MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティングが「営業に渡してよい」と判断した見込み客、SQL(Sales Qualified Lead)は、営業が「商談として追う」と判断した見込み客です。違いは、誰が、何を根拠に判断するかにあります。MQL はサイトでの行動や属性など、マーケティングが集めたデータで判断し、SQL は営業が直接話して確かめた課題や時期で判断します。この 2 つの定義が曖昧だと、「渡したのに追ってくれない」「質の低い見込み客ばかり来る」という対立が起きます。定義は両部門で一緒に決め、引き渡しと差し戻しの決まりまで文書にします。

MQL と SQL の違い

項目MQLSQL
判断する部門マーケティング営業(またはインサイドセールス)
判断の材料サイトでの行動、資料のダウンロード、セミナーの参加、業種や規模などの属性直接の会話で確かめた課題・予算・決裁者・導入時期
意味営業が連絡する価値がある商談として追い、提案する
主な指標MQL の件数、MQL から SQL になった割合SQL の件数、SQL から受注になった割合

MQL は「関心がありそうだ」という推測、SQL は「検討している」という確認です。MQL の段階では、相手がまだ具体的に検討していないこともあります。そのため、MQL を営業に渡した後、最初の連絡で状況を確かめ、SQL にするかどうかを判断する手順が要ります。

定義が食い違う構造

部門ごとに別の数字を目標にしている

マーケティングが MQL の件数を、営業が受注の金額を目標にしていると、マーケティングは件数を増やすために基準を緩め、営業は受注に近い相手だけを追います。どちらも自分の目標に沿って正しく動いているのに、見込み客は間で放置されます。

定義が言葉になっていない

「関心の高い見込み客」「ホットなリード」のような言葉は、人によって解釈が変わります。条件が行動や属性で書かれていないと、渡す側と受ける側で判断がずれます。

結果が返ってこない

営業に渡した MQL がどうなったか(商談になったか、どんな理由で見送ったか)がマーケティングに返らないと、MQL の基準を直せません。

自社の定義の決め方

1. 受注した案件から逆算する

過去に受注した案件の見込み客が、最初に営業と話す前にどんな行動をしていたか、どんな属性だったかを並べます。共通する行動と属性が、MQL の条件の候補になります。

2. 行動と属性の両方で条件を書く

種類条件の例
行動料金のページを見た、導入事例の資料をダウンロードした、セミナーに参加した、問い合わせのフォームを送った
属性業種が対象に入る、従業員数が対象の範囲、役職が決裁に関わる
除外競合他社、学生、取引の条件に合わない地域

行動だけで判断すると、対象外の相手の熱心な閲覧で MQL が増えます。属性だけで判断すると、関心の低い相手に連絡することになります。両方を満たす条件にします。

3. スコアで重み付けする

条件が多い場合は、行動と属性に点数を付けて合計し、一定の点数を超えたら MQL にします。点数の付け方とデータの整え方は、リードの評価基準とデータの整え方で扱っています。問い合わせのように、それだけで検討していると分かる行動は、点数にかかわらず MQL にします。

4. SQL の条件を決める

SQL の条件は、営業が直接確かめる項目で決めます。予算・決裁者・必要性・導入時期の 4 項目で確かめる方法は、BANT の 4 項目と判定基準で説明しています。

引き渡しと差し戻しの決まり

定義と合わせて、次の決まりを文書にし、両部門の責任者が合意します。

  • 最初の連絡の期限:MQL を渡してから何営業日以内に連絡するか
  • 判断の期限:最初の連絡から何日以内に、SQL にするか差し戻すかを決めるか
  • 差し戻しの理由:「時期が先」「対象外」「連絡がつかない」など、選択肢で記録する
  • 差し戻した後の扱い:時期が先の相手は、情報提供を続ける対象に戻す

差し戻しの理由を選択肢で残すことが大切です。「時期が先」が多ければ MQL の基準が早すぎ、「対象外」が多ければ属性の条件が緩いと判断できます。差し戻した見込み客との関係の保ち方は、リードナーチャリングの進め方にまとめています。

数字の見方

月に 1 回、両部門で次の数字を見ます。

数字見ること
MQL の件数集客の量
MQL → SQL の割合MQL の基準が営業の判断と合っているか
連絡の期限内の対応の割合営業側が決まりを守れているか
差し戻しの理由の内訳基準のどこを直すか
SQL → 受注の割合SQL の判断が当たっているか

MQL → SQL の割合が低いときにマーケティングだけを責めると、基準を厳しくして件数が減り、次は件数不足が問題になります。数字は両部門で見て、基準をどちらに動かすかを一緒に決めます。インサイドセールスを置いて引き渡しを担わせる場合の役割は、インサイドセールスの役割と引き継ぎ基準が参考になります。

実行時の落とし穴

MQL の件数だけを目標にする

MQL の件数をマーケティングの唯一の目標にすると、基準を緩めて件数を増やす動きが起きます。件数と合わせて、MQL から SQL になった割合を目標に入れ、量と質の両方を見ます。

一度決めた定義を見直さない

商品や狙う市場が変われば、商談になる見込み客の行動や属性も変わります。四半期に 1 回は、差し戻しの理由の内訳と、SQL から受注になった割合を見て、MQL と SQL の条件を直します。

営業の判断を記録しない

営業が MQL を見送った理由を記録しないと、マーケティングは何を直せばよいか分かりません。記録の手間を減らすため、差し戻しの理由は 4〜6 個の選択肢から選ぶ形にし、自由記述は任意にします。

定義を部門の中だけで決める

マーケティングだけで決めた MQL の定義は、営業に「自分たちの都合の基準」と受け取られます。定義を決める場には必ず両部門の責任者が入り、決めた内容を両部門の全員に共有します。部門の連携が崩れているときの兆しは、リード獲得費が無駄になっているときのサインにまとめています。