人事評価の自己評価は、①目標に対する結果、②取り組んだこと、③うまくいかなかったことと理由、④次の期に生かすこと、の順に、数字と事実で書くと、上司に伝わりやすくなります。自己評価は、上司が自分の仕事をすべて見ているとは限らない中で、何をしたかを伝える機会です。「頑張りました」「努力しました」のような言葉は、読む人にとって判断の材料になりません。いつ、何を、どのくらいしたのかを具体的に書き、評価の基準のどの段階に当たると考えるかを、その理由と一緒に示すことが、自己評価の基本です。
自己評価を書くときの型
| 項目 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 目標と結果 | 期の初めの目標と、実際の結果 | 「新規の受注 10 件の目標に対し、12 件」 |
| 取り組んだこと | 結果のために何をしたか | 「展示会で知り合った先に 1 週間以内に訪問した」 |
| うまくいかなかったこと | 届かなかった点と理由 | 「提案の件数は目標に届かなかった。見積の作成に時間がかかったため」 |
| 次の期に生かすこと | 何を変えるか | 「見積のひな形を作り、作成の時間を半分にする」 |
| 自分で付けた段階と理由 | 評価の基準のどの段階か | 「基準の B に当たると考える。目標は上回ったが、提案の件数が未達のため」 |
書く前に、期の初めに立てた目標と、評価の基準(どうなればどの段階か)を読み返します。目標の書き方は、目標設定の書き方と例文で扱っています。
職種別の例文
例文は説明のための例です。自分の目標と評価の基準に合わせて書き換えてください。
営業職
新規の受注 10 件の目標に対し、12 件を受注しました。9 月の展示会で名刺を交換した 40 社のうち 25 社に、1 週間以内に訪問の約束を取り、そのうち 5 社から受注したことが、目標を上回った主な理由です。一方、提案の件数は目標 30 件に対して 24 件にとどまりました。見積の作成に 1 件あたり 2 時間ほどかかり、訪問の時間が取れなかったためです。次の期は、よく使う見積のひな形を作り、作成の時間を減らして、提案の件数を増やします。以上から、評価の基準の B に当たると考えます。
事務職
請求書の発行の誤りを、月平均 4 件から 1 件に減らす目標に対し、下期の平均は 1.5 件でした。発行の前に確かめる項目をチェックリストにし、担当の 2 人で確かめ合う手順を取り入れました。目標にはわずかに届かず、残った誤りは、取引先の宛名の変更が伝わっていなかったことによるものでした。次の期は、取引先の情報の変更を営業から受け取る手順を決め、誤りを 1 件以下にします。
企画・開発職
新しい機能の公開を 9 月末までに行う目標に対し、公開は 10 月の半ばになり、2 週間遅れました。遅れの原因は、途中で仕様の変更が 2 回あり、その都度作り直したことです。変更の影響を早めに関係者へ伝え、公開の日を合意し直したため、顧客への影響は出ませんでした。次の期は、仕様の変更を受けるときの手順と判断する人を最初に決めておき、作り直しを減らします。
管理職
部の売上目標 1 億円に対し、9,600 万円でした。部員 6 名のうち 4 名が個人の目標を達成しました。達成できなかった 2 名とは、月に 1 回の面談で案件の進み具合を確かめましたが、手を打つのが遅れた案件がありました。部下の育成では、入社 2 年目の 2 名が一人で提案できるようになりました。次の期は、案件の進み具合を週ごとに一覧で確かめ、遅れの兆しに早く気づけるようにします。
書けないときの考え方
「書くことが無い」と感じるときは、次の順に振り返ると、書くことが見つかります。
1 つめは、期の間にした仕事を月ごとに書き出すことです。予定表、送ったメール、作った資料を見返すと、忘れていた仕事が見つかります。
2 つめは、数字で表せることを探すことです。件数、時間、金額、誤りの数、期限までに終えた割合など、数字にできることは多くあります。前の期と比べて増えた・減ったを書くだけでも、変化が伝わります。
3 つめは、周りの人への影響を考えることです。ほかの人の仕事を手伝った、手順書を作ってチームの仕事が楽になった、新しく入った人に仕事を教えた、といったことも、評価の材料になります。
書くときに避けたいこと
- 気持ちや姿勢だけを書く:「一生懸命取り組んだ」だけでは判断できない。何をしたかを書く
- 言い訳を並べる:届かなかった理由を外の事情だけで説明すると、振り返りとして伝わらない。自分で変えられたことにも触れる
- 長く書きすぎる:1 つの目標について 3〜5 文程度にまとめる。詳しいことは面談で話せばよい
- 評価の基準と関係ないことを書く:基準に照らして書くことで、上司と同じ物差しで話せる
評価する側が自己評価を生かす方法
自己評価は、書かせて終わりにするのではなく、評価の面談で使います。上司は、面談の前に自己評価を読み、自分の見方と違うところに印を付けておきます。面談では、違いのある項目から話し、どの事実をどう見たかを互いに確かめます。
上司が見ていなかった仕事が自己評価に書かれていれば、それを評価の材料に加えます。反対に、上司から見て抜けている点があれば、事実を示して伝えます。面談の進め方は、評価面談の進め方で説明しています。
自己評価と上司の評価が大きくずれる場合、評価の基準の書き方があいまいなことが原因のこともあります。「積極的に取り組んだ」のような基準は、人によって受け取り方が変わります。基準を、行動や結果で確かめられる形に書き直すことを考えます。評価項目の書き方は、人事評価の評価項目の例で扱っています。
実行時の落とし穴
自己評価の段階をそのまま最終の評価にする
自己評価は、本人の見方を知るための材料です。上司が自分で事実を確かめずに、自己評価の段階をそのまま採用すると、控えめに書く人ほど低く評価されることになります。
書き方を教えない
自己評価の書き方は、教わらなければ人によって大きく違います。例文や型を配り、どう書けばよいかをそろえておきます。
書いた内容に触れない
自己評価を書いても、面談で一度も触れられなければ、次から書く人は手を抜くようになります。面談では、自己評価に書かれたことから話を始めます。




