組織図の作り方は、先に部署の箱を描くのではなく、会社の業務と「誰が誰に報告し、誰が決めるか」を書き出すところから始めます。手順は、組織の型を選ぶ、部署と責任者を決める、指揮命令の線を引く、兼務と委員会を書き分ける、職務分掌表と突き合わせる、の順です。組織図は一度作ると更新が止まりやすく、実際の報告経路とずれた図が残ると、承認の遅れや責任の押し付け合いの原因になります。作ったあとに誰がいつ直すかまで決めて、初めて使える図になります。

組織図とは何を示す図か

組織図は、会社を構成する部署や役職の関係を図にしたもので、主に次の三つを示します。

  • 会社がどんな部署で構成されているか
  • 各部署の責任者は誰か
  • 誰が誰に報告し、誰から指示を受けるか(指揮命令の線)

組織図が示すのは「報告の線」であって、仕事の中身ではありません。どの業務をどの部署が受け持つかは職務分掌表、誰がいくらまで決裁できるかは職務権限表で定めます。組織図だけで役割まで表そうとすると図が複雑になり、かえって読まれなくなります。職務分掌表の作り方は職務分掌とは|職務分掌表と規程の作り方で解説しています。

組織図の種類と選び方

組織の型によって、組織図の形も変わります。自社がどの型に近いかを先に決めると、描き方が定まります。

型特徴向いている会社描くときの注意
機能別(階層型)営業・製造・管理など機能ごとに部署を分ける事業が一つで、社員数が数十人規模まで部署間の調整を誰が担うかを書き添える
事業部制製品や地域ごとに事業部を置き、各事業部に営業・製造などを持たせる複数の事業を持つ会社本社機能と事業部の境目をはっきりさせる
マトリックス機能と事業の二つの軸で報告の線を持つ案件ごとに部署を横断する会社二人の上司のどちらが最終判断するかを決める
フラット(文鎮型)中間の役職を置かず、少ない階層で運営する少人数・立ち上げ期の会社決める人が一人に集中していないか確かめる

フラットな組織は意思決定が速い一方、権限と責任の所在があいまいになりやすい面があります。その整え方はフラット組織で権限と責任を一致させる手順でも扱っています。

書く前に決める項目

組織図を描き始める前に、次の項目を一覧にしておくと、描き直しが減ります。

項目決めること決まっていないと起きること
部署名正式な名称と略称社内文書で呼び方がばらつく
責任者部署ごとに一人誰に報告するかが人によって変わる
指揮命令の線各責任者の上司同じ部下に二人が指示を出す
兼務誰がどの部署を兼ねるか兼務者の報告先が分からない
スタッフ部門の位置経理・人事・情報システムなどを社長直属にするか管理部門の承認が現場の上司に押し切られる
委員会・プロジェクト常設の組織か、期間限定か恒常的な部署と混同される
外部委託社外に任せている機能誰が委託先を管理しているかが抜ける
基準日いつ時点の図か古い図が最新として使われる

組織図の見本

社員数十人の機能別組織を想定した見本です。実線は指揮命令の線、点線は兼務や調整の関係として書き分けます。

取締役会
 └ 代表取締役
    ├ 内部監査担当(代表取締役直属)
    ├ 管理部(部長)
    │   ├ 経理課
    │   └ 総務人事課
    ├ 営業部(部長)
    │   ├ 第一営業課
    │   └ 第二営業課
    └ 製造部(部長)
        ├ 製造課
        └ 品質管理課 ……(点線)営業部長と品質の問い合わせを調整
基準日:2026年10月1日 改定担当:管理部長

この見本では、内部監査担当を代表取締役の直属に置き、監査される側の部署の下に入れていません。金融庁の内部統制の実施基準(2023年改訂)は、業務部門・管理部門・内部監査部門の役割を分ける「3線モデル」を例として挙げています。規模の小さな会社で専任を置けない場合も、監査を担う人の報告先を、監査される部署の責任者以外にしておくと、この考え方に近づけます。

組織図の作り方の手順

  1. 業務と決める人を書き出す:部署ごとに主な業務と、その業務で最終的に決める人を書き出します。
  2. 組織の型を選ぶ:上の表から、自社に近い型を一つ選びます。迷ったら機能別から始めます。
  3. 部署と責任者を置く:部署ごとに責任者を一人決め、責任者のいない箱を作らないようにします。
  4. 指揮命令の線を引く:各責任者の上司を一人に決め、実線でつなぎます。二本の実線が入る部署があれば、どちらが最終判断をするかを決めます。
  5. 兼務・委員会・外部委託を書き分ける:点線や別の枠を使い、恒常的な報告の線と区別します。
  6. 職務分掌表と突き合わせる:職務分掌表の承認者が、組織図の上で承認する相手の上位にいるかを確かめます。
  7. 基準日と改定担当を書いて配る:図の余白に基準日と改定担当を書き、社内の決まった場所に一つだけ置きます。

図の作成には、表計算ソフトやプレゼンテーションソフトの図形機能で足ります。大切なのは道具ではなく、更新の担当と置き場所を一つに決めることです。

組織図が実態とずれる理由と直し方

作ったときは正しかった組織図も、次の理由で実態から離れていきます。

  • 兼務が図に出ていない:一人が複数の部署を兼ねていると、図の上では別々の人がいるように見えます。兼務者は各部署の箱に名前を並べ、主にどちらへ報告するかを書きます。
  • 報告の線と承認の線が違う:日々の相談は現場の上司にしているのに、決裁は別の部署の役員が行っている状態です。図の線と職務権限表の承認者をそろえるか、例外として図に注記します。
  • 部署をまたぐ仕事の担当が決まっていない:組織図の箱と箱の間に落ちる仕事は、図だけでは担当が決まりません。業務ごとの役割分担は役割分担表(RACI)の作り方で補います。

実行時の落とし穴

最も多いのは、組織変更のたびに作り直さず、古い図が複数の場所に残ることです。組織変更の手続きの中に「組織図と職務分掌表の改定」を含め、改定したら古い版を置き場から外します。

もう一つは、社長に線が集中した図をそのまま正式な組織図にしてしまうことです。すべての部署が社長に直接報告する図は、少人数のうちは回っても、人が増えると社長の判断待ちが増えます。図にして初めて見える偏りなので、描いた図を眺めて、誰に判断を任せるかを考える材料にしてください。

出典

  • 金融庁 企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(2023年) https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230407/20230407.html