営業リストを作るときに最初に決めるのは、集め方ではなく「どんな企業に当たるか」という条件です。条件が決まっていないリストは、件数が多くても商談につながる先が少なく、担当者が自分の勘で並べ替え始めた時点で使われなくなります。手順は、①受注先の共通点から狙う企業の条件を決める、②公的データなどから候補を集める、③決まった項目で台帳にする、④点数で優先順位を付ける、⑤結果を見て条件を直す、の 5 段です。以下、それぞれの決め方と、リストが使われなくなる原因を説明します。
営業リストが使われなくなる構造
営業リストが形だけになる組織には、共通する構造があります。
条件が言葉になっていない
「中堅の製造業」「IT に前向きな会社」のような条件は、人によって解釈が変わります。担当者ごとに選び方が違えば、受注できた・できなかったの理由を後から比べられず、リストの精度は上がりません。条件は、業種・従業員数・地域のように、誰が見ても同じ判断になる言葉まで落とす必要があります。
行動量だけを数えている
架電件数やメールの送信数だけを目標にすると、担当者は「当たりやすい先」ではなく「件数を稼げる先」を選びます。リストの質を問う指標が無いため、条件に合わない企業への接触が増え、商談化率が下がります。
入手元と取得日が残っていない
どこから、いつ集めた情報かが分からないと、移転や廃業で情報が古くなっていても気づけません。どの入手元の候補が商談になりやすいかも比べられません。
狙う企業の条件を決める
条件は、既存の受注先の共通点から逆算します。
| 観点 | 見るもの | 条件の書き方の例 |
|---|---|---|
| 業種 | 受注先の業種の偏り | 日本標準産業分類の中分類で書く(例:「職別工事業」) |
| 規模 | 従業員数・拠点の数 | 「従業員 30〜300 名」「拠点 2 か所以上」 |
| 地域 | 対応できる範囲 | 「訪問できる都府県」「オンラインなら全国」 |
| きっかけ | 受注の直前に起きていたこと | 「拠点の新設」「採用の募集を出している」 |
| 除外 | 当たっても受注にならない先 | 「競合他社」「既存の取引先」「直近で断られた先」 |
業種を書くときは、総務省の日本標準産業分類に合わせると、公的データと突き合わせやすくなります。日本標準産業分類は、統計を業種別に表すための基準で、現行の分類は 2023 年 7 月に改定され、2024 年 4 月から適用されています(出典:総務省「日本標準産業分類」)。
「きっかけ」の列は見落とされがちですが、条件の中で最も商談化率を左右します。受注した案件の最初の接触の時点で、相手の会社に何が起きていたかを営業担当者に聞き取り、共通するものを書き出します。
候補を集める
条件が決まったら候補を集めます。費用をかけずに始められる公的な情報源があります。
- 国税庁 法人番号公表サイト:商号又は名称・本店又は主たる事務所の所在地・法人番号の 3 つの情報を公表しており、検索のほか、データのダウンロードや Web-API も用意されています(出典:国税庁「法人番号公表サイト」)
- gBizINFO(経済産業省):法人番号をもとに、500 万社を超える法人の基本情報に、届出・認定、補助金、調達、特許、職場情報などの政府が持つ情報をまとめて検索でき、CSV などでのダウンロードや API も提供されています(出典:経済産業省「gBizINFO」)
- 自社の資産:名刺、過去の問い合わせ、展示会やセミナーの参加者、失注した案件の相手先
法人番号をリストの主キーにしておくと、社名の表記ゆれ(「株式会社」の前後・全角と半角)で同じ会社が二重に入るのを防げます。公的データで集めた候補に、業種や従業員数などの条件の列を、企業のホームページや求人情報で確かめて埋めていきます。
リストを購入する場合も、自社の条件で絞り込み直し、入手元を列に残します。
入れておく項目
リストは、担当者が替わっても同じ判断ができる項目で作ります。
| 区分 | 項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 識別 | 法人番号・会社名・所在地 | 重複の防止と名寄せ |
| 条件 | 業種・従業員数・拠点数・きっかけ | 優先順位の点数の材料 |
