KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)は、事業や組織が最終的に達成したい目標を数字で表したものです。KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)は、その KGI に向かう途中で、進み具合を測るための指標です。例えば「今期の売上 10 億円」が KGI なら、「月の新しい商談の数」や「受注の割合」が KPI になります。KGI は結果、KPI はその結果を生む途中の過程を表すもので、KGI だけでは途中で打つ手が分からず、KPI だけでは最終的な目標とのつながりが見えなくなります。2 つをつなぐには、KGI を要素に分けていく KPI ツリーを作り、その中から自分たちで動かせて KGI への影響が大きい指標を KPI に選びます。
KGI・KSF・KPI・OKR の関係
目標の管理でよく使われる言葉を整理します。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | 最終的に達成したい目標 | 今期の売上 10 億円 |
| KSF(Key Success Factor、重要成功要因) | KGI を達成するために、特に重要になる要因 | 既存の顧客からの追加の受注を増やすこと |
| KPI | KGI に向かう途中の進み具合を測る指標 | 既存の顧客への追加の提案の件数、追加の受注の割合 |
| OKR(Objectives and Key Results) | 目指す方向(O)と、それが達成できたかを測る成果(KR)を組にして掲げる目標の管理の方法 | O:既存の顧客に選ばれ続ける会社になる/KR:既存の顧客からの売上を 20%増やす |
KSF は、KGI と KPI の間をつなぐ考え方です。KGI を達成する方法はいくつもありますが、その中で自社が特に力を入れるべき点が KSF です。KSF を決めてから KPI を選ぶと、数ある指標の中から、自社の戦略に沿ったものを選べます。
OKR は、KPI とは別の仕組みとして使われることが多く、挑戦的な目標を掲げて組織の方向をそろえることに重点があります。目標の管理の方法としての MBO と OKR の違いは、MBO と OKR の違いで扱っています。
KPI ツリーで KGI を分解する手順
KPI ツリーは、KGI を、それを構成する要素に分けていき、木の枝のように並べた図です。分解していくことで、KGI を動かすために、どの要素を動かせばよいかが見えるようになります。
手順 1:KGI を 1 つ決める
まず、ツリーの頂点に置く KGI を 1 つ決めます。売上、営業利益、顧客の数など、期間と数字がはっきりしたものにします。複数の KGI を同じツリーに入れると、分解の筋道が混ざって分かりにくくなります。
手順 2:足し算か掛け算で分ける
KGI を、足し算か掛け算で成り立つ要素に分けます。
- 売上 = 新しい顧客からの売上 + 既存の顧客からの売上
- 新しい顧客からの売上 = 新しい受注の件数 × 平均の単価
- 新しい受注の件数 = 商談の数 × 受注の割合
- 商談の数 = 見込み客の数 × 商談に進む割合
足し算か掛け算で分けることが大切です。「顧客の満足」や「社員の意欲」のように、KGI との関係を式で表せない要素を途中に入れると、どれだけ動かせば KGI がどれだけ動くのかが分からなくなります。そうした要素は、ツリーの外に、KPI を動かすための取り組みとして置きます。
手順 3:自分たちで動かせるところまで分ける
分解は、担当する部署や人が、日々の行動で直接動かせる指標にたどり着くまで続けます。「売上」は直接動かせませんが、「見込み客への連絡の件数」や「提案の件数」は、担当者が自分で増やせます。営業の目標を行動の目標まで分ける具体的な計算は、営業の目標設定で説明しています。
手順 4:数字を入れて、影響の大きいところを探す
ツリーの各要素に、今の数字を入れます。そのうえで、各要素を少し動かしたときに KGI がどれだけ動くかを比べます。例えば、商談の数を 10%増やす場合と、受注の割合を 10%上げる場合とで、売上への影響は同じでも、必要な手間やかかる時間は違います。今の数字から見て、改善の余地が大きく、手を打ちやすい要素を探します。
手順 5:KPI を選び、担当を決める
ツリーの中から、KGI への影響が大きく、担当者が動かせる要素を KPI に選びます。KPI ごとに、担当する部署や人、目標の数字、確かめる頻度を決めます。
よい KPI の条件
KPI を選ぶときは、次の条件を満たしているかを確かめます。
| 条件 | 確かめること |
|---|---|
| KGI とつながっている | その KPI を達成すれば、KGI が動くと説明できるか |
| 担当者が動かせる | 担当者の行動で数字を変えられるか |
| すぐに測れる | 週や月の単位で、手間をかけずに数字が出せるか |
| 数が絞られている | 1 つの部署で 3 つ前後に収まっているか |
| 数字だけを追うと困ることが無い | 数字を上げるために、望まない行動が生まれないか |
最後の条件は見落とされがちです。例えば、問い合わせへの回答の時間を KPI にすると、回答を急ぐあまり、中身の薄い回答が増えることがあります。こうしたおそれがある場合は、回答の時間と、顧客の満足のような質の指標を組み合わせます。
部署ごとの KPI をつなげる
会社全体の KGI を部署ごとに分けていくと、部署ごとの KPI ができます。このとき、部署の KPI 同士が矛盾しないかを確かめます。例えば、営業が受注の件数を KPI にし、製造が在庫の削減を KPI にしていると、営業は短い納期の受注を増やし、製造は在庫を減らすことで対応できなくなる、ということが起きます。
矛盾を防ぐには、KPI ツリーを部署ごとではなく、会社全体で 1 本作り、その中で部署ごとの担当を決めることです。部署ごとに別々にツリーを作ると、それぞれの部署にとって都合の良い指標が選ばれ、全体として KGI に向かわなくなります。部署ごとの目標が全社の成果につながらない問題については、MBO を達成しても業績が上がらない理由で扱っています。
会社の理念や長い期間の目標を、日々の KPI にまでつなげる考え方は、パーパスを KPI に分解する方法でも説明しています。
KPI が形だけになる構造
指標を増やしすぎる
測れる数字は何でも KPI にしたくなりますが、数が増えるほど、どれを優先すればよいかが分からなくなります。KPI は絞り、それ以外の数字は、必要に応じて確かめる参考の数字として扱います。
見直さない
KPI と KGI のつながりは、仮説にすぎません。KPI を達成しても KGI が動かないなら、仮説が外れています。四半期ごとに、KPI の達成と KGI の動きを並べて確かめ、つながりが弱い KPI は入れ替えます。
担当者を責める道具にする
KPI の未達を担当者の責任として責めるだけの運用では、担当者は達成しやすい数字を目標にしたがり、数字を正直に報告しなくなります。KPI は、どこで手を打つべきかを見つけるための道具として扱い、未達のときは、原因と次の打ち手を一緒に考えます。




