従業員満足度は、給与、休み、職場の環境、人間関係など、働く条件に社員がどれだけ満足しているかを表します。エンゲージメントは、社員が仕事や組織に対してどれだけ前向きに関わろうとしているかを表します。満足度は「今の条件に不満が無いか」を、エンゲージメントは「自分から進んで仕事に力を注いでいるか」を見るものと考えると分かりやすくなります。2 つは関係がありますが、同じではありません。条件に満足していても仕事に意欲を持てない人もいれば、条件に不満があっても仕事には熱意を持っている人もいます。そのため、調査では両方を分けて測り、結果に応じて打つ手を変えます。

2 つの違い

項目従業員満足度エンゲージメント
表すもの働く条件への満足仕事や組織への前向きな関わり
主な対象給与・休み・職場の環境・福利厚生・人間関係仕事のやりがい・成長の実感・組織の方向への共感
低いときに起きやすいこと条件への不満からの退職言われたことしかしない、改善の提案が出ない
高めるための主な手段条件や環境の改善仕事の任せ方、目標の共有、成長の機会

満足度は、不満の原因を取り除けば上がることが多い指標です。一方、エンゲージメントは、不満を取り除くだけでは上がりません。仕事の意味が分かる、自分で工夫する余地がある、成長を実感できる、といった前向きな要素が要ります。

エンゲージメントと似た言葉に、ワーク・エンゲイジメントがあります。これは、仕事から活力を得ていきいきしている状態を、「活力」「熱意」「没頭」の 3 つがそろった状態として捉える考え方です。厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」でも、働きがいを考える材料として、ワーク・エンゲイジメントが取り上げられています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」 第Ⅱ部第 3 章)。会社で使われる「エンゲージメント」は、この仕事への関わりに加えて、組織への愛着や、組織の目指す方向への共感を含めて使われることが多くあります。

それぞれの測り方

どちらも、社員への調査で測るのが一般的です。設問の例を示します。

分類設問の例(「とてもそう思う」〜「まったくそう思わない」で答える)
満足度:条件今の給与は、自分の仕事の内容に見合っている
満足度:環境必要なときに休みを取りやすい
満足度:人間関係職場の人と気持ちよく協力できている
エンゲージメント:仕事今の仕事に、やりがいを感じる
エンゲージメント:成長この半年で、仕事を通じて成長したと感じる
エンゲージメント:組織会社の目指す方向に共感している
エンゲージメント:推奨この会社を、働く場所として知人に勧めたい

設問は、自社の状況に合わせて選びます。市販の調査の仕組みを使うと、設問が整っており、他社との比較もしやすくなりますが、自社にとって大切な点を聞く設問を足せるかどうかを確かめておきます。

回答は、原則として個人が特定されない形で集めます。上司に回答が知られると思えば、社員は本当のことを書きません。部署ごとに集計する場合も、人数が少ない部署は、個人が推測されないように、ほかの部署とまとめて集計します。

結果の読み分け方

2 つを分けて測ると、組織の状態を読み分けられます。

状態満足度エンゲージメント読み方と打ち手の方向
条件にも仕事にも前向き高い高い今の状態を保つ。高い理由を確かめて、ほかの部署に広げる
居心地は良いが意欲は低い高い低い仕事の任せ方や目標の共有を見直す。条件の改善だけでは変わらない
意欲はあるが条件に不満低い高い意欲のある社員が条件を理由に辞めるおそれがある。条件の不満の中身を確かめ、早めに対応する
どちらも低い低い低いまず大きな不満(長時間の労働、評価への不信など)から取り除く

特に見落としやすいのは、「意欲はあるが条件に不満」の状態です。仕事に熱意を持っている社員は、ほかの会社からも求められやすく、条件への不満が続くと、条件の良い会社に移っていきます。退職の兆しとあわせて見る方法は、離職率の計算方法と原因分析の手順で扱っています。

「居心地は良いが意欲は低い」状態も注意が要ります。職場の雰囲気が良く、不満も少ないのに、改善の提案が出ない、新しい仕事を引き受ける人がいない、という状態です。心理的な安心感と、成果への責任のつり合いが取れていないときに起きやすく、その整え方は心理的安全性が「ぬるま湯」に化ける構造と説明責任の設計で説明しています。

施策の選び方

満足度を上げる施策と、エンゲージメントを上げる施策は、中身が違います。

満足度を上げる施策は、給与や評価の仕組みの見直し、休みの取りやすさ、働く場所や時間の柔軟さ、職場の設備など、条件と環境の改善が中心です。調査で不満の大きかった項目から順に手を付けます。

エンゲージメントを上げる施策は、仕事そのものと、上司との関わり方の見直しが中心です。仕事の目的や、自分の仕事が会社の成果にどうつながるかを説明する、仕事の進め方に本人の工夫の余地を残す、定期的な面談で成長の振り返りをする、挑戦の機会を用意する、といったことです。これらは、制度を作るだけでなく、管理職の日々の関わり方で決まる部分が大きいため、管理職への支援とあわせて進めます。

社内のイベントや交流の場を増やすことは、職場の人間関係の満足には効くことがありますが、それだけで仕事への意欲が高まるとは限りません。施策を選ぶときは、調査の結果でどちらが低かったのかに立ち返り、低いほうに効く施策を選びます。

調査が形だけになる構造

点数を上げることが目的になる

調査の点数を部署の目標にすると、管理職は点数を上げることに意識を向け、部下に高い点を付けるよう働きかけることさえ起きます。点数は組織の状態を知る手がかりであり、上げること自体を目的にしないようにします。点数が上がっても業績が伸びない理由については、エンゲージメントスコアが上がっても業績が伸びない理由で扱っています。

結果を返さない

調査に答えても、結果が知らされず、何も変わらなければ、社員は次の調査に真剣に答えなくなります。調査の後は、結果の要点と、それを受けて何をするかを、社員に伝えます。すべての不満に応えられなくても、何を優先し、何を後回しにするかを理由とともに伝えることで、調査への信頼が保たれます。

全社の平均だけを見る

全社の平均点だけを見ると、部署ごとの違いが隠れます。平均が変わらなくても、ある部署で大きく下がり、別の部署で上がっていることがあります。部署ごと、職種ごと、勤続の年数ごとに分けて見ると、どこに手を打つべきかが具体的になります。