事務の業務効率化は、①やめる、②減らす、③まとめる、④型にする、⑤仕組みに任せる、の順で考えると、費用をかけずに始められることが多く見つかります。効率化というと、新しい道具を入れることを思い浮かべがちですが、誰も使っていない作業をやめる、確認の段階を減らす、よく使う文面をひな形にする、といったことのほうが、すぐに効果が出ることもよくあります。道具を入れるのは、やめる・減らす・まとめるを済ませた後です。この順番を逆にすると、無駄な作業まで道具に組み込むことになり、かえって手間が増えることがあります。
効率化を考える順番
| 順番 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | やめる | 誰も読んでいない報告、使われていない集計、形だけの確認 |
| 2 | 減らす | 報告の頻度を下げる、確認の段階を減らす、印刷をやめる |
| 3 | まとめる | ばらばらに行っている同じ作業を 1 回にまとめる |
| 4 | 型にする | ひな形、手順書、よくある質問への答えを用意する |
| 5 | 仕組みに任せる | 手作業の入力や集計を、仕組みで自動で行う |
「やめる」から考えるのは、なくしてよい作業を効率よく行っても、意味がないからです。「この作業は何のためにしているのか」「やめたら誰が困るのか」を確かめると、やめられる作業が見つかります。
場面ごとの効率化のアイデア
書類の作成
- ひな形を用意する:見積書、請求書、社内の申請書など、よく作る書類のひな形を決め、共有の場所に置く
- よく使う文面を登録する:メールのあいさつや、よくある問い合わせへの返事を、文面として登録しておく
- 社内の書類の見栄えにこだわらない:社内の資料は、中身が伝われば十分とし、図や色の調整に時間をかけない
入力と転記
- 同じ内容を 2 回入力しない:申込書の内容を表計算に写し、さらに別の仕組みに入力する、といった二重の入力を洗い出し、1 回で済む形にする
- 入力の形式をそろえる:日付や金額の書き方、会社名の書き方をそろえておくと、後の集計や検索が楽になる
- 紙で受け取らない:申請や届出を、紙ではなく入力の画面やフォームで受け取る
確認と承認
- 確認の段階を見直す:同じ書類を何人もが確かめていないかを見直し、本当に必要な確認だけに絞る
- 金額や種類で承認の流れを分ける:少額の申請は上司だけで決められるようにするなど、承認の段階を分ける
- 確認の観点を書き出す:何を確かめるかをチェックリストにすると、確認が速く、漏れも減る
連絡とやり取り
- 連絡の手段を決める:社内の短いやり取りはチャット、社外や記録が要るものはメール、のように使い分けを決める
- よくある質問をまとめる:社内から繰り返し来る質問への答えを 1 か所にまとめ、質問を受けたらそこを示す
- 会議を減らす:報告だけの会議は文書で済ませ、会議は決めることに絞る
連絡の手段の使い分けは、メールとチャットの使い分けで扱っています。
探し物
- ファイルの置き場所を決める:共有フォルダの構成を決め、個人の手元にファイルを置かない
- ファイル名の付け方を決める:日付と内容を入れた名前にし、探すときに迷わないようにする
- 机の上と棚を整える:よく使う物の置き場所を決め、使ったら戻す
事務の仕事では、ファイルや書類を探す時間が思いのほか多くかかっています。置き場所と名前の付け方の決め方は、共有フォルダのルールの例とファイル名の付け方のルールで説明しています。
集計と作表
- 表計算の機能を使う:手で足し算や並べ替えをしている作業は、表計算の関数や集計の機能で置き換えられることが多い
- 毎月同じ表を作らない:毎月同じ形の表を一から作っているなら、ひな形にしてデータだけを入れ替える
- 仕組みから直接数字を出す:販売や会計の仕組みに入っている数字は、手で写さず、仕組みから書き出して使う
効率化する業務の選び方
アイデアをすべて一度に試すことはできません。次の手順で、効率化する業務を選びます。
まず、1 週間ほど、作業ごとにかかった時間を記録します。正確でなくても構いません。「請求書の作成 3 時間」「問い合わせへの返事 5 時間」のように、大まかに分かれば十分です。次に、時間を多く使っている作業と、ミスや手戻りが多い作業を選び、上の順番(やめる・減らす・まとめる・型にする・仕組みに任せる)で見直せないかを考えます。
部署全体で進めるときは、業務を一覧にして洗い出すと、同じ作業を複数の人がばらばらに行っていることにも気づけます。進め方は、業務棚卸しのやり方で説明しています。
道具を入れても使われない原因
効率化のために新しい道具を入れたのに、使われない、かえって手間が増えた、ということがよくあります。原因と防ぎ方を示します。
仕事の流れを見直さずに入れる
今のやり方のまま道具を入れると、今の作業に加えて、道具への入力という作業が増えます。道具を入れる前に、どの作業をやめ、どの作業を道具に任せるのかを決めます。仕事の流れを図にすると、どこを道具に任せるかが見えやすくなります。描き方は、業務フロー図の書き方で扱っています。
使う人が選んでいない
道具を選ぶ人と使う人が違うと、使う人にとって使いにくい道具が選ばれることがあります。選ぶ段階で、実際に使う人に試してもらいます。
例外の扱いが決まっていない
普段の作業は道具でできても、例外のときの扱いが決まっていないと、例外のたびに元のやり方に戻り、結局、両方のやり方が残ります。よくある例外への対応を、入れる前に決めておきます。
一度に全部を切り替える
全員が一度に新しいやり方に切り替えると、慣れるまでの間に仕事が滞ります。一部の人や一部の作業で試し、問題を直してから広げます。
実行時の落とし穴
効率化した時間の使い道を決めない
作業が減っても、空いた時間の使い道が決まっていないと、ほかの細かな作業で埋まってしまいます。空いた時間で何をするかを、あらかじめ決めておきます。
一人だけで進める
自分の作業だけを効率化しても、前後の人の作業が変わらなければ、効果は限られます。前後の工程の人と話し、一緒に見直します。
効率化そのものを目的にする
効率化は、ミスを減らす、顧客への対応を早くする、残業を減らす、といった目的のための手段です。何のために効率化するのかを決めてから始めます。




