中期経営計画は、3〜5 年後に会社がどうなっていたいかと、そこに向かうための数値目標、重点の取り組み、人やお金の配分をまとめた計画です。作り方は、①今の状態を振り返る、②外の環境の変化を整理する、③目指す姿を決める、④数値目標を決める、⑤重点の取り組みを決める、⑥人とお金の配分を決める、⑦年度の計画に落とし、見直しの仕組みを決める、の 7 つの手順で進めます。中期経営計画が形だけになる原因の多くは、作ることが目的になり、毎年の予算や日々の仕事と結び付いていないことにあります。計画は作った後の見直しまでを一つの仕組みとして設計することが大切です。

中期経営計画に盛り込む項目

項目中身
目指す姿3〜5 年後にどんな会社になっていたいか。どの顧客に、何を提供しているか
今の状態の振り返り前の計画の結果、事業ごとの売上と利益、強みと弱み
外の環境市場、顧客、競合、法令や制度の変化
数値目標売上、利益、利益率など、最終年度と各年度の目標
重点の取り組み目標に向けて力を入れること。3〜5 つに絞る
人とお金の配分どの事業・取り組みに、どれだけの人と投資を振り向けるか
年度ごとの計画各年度に何をどこまで進めるか
見直しの仕組み誰が、いつ、何を見て見直すか

作る手順

手順 1:今の状態を振り返る

まず、今の会社の状態を数字で確かめます。事業ごと、商品ごと、顧客ごとの売上と利益を並べ、どこで稼いでいて、どこが伸びていて、どこが落ちているかを見ます。前にも計画を作っていたなら、その計画に対して何ができて、何ができなかったのか、その理由は何かを振り返ります。

手順 2:外の環境の変化を整理する

市場の大きさの変化、顧客の求めるものの変化、競合の動き、法令や制度の変化など、会社の外で起きていることを整理します。整理した内容と自社の強み・弱みを組み合わせて、取るべき方向を考える方法として、SWOT 分析がよく使われます。進め方は、SWOT 分析とは?クロス分析で戦略に落とし込む手順で説明しています。

手順 3:目指す姿を決める

振り返りと外の環境を踏まえて、3〜5 年後に会社がどうなっていたいかを決めます。「どの顧客に」「何を提供して」「どんな立ち位置にいるか」を言葉にします。「業界一の会社になる」のようなあいまいな言葉ではなく、社員が読んで、自分の仕事とのつながりが分かる言葉にすることが大切です。

手順 4:数値目標を決める

目指す姿を、数字に置き換えます。最終年度の売上・利益・利益率などの目標を決め、そこから各年度の目標に割り戻します。

数値目標は、今の延長で自然に届く数字と、目指す姿から逆算した数字の両方を出し、その差をどう埋めるかを考えます。差を埋める手立てが、次の手順の重点の取り組みになります。最終の目標を、部署や個人が日々追う指標に分ける方法は、KGI と KPI の違いで扱っています。

手順 5:重点の取り組みを決める

数値目標に届くために力を入れることを、3〜5 つに絞って決めます。例えば、「新しい顧客層への販売を始める」「主力の商品の利益率を上げる」「人の採用と育成を強める」のような形です。

取り組みを増やしすぎると、人とお金が分散し、どれも中途半端になります。絞るときは、何をやらないかも決めます。やめる事業や、縮める取り組みを決めることは、力を入れる取り組みを決めることと同じくらい大切です。考え方は、経営戦略とは?策定プロセスと使い分けるフレームワークでも扱っています。

手順 6:人とお金の配分を決める

重点の取り組みごとに、どれだけの人と投資を振り向けるかを決めます。今の配分のまま取り組みだけを足すと、実際には誰も手を付けられないまま年度が過ぎます。力を入れる取り組みに人を移すなら、どの仕事を減らすかまで決めます。

手順 7:年度の計画に落とし、見直しの仕組みを決める

中期経営計画を、各年度の計画と予算に落とします。1 年目に何をどこまで進めるか、誰が責任を持つかを決め、年度の予算に反映します。あわせて、計画をいつ、誰が、何を見て見直すかを決めておきます。

数値計画の立て方

数値計画は、売上から利益までをつなげて作ります。

項目考え方
売上事業・商品ごとに、顧客の数 × 顧客あたりの売上 などに分けて見積もる
売上原価・粗利事業ごとの原価率の見込みから出す
販売費・一般管理費人件費、広告費、家賃などの項目ごとに、取り組みに必要な分を足して見積もる
営業利益粗利から販売費・一般管理費を引く
投資設備、仕組み、採用などへの投資の額と時期

売上だけを大きく置いて、費用を今のままにした計画は、実現できません。重点の取り組みに必要な人件費や投資を費用に入れたうえで、利益が目標に届くかを確かめます。

社員への伝え方

中期経営計画は、社員に伝わって初めて動き出します。伝えるときは、目指す姿と重点の取り組みを、1 枚にまとめて示します。数値の表を並べるだけでは、社員は自分の仕事とのつながりが分かりません。

部署ごとに、「この計画の中で、自分たちの部署は何をするのか」を、部署の長から説明します。部署の目標や個人の目標が、計画の重点の取り組みとつながっていると、日々の仕事が計画に向かって動きます。

毎年の見直し

中期経営計画は、作った後の見直しが欠かせません。年度の終わりに、次のことを確かめます。

  • 数値目標に対して、実績はどうだったか。ずれの理由は何か
  • 重点の取り組みは、予定どおりに進んだか
  • 外の環境に、計画の前提を変えるような変化は起きていないか
  • 人とお金の配分を変える必要はないか

見直しの場では、結果の良し悪しを問うことより、次の年度に向けて何を変えるかを決めることを重視します。うまくいっていない取り組みに人とお金を張り付けたままにせず、成果の出ている取り組みに移す判断をします。年度の途中でも、月ごとの数字を見て、大きなずれに早めに気づけるようにしておきます。

前提が大きく変わった場合は、残りの年数を待たずに計画を作り直します。毎年、残りの期間の計画を見直しながら、1 年ずつ先に延ばしていく「ローリング」という進め方をとる会社もあります。

計画が形だけになる原因

作ることが目的になる

厚い冊子を作ることに時間をかけ、作り終えると誰も開かなくなる、ということがよくあります。計画は数枚にまとめ、毎月や毎四半期の会議で開く資料にします。

数値目標だけが上から降りてくる

数値目標だけが決められ、どうやって届くかの取り組みや人とお金の配分が決まっていないと、現場は目標を達成する手立てを持てません。取り組みと配分をあわせて決めます。

見直しの仕組みが無い

見直しの時期と担当が決まっていないと、計画と実態のずれが放っておかれます。作る段階で、見直しの場を年間の予定に入れておきます。