仕事の指示は、①目的、②仕上がりの形、③期限、④使える資源、⑤判断してよい範囲、⑥途中で報告してほしい時点、の 6 つを入れて伝えると、手戻りや指示待ちが減ります。指示がうまく伝わらない原因の多くは、指示を出す側が頭の中で分かっていることを、言葉にしないまま伝えてしまうことにあります。「この資料をまとめておいて」という指示では、何のための資料か、どのくらいの分量か、いつまでに必要かが分からず、受けた側は推測で進めるしかありません。推測が外れれば手戻りになり、推測できなければ手が止まります。

指示に入れる 6 つの項目

項目伝えること例
目的何のための仕事か、誰が使うか「来週の部長会議で、新しい取引先を増やす案を説明するため」
仕上がりの形何ができれば終わりか。分量・形式「A4 で 2 枚。候補の 3 社を比べた表を入れる」
期限いつまでに。途中の確認の日も「木曜の 17 時までに。水曜の昼に一度下書きを見せてほしい」
使える資源使ってよい時間・予算・資料・相談先「営業部の〇〇さんに取引の実績を聞いてよい。作業は 1 日くらいを見込んでいる」
判断してよい範囲自分で決めてよいことと、相談してほしいこと「比べる項目は任せる。候補の会社を 3 社から変えたいときは相談してほしい」
途中で報告してほしい時点どんなときに、いつ伝えてほしいか「期限に間に合わないと分かったら、その日のうちに教えてほしい」

6 つのうち、特に抜けやすいのが「目的」と「判断してよい範囲」です。目的が分かっていれば、受けた側は、指示に書かれていない場面でも、目的に沿って判断できます。判断してよい範囲が分かっていれば、小さなことで確認を待って手が止まることも、大きなことを勝手に決めてしまうことも防げます。

指示の例文

口頭で伝える場合

「来週の部長会議で、新しい取引先を増やす案を説明することになりました。その資料を作ってほしいです。A4 で 2 枚くらいで、候補の 3 社を、取引の条件と実績で比べた表を入れてください。木曜の 17 時までにお願いします。水曜の昼に一度、下書きの段階で見せてもらえますか。実績の数字は営業部の〇〇さんに聞いてかまいません。比べる項目は任せますが、候補の会社を変えたいときは相談してください。途中で間に合わなそうだと分かったら、その日のうちに教えてください。何か分からない点はありますか」

最後に「分からない点はありますか」と聞くだけでなく、次の節のように、受けた側に要点を言い直してもらうと、行き違いに気づけます。

チャットで伝える場合

チャットでは、項目ごとに行を分けて書くと、読み落としが減ります。

〇〇さん、資料の作成をお願いします。 ・目的:来週の部長会議で、新しい取引先を増やす案を説明するため ・仕上がり:A4 で 2 枚。候補 3 社を条件と実績で比べた表を入れる ・期限:木曜 17 時。水曜の昼に下書きを見せてください ・相談先:実績の数字は営業部の〇〇さんへ ・任せること:比べる項目。候補の会社を変えるときは相談を ・間に合わないと分かったら、その日のうちに連絡をください

チャットで指示を出す場合も、込み入った仕事や初めて任せる仕事は、短く口頭で説明して質問を受ける時間を取ります。

受けた側に言い直してもらう

指示を出した後に、受けた側に「何を、いつまでに、どこまでやるか」を自分の言葉で言い直してもらうと、行き違いにその場で気づけます。「分かりました」という返事だけでは、本当に同じ理解になっているかは分かりません。

言い直してもらうのは、相手を試すためではなく、自分の指示が伝わったかを確かめるためです。そう伝えておくと、受けた側も気軽に言い直せます。言い直しの中で、指示を出した側が伝え忘れていたことに気づくことも少なくありません。

経験に応じて伝え方を変える

同じ仕事でも、受けた側の経験によって、伝える内容の細かさを変えます。

経験伝え方
初めてその仕事をする6 つの項目に加え、やり方の例や過去の見本を渡す。途中の確認の回数を増やす
何度か経験がある6 つの項目を伝え、やり方は任せる。途中の確認は 1 回程度
十分に経験がある目的と期限、判断してよい範囲を中心に伝え、仕上がりの形も相談して決める

経験のある人に細かすぎる指示を出すと、任されていないと感じさせます。反対に、経験の浅い人に目的と期限だけを伝えると、どこから手を付けてよいか分からず、手が止まります。部下が自分から動かず指示を待つ状態を減らす進め方は、部下が動かない指示待ちを解消するジョブアサインの技術で扱っています。

指示がうまく伝わらない原因

急いで伝える

忙しいときほど、指示は短く、要点だけになりがちです。しかし、短い指示の結果、手戻りが起きれば、かえって時間がかかります。急ぐときこそ、6 つの項目をチャットに書いて渡すだけでも、手戻りが減ります。

途中で指示を変えて理由を伝えない

仕事の途中で指示を変えることは避けられませんが、理由を伝えずに変えると、受けた側は振り回されていると感じます。変えるときは、何が変わったのか、なぜ変えたのか、それまでの作業のうち何が生かせるのかを伝えます。

報告の時点を決めない

途中で報告してほしい時点を決めていないと、受けた側は、困っていても期限まで一人で抱え込みがちです。「下書きの段階で一度見せる」「間に合わないと分かったら伝える」のように、報告の時点を指示の中で決めておきます。進み具合の伝え方は、進捗報告メールの書き方と例文で説明しています。

実行時の落とし穴

指示の中身を記録に残さない

口頭だけで指示を出すと、後になって「言った・言わない」になりやすくなります。要点は、チャットや作業の一覧に残しておきます。

仕上がりを見て初めて違いに気づく

期限の日に仕上がりを見て、思っていたものと違うと気づくのでは遅すぎます。下書きの段階で一度見る時点を、最初の指示の中で決めておきます。

違いがあったときに受けた側を責める

仕上がりが思っていたものと違ったときは、まず自分の指示に抜けが無かったかを振り返ります。直してほしい点を伝える場合は、行動と影響の事実で伝えます。伝え方は、フィードバックの仕方で扱っています。