プレスリリースのネタは、新商品や業務提携のような大きな話題だけではありません。記者が探しているのは「読者にとって新しく、意味のある事実」で、中小企業の中にも、社内では当たり前になっている取り組みや数字の変化の中に題材があります。見つけるときは、①新しく始めたこと、②数字で表せる変化、③人と組織の取り組み、④地域や社会との関わり、の 4 つの方向から社内を見直します。見つけた題材は、「なぜ今か」「誰に関係があるか」を添えて、記事になる形に整えます。

ネタが無いと感じる構造

大きな発表だけをニュースと考えている

新商品の発売や大きな受注だけをニュースと考えると、年に数回しか題材がありません。記者の関心は、発表の大きさより、読者にとっての新しさと意味にあります。

社内の当たり前に気づかない

長く続けている取り組みや独自のやり方は、社内では当たり前になり、ニュースだと気づかれません。社外の人から見ると珍しいことでも、社内の人には見えにくいのが普通です。

情報が広報の担当に届かない

現場で新しい取り組みが始まっても、広報の担当者に伝わらなければ題材になりません。題材が無いのではなく、題材が集まる仕組みが無いことが原因のこともあります。

ネタを見つける 10 の着眼点

方向着眼点題材の例
新しく始めたこと1. 新しい商品・サービス・料金の形小さな改良でも、顧客の困りごとを解決するもの
2. 新しい取り組みや制度働き方の制度、品質の管理の方法、顧客への対応の変更
3. 他社や団体との協力地元の学校や団体との共同の取り組み
数字の変化4. 節目の数字創業からの年数、累計の利用者数、導入の件数
5. 取り組みの成果の数字作業時間の短縮、廃棄の削減など、変化が数字で表せるもの
6. 自社で集めた調査の結果顧客への聞き取りやアンケートから分かった傾向
人と組織7. 特色のある社員や職人珍しい技能、資格、経歴を持つ人の取り組み
8. 採用や育成の工夫未経験者の育て方、若手の定着の工夫
地域と社会9. 地域との関わり地域の行事への協力、地元の素材の活用
10. 社会の動きへの対応制度の変更、季節の話題、業界の課題への取り組み

6 の調査は、集計の方法と対象の人数を明記し、数字の根拠を示せる形にします。根拠の示せない数字は、記者には使えません。

題材を記事になる形に整える

見つけた題材は、次の 3 つの問いに答えられる形に整えます。

  1. 何が新しいのか:これまでとの違い、他と比べて珍しい点を 1 文で言えるか
  2. なぜ今なのか:季節、制度の変更、社会の話題など、今伝える理由があるか
  3. 誰に関係があるのか:媒体の読者のうち、どんな人に役立つ情報か

3 つのうち 2 つ以上に答えられない題材は、単独のリリースにせず、ほかの題材と組み合わせるか、時期を待ちます。例えば「創業からの年数」だけでは弱い題材でも、「その間に地域でどんな役割を果たしてきたか」「これから何を始めるか」と組み合わせると、記事の材料になります。

整えた題材を文章にするときの構成は、プレスリリースの書き方で扱っています。

時期から逆算して題材を用意する

題材は、見つけてから出すだけでなく、出す時期から逆算して用意することもできます。1 年の予定表を作り、記者が記事を探している時期に合わせて題材を準備します。

時期の種類例用意する題材
季節の行事新年度・夏休み・年末季節に合わせた商品や取り組み、利用の変化の数字
制度の変更法律や補助の制度の開始・改正制度に合わせて始めた対応や、利用者への案内
記念日・周年創業の周年、業界の記念日周年に合わせた新しい取り組み、これまでの数字の節目
業界の行事展示会・業界団体の催し出展に合わせた新商品や、業界の課題への提案
自社の予定新しい拠点の開設・設備の導入開設の日程と、地域や顧客にとっての意味

予定表を作ると、「来月は何も出すものが無い」という状態を避けられます。記者は季節の企画を早めに準備することが多いため、季節の題材は 1〜2 か月前に出すことを目安にします。

制度の変更を題材にするときは、制度の内容を正確に書くことが大切です。自社の解釈ではなく、所管の省庁や自治体の発表を確かめ、リリースに出典を添えます。誤った説明のまま記事になると、訂正の手間だけでなく、会社の信用にも関わります。

社内から情報が集まる仕組み

題材を広報の担当者だけで探すのには限りがあります。現場から情報が集まる仕組みを作ります。

  • 問いを具体的にする:「新しく始めたこと」「数字で変化が出たこと」「お客様に驚かれたこと」「社外の人に聞かれたこと」のように聞く
  • 聞く場を決める:月 1 回の定例の会議の最後に 5 分、または日報や週報に 1 欄を設ける
  • 題材の一覧を持つ:集まった候補を一覧にため、「新しさ」「なぜ今か」「誰に関係があるか」の欄を埋めていく
  • 出した結果を返す:情報を出してくれた人に、リリースにしたか、記事になったかを伝える

最後の点が続けるための要点です。出した情報がどうなったかが分からないと、次から情報が出てこなくなります。

実行時の落とし穴

宣伝をネタと取り違える

「キャンペーンを始めました」「セールを行います」は、広告としては大切でも、記者にとっては記事の題材になりにくいものです。キャンペーンを題材にするなら、その背景にある社会の動きや、新しさを示せる事実を組み合わせます。

同じ題材を何度も出す

同じ題材を言い回しを変えて繰り返し出すと、記者の受け取り方が悪くなります。一度出した題材は、新しい事実が加わったときに続報として出します。

結果を振り返らない

どの題材が記事になったか、問い合わせにつながったかを記録しないと、題材の選び方が上達しません。振り返りの指標は、プレスリリースの効果測定で説明しています。