プロセス評価とは、仕事の成果だけでなく、成果に至るまでの取り組み方を評価する方法です。成果の数字だけで評価すると、運や担当先の違いで評価が大きく変わり、時間のかかる改善や周りへの支援が評価されにくくなります。プロセス評価はその弱点を補うものですが、評価の対象を「頑張っていた」「遅くまで残っていた」といった印象にすると、かえって評価者の主観で決まる評価になります。国家公務員の人事評価ガイドは、プロセスを見るときは、熱心に取り組んだことや時間をかけたことではなく、具体的な貢献や創意工夫、効率的な業務遂行を見るよう求めています。この記事では、成果評価との違い、評価の観点の例、基準の作り方を説明します。
プロセス評価と成果評価の違い
| 観点 | 成果評価 | プロセス評価 |
|---|---|---|
| 何を見るか | 期首に決めた目標の達成度、業績への貢献 | 成果に向けた取り組み方、周りへの貢献、仕事の工夫 |
| 根拠 | 数値や完成物 | 期間中の具体的な行動と、その結果 |
| 長所 | 判断が明確で、本人も結果を確かめやすい | 成果に表れにくい貢献や、再現できる仕事の進め方を拾える |
| 短所 | 運や外部の事情に左右される。短期の成果に偏りやすい | 基準があいまいだと印象評価になる |
国家公務員の人事評価では、業績評価について、目標の達成状況だけでなく、組織への貢献、業務遂行に当たっての創意工夫、効率的な業務遂行、本人に起因しない事情による影響などのプロセスも勘案して評価するとしています。そのうえで、目標を達成していなければ直ちに低い評価になるわけではなく、特に難しい目標の場合は、達成しなかったことだけをもって低い評価としないよう留意するとしています(内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」2022年6月版)。成果とプロセスを別々に評価するのではなく、成果の評価の中でプロセスも勘案する形です。
プロセス評価が印象評価に戻る原因
プロセス評価を取り入れた会社で、数年後に「結局は上司に気に入られた人の評価が高い」と言われるようになることがあります。原因の多くは、評価の対象の決め方にあります。
一つ目は、「努力」や「熱意」を評価の対象にしていることです。努力や熱意は外から見えないため、評価者は長時間働いている様子や、発言の多さ、上司への報告の頻度といった見えやすいもので判断します。その結果、同じ成果でも、効率よく短い時間で仕事を終えた人より、長く残っていた人のほうが評価されるという逆転が起きます。前出のガイドが、熱心に取り組んだことや時間をかけたことではなく、具体的な貢献や工夫を見るよう求めているのは、この逆転を防ぐためです。
二つ目は、プロセスの観点が決まっていないことです。「プロセスも評価する」とだけ決めて観点を示さないと、評価者はそれぞれが大事だと思う点を見ます。ある評価者は報告の丁寧さを、別の評価者は新しい挑戦を重視するため、同じ働き方でも上司によって評価が変わります。
三つ目は、期中の事実を記録していないことです。プロセスは期間全体にわたるものなので、期末に思い出して評価しようとすると、直近の出来事や印象の強い出来事ばかりが残ります。評価者が陥りやすい偏りは人事評価のエラーの種類と対策で整理しています。
プロセス評価の観点の例
前出のガイドは、業績評価で勘案するプロセスとして、チームや組織が成果を挙げるうえでの具体的な貢献(知見や経験の活用、周囲への支援など)、業務遂行に当たっての創意工夫、効率的な業務遂行などを挙げています。企業で使う場合の観点の例は次のとおりです。
| 観点 | 見る内容 | 評価の根拠になる事実の例 |
|---|---|---|
| 周りへの貢献 | 自分の知見を共有し、チームの成果に貢献したか | 手順書を作って共有した、他のメンバーの案件を支援した |
| 仕事の工夫 | やり方を見直して、質や速さを上げたか | 確認表を作って手戻りを減らした、集計を自動化した |
| 効率的な進め方 | 必要な時間で仕事を終えているか | 同じ品質の仕事を、以前より短い時間で終えた |
| 困難への対応 | 予定外の事態に、どう対応したか | 取引先の方針変更に対し、代わりの案を示して合意した |
| 目標以外の取り組み | 突発的な仕事や、自主的な取り組み | 急な欠員を補った、自主的に業務の改善案を出した |
最後の観点について、前出の資料にある面談ガイドラインは、期首に設定した目標にとらわれすぎず、突発的な業務や自主的な取り組みも積極的に評価するよう求めています。目標の欄に書かれていない仕事を拾う観点を用意しておかないと、予定外の仕事を引き受けた人ほど、目標の達成度が下がって評価が不利になります。
基準の作り方
- 観点を3〜4個に絞る:上の表のような観点から、自社の仕事で特に大事なものを選びます。観点が多いと、一つの出来事を複数の観点で評価することになり、評価が重複します。
- 観点ごとに期待する行動を書く:「周りへの貢献」であれば、「自分の担当で得た知見を、チームが参照できる形で残している」のように、行動の文で書きます。書き方の考え方はコンピテンシー評価とはで説明しています。
- 段階を事実の頻度と影響で書き分ける:「期待する行動が基本的にとられていた」を標準の段階に置き、それを上回る行動の頻度や、チームへの影響の大きさで上の段階を書き分けます。
- 成果評価との関係を決める:プロセスを成果の評価の中で勘案するのか、別の項目として点数を付けるのかを決めます。別の項目にする場合は、成果とプロセスの配分を等級ごとに決めます。
- 期中の記録の仕組みを用意する:1on1 や週次の打ち合わせで、観点に関係する出来事を短く記録します。記録は、日付、出来事、関係する観点の3つで足ります。
挑戦の評価との関係
プロセス評価は、挑戦を促す評価の仕組みとも関係が深い方法です。成果だけで評価すると、失敗する可能性のある挑戦は避けたほうが評価の上で得になります。挑戦の過程での工夫や、失敗から得た知見の共有をプロセスとして評価すると、挑戦した人が不利になりません。国家公務員の人事評価では、困難度の高い目標(チャレンジ目標)を達成した場合に困難度を勘案して評価を一段上げる例や、未達成であることのみをもって低い評価としない考え方が示されています。
ただし、挑戦したこと自体を評価の対象にすると、今度は「挑戦したと言える仕事」を作ることが目的になります。評価するのは、挑戦の中でとった具体的な行動と、その結果から得た知見を周りに渡したかどうかです。挑戦を促す評価の設計は、挑戦を促す人事評価システムの構築で詳しく扱っています。
プロセス評価を導入するときの落とし穴
- 労働時間の長さを評価に入れる:長く働いたことを評価すると、効率よく働く人が不利になり、長時間労働を促すことになります。
- 成果とプロセスを同じ出来事で二重に評価する:大きな案件の成功を、成果とプロセスの両方で高く評価すると、一つの出来事の影響が大きくなりすぎます。成果は数字で、プロセスはそこに至る行動で、と見る対象を分けます。
- 評価の観点を社員に示さない:何がプロセスとして評価されるのかが分からないと、社員は上司に見える行動を増やすようになります。観点と期待する行動は、期首に社員に示します。
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出典
- 内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」(2022年6月版)と参考資料集 資料8「面談ガイドライン」(令和4年6月、内閣人事局)https://www.jinji.go.jp/content/900006264.pdf
- 人事評価の基準、方法等に関する政令(平成21年政令第31号)第4条(e-Gov 法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/421CO0000000031




