 回にする |
| 列をまたぐ受け渡しが多すぎないか | 作業をまとめ、受け渡しの回数を減らす |
| 待ち時間が長いところはどこか | 承認の段階を減らす、承認の基準を決めて担当者に任せる |
| 1 人しかできない作業はどこか | 手順を書き出し、2 人目ができるようにする |
| 何のために行っているか分からない作業は無いか | 目的を確かめ、不要ならやめる |
1 人しかできない作業が見つかったら、属人化の解消の対象になります。進め方は、業務の属人化とはで説明しています。図にした手順を文章の手順書にまとめるときは、業務マニュアルの作り方が参考になります。
仕組みの導入や自動化を考えるときは、今の流れをそのまま仕組みに置き換えるのではなく、図を見て無駄な作業を減らしてから置き換えます。流れを見直さずに仕組みだけを入れると、無駄な作業まで仕組みに組み込まれてしまいます。進め方は、DX が失敗する原因と業務の見直しの手順で扱っています。
実行時の落とし穴
あるべき姿を先に描く
最初から「こうあるべき」という流れを描くと、今の業務との差が分からなくなります。まず今の流れをありのままに描き、それから見直した流れを別に描きます。
描いて終わりにする
業務の流れは、仕組みや担当者が変わると変わります。図を描いたら、置き場所と、直す担当を決め、業務が変わったときに図も直します。
担当者に聞かずに描く
上司や別の部署の人が、想像で図を描くと、実際の流れと違う図になります。必ず担当者に聞き取り、描いた図を担当者に確かめてもらいます。