| 接点 | 部署・役職・連絡先・連絡の可否 | アプローチの経路と同意の確認 |
| 由来 | 入手元・取得日 | 情報の鮮度と入手元の比較 |
| 結果 | 最終接触日・結果・次の予定 | 当たり済みの管理と条件の見直し |
| 点数 | 合計点・点数の内訳 | 優先順位の根拠 |
「連絡の可否」の列は、メールを送る前の確認に使います。広告宣伝のメールは、特定電子メール法により原則として受信者の事前の同意が必要です。名刺交換で得たアドレスや、ホームページで公表されているアドレスには例外がありますが、あわせて送信を拒否する旨が書かれている場合は例外になりません。同意を得た場合も、送信者の氏名又は名称、受信拒否の連絡先、住所、苦情・問合せ先の表示が必要です(出典:日本データ通信協会 迷惑メール相談センター「特定電子メール法」)。個別の判断は専門家に確かめてください。
優先順位を点数で付ける
集めた候補に、条件ごとの点数を付けて並べます。点数は受注先の共通点の強さに合わせて配分します。
| 条件 | 例 | 点数の例 |
|---|---|---|
| 業種が受注の多い分類に当たる | 受注先の 4 割を占める中分類 | +20 |
| 従業員数が受注の多い帯に入る | 30〜300 名 | +15 |
| きっかけがある | 拠点の新設・募集の掲載 | +25 |
| 自社との接点がある | 過去の問い合わせ・名刺 | +20 |
| 除外条件に当たる | 競合・既存の取引先 | 対象外 |
点数は仮説です。最初から精緻に作り込まず、上位から当たって結果を記録し、点数の配分を見直すことを前提にします。点数の内訳を列に残しておくと、「きっかけの点が効いているのか、規模の点が効いているのか」を後から比べられます。
問い合わせや資料請求のように自社のサイトでの行動が分かる見込み客は、行動の点数も足して扱います。行動の点数の付け方とデータの整え方は、リードの評価基準とデータの整え方で扱っています。
結果を見て条件を直す
リストは作ったときが最も正確で、時間とともに古くなります。月に 1 回、次の点を確かめます。
- 点数の上位と下位で、商談化率に差が出ているか(差が無ければ点数の配分が当たっていない)
- 入手元ごとの商談化率(効率の悪い入手元は減らす)
- 当たった結果の記録が抜けていないか(記録が無い行は、次の担当者がもう一度当たってしまう)
- 取得日から時間がたった行の情報を確かめ直したか
実行時の落とし穴
件数を目標にする
リストの件数を目標にすると、条件を緩めて件数を増やす動きが起きます。目標はリストから生まれた商談の数に置き、件数は当たり切れる量に抑えます。
担当者ごとにリストを持つ
担当者が自分のファイルでリストを持つと、同じ会社に別の担当者が当たる、退職と同時に接触の履歴が消える、ということが起きます。リストは 1 か所に置き、担当者の列で割り振ります。インサイドセールスを置く場合の引き継ぎの基準は、インサイドセールスの役割と引き継ぎ基準も参考になります。
点数を見直さない
一度決めた点数を使い続けると、市場や自社の商品が変わっても古い条件のまま当たり続けます。見直しの日を決めておき、結果の記録から配分を直します。
集めること自体が目的になる
リストづくりに時間をかけすぎると、当たる時間が無くなります。条件が決まれば、まず小さく作って当たり、結果から直すほうが早く精度が上がります。部門の連携が崩れているときに出る兆しは、リード獲得費が無駄になっているときのサインにまとめています。
出典
- 総務省「日本標準産業分類」 https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm
- 国税庁「法人番号公表サイト」 https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
- 経済産業省「gBizINFO」 https://info.gbiz.go.jp/
- 一般財団法人日本データ通信協会 迷惑メール相談センター「特定電子メール法」 https://www.dekyo.or.jp/soudan/contents/taisaku/1-2.html




