ヨミ管理とは、進行中の案件ごとに受注の見込み(ヨミ)を確度で分け、金額と受注予定の時期と合わせて、今期の売上の着地を予測する営業の管理です。予測が毎期外れる組織では、確度が担当者の感覚で付けられていることがほとんどです。直すには、確度の段階を「顧客が何をしたか」で定義し、案件ごとに次の行動と期日を持たせ、ヨミ会議では確度が変わった案件だけを確かめる形にします。以下、基準の作り方、管理表の項目、会議の進め方の順に説明します。
ヨミが外れる構造
確度が担当者の気持ちで決まる
「感触が良かった」「前向きと言われた」で確度を上げると、担当者の楽観や、上司に詰められたくない気持ちがそのまま数字に入ります。逆に慎重な担当者は、ほぼ決まっている案件でも確度を低く付けます。同じ A でも担当者によって中身が違えば、合計した着地予測は当てになりません。
確度が上がる条件と下がる条件が無い
確度を上げる条件はあっても、下げる条件が決まっていない組織が多くあります。先方からの返信が止まっても、前回付けた確度のまま残り、期末が近づいてから一斉に落ちます。
会議が「報告会」になる
ヨミ会議で全案件を順に報告させると、時間の多くが変化の無い案件の説明に使われます。止まっている案件の打ち手を話す時間が無くなり、会議は数字を読み上げる場になります。
確度の基準を顧客の行動で決める
確度の段階は、担当者の評価ではなく、顧客が取った行動や、双方で確かめた事実で定義します。
| 確度 | 条件(顧客の行動・確かめた事実) | 受注予定の扱い |
|---|---|---|
| A | 発注の意思を口頭か書面で示した。契約の手続きの日程が決まっている | 今期の着地に入れる |
| B | 見積書を出し、先方が社内の稟議・決裁にかけると明言した。決裁者と時期が分かっている | 今期の着地に入れる(確度で割り引く) |
| C | 課題と導入時期を先方と確かめ、提案の場が決まっている | 次期以降の見込みとして持つ |
| D | 初回の面談をした。課題はあるが時期が決まっていない | 案件として数えない(育てる対象) |
それぞれの段階には「下げる条件」も決めます。
- 次の行動の期日を過ぎても先方と連絡が取れない → 1 段階下げる
- 決裁の時期が次の期にずれた → 今期の着地から外す
- 競合の比較に入ったことが分かった → 確度はそのままで、打ち手の欄に書く
受注予定の金額を確度で割り引いて合計する場合は、自社の過去の実績から「B の案件が実際に受注した割合」を数えて使います。一般的な割合を借りてくるより、自社の数字のほうが予測は当たります。
着地予測の出し方
着地予測は、確度ごとに金額を分けて足し上げます。出し方は 2 通りあり、目的で使い分けます。
| 出し方 | 計算 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 積み上げ | A の合計+B の合計(B は全額) | 最大でどこまで届くかを見る |
| 割り引き | A の合計×A の受注率+B の合計×B の受注率 | 経営に報告する着地の見込み |
割り引きの受注率は、過去 2〜4 期の実績から段階ごとに数えます。計算の例を示します(数字は説明のための仮の値です)。
- A の合計 800 万円、過去の A の受注率 90% → 720 万円
- B の合計 1,500 万円、過去の B の受注率 40% → 600 万円
- 割り引いた着地の見込み:1,320 万円
目標が 1,500 万円なら、差は 180 万円です。この差を、C の案件を今期に前倒しするのか、新しい案件を作るのかを、ヨミ会議の最後に決めます。積み上げの 2,300 万円だけを見ていると、目標に届いているように見えて手を打つのが遅れます。
予測の精度は、期の初め・中ほど・終わりの 3 時点で出した見込みと、実際の着地の差で測ります。期の初めの時点で差が大きい組織は、B の条件が緩いか、受注予定月の付け方が楽観に寄っていることが多くあります。
ヨミ表(管理表)の項目
案件ごとに 1 行で、次の項目を持ちます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 案件名・顧客名 | 同じ顧客の別案件を区別できる名前 |
| 担当者 | 1 案件 1 名 |
| 金額 | 見積の金額(未確定なら想定の金額と明記) |
| 確度 | 上の基準の A〜D |
| 受注予定月 | 先方の決裁の時期から決める |
| 確度の根拠 | 基準のどの条件を満たしたか(例:「10/3 稟議にかけると部長が明言」) |
| 次の行動・期日 | 誰が何をいつまでにするか |
| 前回からの変化 | 確度・金額・予定月が変わったか |
| 失注の理由 | 失注にしたときだけ記入 |
「確度の根拠」の欄が肝心です。根拠が書けない案件は、その確度の条件を満たしていないと判断できます。「次の行動・期日」が空欄の案件は、実際には止まっている案件です。
案件の段階を行動で定義する考え方は、見込み客を商談に進める前の判断でも同じです。商談化の前の段階の基準は、BANT の 4 項目と判定基準で扱っています。
ヨミ会議の進め方
会議は、全案件の報告ではなく、変化と止まっている案件だけを扱います。
- 数字の確認(5 分):今期の目標、A・B の合計、前回からの差を表で見る
- 変化した案件(15 分):確度・金額・予定月が変わった案件だけ、担当者が根拠を説明する
- 止まっている案件(15 分):次の行動の期日を過ぎた案件、同じ確度に長く留まっている案件について、打ち手と担当を決める
- 差の埋め方(5 分):目標との差を、今期に前倒しできる案件と、新しく作る案件のどちらで埋めるかを決める
会議の前に、担当者が表を更新し終えていることが前提です。会議の場で入力させると、時間の多くが入力に使われます。
実行時の落とし穴
確度を詰める場にする
マネージャーが確度の根拠を詰問すると、担当者は確度を低めに付けて身を守るようになり、予測は外れる方向に偏ります。根拠を確かめるのは、責めるためではなく打ち手を決めるためだ、という進め方を守ります。
基準を一度決めて終わる
四半期ごとに、確度の段階ごとの実際の受注率を数えます。B の受注率が想定より大きく低ければ、B の条件が緩すぎます。基準は自社の実績で直し続けるものです。
評価と直結させる
ヨミの的中を担当者の評価に直結させると、確度を操作する動きが起きます。評価は受注や行動の質で行い、ヨミは予測の道具として扱うほうが正直な数字が集まります。売上の目標の置き方が営業の行動をゆがめる例は、営業の値引きと売上 KPI の関係でも扱っています。
ツールを入れれば解決すると考える
SFA を入れても、確度の基準と更新の決まりが無ければ、表計算で管理していたときと同じ問題が画面の上で起きます。ツールが定着しない理由は、SFA が定着しない原因と導入の進め方にまとめています。




