WBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成)は、プロジェクトで作るものを大きな単位から順に分けていき、最後に「担当者1人が、期限と完了の条件を持って進められる作業」の単位まで落とした一覧です。作り方の要点は、作業の名前から書き始めるのではなく、成果物から分けていくこと、そして最下層の作業ごとに担当者・期限・完了の条件と、担当者が自分で決めてよい範囲をあわせて決めることです。デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(2026年)も、設計・開発の実施計画書の附属文書として、作業項目・作業内容・スケジュールを詳細に階層化し、担当者等を記載したWBSを作るよう定めています。この記事では、WBSの作り方の手順と見本、分ける細かさの目安を示したうえで、作ったWBSが使われなくなる理由と直し方を説明します。

WBSで決まること・決まらないこと

WBSは計画の土台ですが、それだけで計画が完成するわけではありません。似た資料との役割の違いを整理しておきます。

資料答える問い主に見る人
WBS何を作り、そのために何をするか。誰が受け持つか取りまとめ役・作業の担当者
工程表(ガントチャート)いつからいつまでにするか関係者全員
マスタースケジュール大きな節目はいつか経営層・オーナー
役割分担表誰が作業し、誰が決めるか関係者全員

WBSで作業が漏れていると、後の工程表や予算もすべて漏れたまま作られます。反対に、WBSが細かすぎると、工程表が数百行になって誰も更新しなくなります。

WBSの作り方(6つの手順)

  1. 範囲と成果物を確かめる:プロジェクトの目的と「やること・やらないこと」を確かめ、終わったときに何ができているか(成果物)を書き出します。範囲の決め方はプロジェクト立ち上げの手順で扱っています
  2. 1段目を決める:成果物ごと、または工程ごと(準備・設計・構築・試験・切り替えなど)に大きく分けます。1段目の数は多くても7〜8個程度にすると、全体を一目で見渡せます
  3. 2段目、3段目と分ける:それぞれを、さらに小さな成果物や作業に分けます。「その下の作業をすべて終えたら、上の段が完了する」という関係になっているかを確かめながら進めます
  4. 最下層の作業に担当・期限・完了の条件を付ける:最下層の作業ごとに、担当者を1人、期限、「何ができたら完了か」を書きます
  5. 漏れと重なりを点検する:関係者に見せて、足りない作業と、2か所に書かれている作業がないかを確かめます。部署の境目での受け渡し、試験、資料作り、説明会、切り替えの後の問い合わせ対応は漏れやすい作業です
  6. 番号を振って工程表につなぐ:1.1、1.2、1.2.1のように階層が分かる番号を振り、各作業に日数と前後関係を付けて工程表にします。工程表の作り方はガントチャートをエクセルで作る手順で説明しています

WBSの見本

社内の勤怠管理の仕組みを入れ替える案件を例にした見本です。

番号作業担当期限完了の条件
1準備
1.1今の勤務の決まりを集める総務担当10/17部門ごとの勤務の型が一覧になり、各部門長が確認済み
1.2就業規則との食い違いを確かめる総務担当10/24食い違いの一覧を総務部長が確認済み
2設定
2.1勤務の型を設定する情報システム担当11/141.1の型がすべて登録され、画面で確かめた
2.2給与計算への受け渡しを設定する情報システム担当11/21受け渡し用のファイルが給与の担当者に読み込めた
3試験と切り替え
3.11部門で試行する総務担当12/121か月分の打刻と集計の差を確かめた
3.2社員向けの説明会を開く総務担当12/19全部門で開催し、質問の一覧を作った
3.3本番に切り替える総務部長1/5全社員が新しい仕組みで打刻できた

1段目の行には担当や期限を書かず、下の作業がすべて終わったら完了、とします。

どこまで細かく分けるかの目安

最下層の作業を分ける細かさは、次のような基準で決めます。

目安理由
1〜2週間ほどで終わる大きさ大きすぎると、終わる直前まで遅れが見えない
担当者が1人に決まる2人の名前が並ぶと、互いに相手が進めていると考える
完了の条件が書ける「〇〇の検討」のように終わりが書けない作業は、成果物で言い直す
取りまとめ役が毎日追わなくてよい細かすぎると、報告の手間が作業そのものより重くなる

先の工程で、まだ中身が決まっていない作業は、無理に細かく分けず大きな単位のまま置きます。その工程が近づいた時点で分け直します。デジタル庁のガイドラインも、計画書は構想の段階から工程の完了時などに段階的に改定するものとしています。

分けた作業と一緒に「任せる範囲」を決める

WBSを作っても、取りまとめ役が細かい進み具合を毎日聞いて回る状態が続くことがあります。原因の1つは、作業は分けたものの、担当者が自分で決めてよいことと、上に確かめるべきことが決まっていないためです。最下層の作業ごとに、次の3つを決めておきます。

  • 担当者が決めてよいこと:作業の手順、期限の範囲内での進める順番、使う道具など
  • 上に確かめること:期限を過ぎそうなとき、費用がかかるとき、ほかの作業や部署に影響するとき
  • 報告する時点:作業が終わったとき、確かめる条件に当たったとき、週1回の定例

こう決めておくと、取りまとめ役は平時の進み具合を細かく追わず、確かめる条件に当たったときだけ対応すればよくなります。任せる範囲の決め方はマイクロマネジメントと放置を繰り返す組織に必要な権限定義、作業ごとに誰が決めるかの書き方は役割分担表の作り方で扱っています。

作ったWBSを点検するチェックリスト

  • 最下層の作業に、担当者が1人ずつ書かれている
  • 最下層の作業に、完了の条件が書かれている
  • 下の段の作業をすべて終えると、上の段が完了する関係になっている
  • 受け渡し・試験・資料作り・説明会の作業が入っている
  • 1つの作業が長すぎず、遅れに早く気づける大きさになっている
  • 担当者が自分で決めてよい範囲と、確かめる条件が決まっている

WBSが使われなくなる理由と直し方

作業の名前から書き始める

思いついた作業を上から書いていくと、一覧は長くなりますが、何が抜けているかが分かりません。成果物から分けていくと、「この成果物を作るのに必要な作業がそろっているか」という目で点検できます。

取りまとめ役が1人で作る

取りまとめ役が1人で作ったWBSは、現場の作業の漏れが多く、担当者も自分の作業として受け止めにくくなります。1段目と2段目は取りまとめ役が作り、その下は各担当者に分けてもらってから全体で点検する、という分担にします。

作った後に直さない

案件が進むと、作業が増えたり、不要になったりします。WBSを直さないまま工程表だけを直していると、どの作業が何のためにあるのかが分からなくなります。作業を足したり外したりするときは、日程や費用への影響を見積もって判断する変更の手続きに乗せます。手続きの進め方は仕様変更の進め方で説明しています。

実行時の落とし穴

  • WBSを進捗表として使う:WBSは作業の構成を示す一覧で、日々の予定と実績を追うには向きません。日々の状況は、タスク管理表や工程表で追います。表の作り方はタスク管理表をエクセルで作る方法で扱っています
  • 担当者の欄に部署名を書く:「総務部」と書くと、部署の中で誰が持つのかが決まりません。人の名前か、役職で1人に決まる書き方にします
  • 細かさを全体でそろえようとする:すべての工程を同じ細かさに分ける必要はありません。近い工程は細かく、先の工程は粗く、と分けて構いません

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出典