次世代リーダーの育成は、①自社に必要なリーダー像を決める、②候補を選ぶ、③仕事の経験と振り返りを組み合わせた育成計画を立てる、④経営陣が定期的に進み具合を確かめる、の順に進めます。育成を人事の部署に任せ、研修を受けさせるだけで終わると、研修の場では学んでも、実際の仕事で判断を任される経験が無いため、リーダーとして育ちません。次のリーダーを育てることは、経営陣の仕事の 1 つとして、経営陣自身が関わることが欠かせません。

育成の手順

1. 必要なリーダー像を決める

数年後の事業の姿から、どんな役職に、どんな力を持つ人が必要になるかを考えます。例えば、新しい事業を立ち上げる予定があるなら、新しいことを任されて進められる人が必要です。既存の事業を広げるなら、人を増やしながら仕事の仕組みを整えられる人が必要です。必要なリーダー像を、求める経験と行動の形で書き出します。

2. 候補を選ぶ

候補は、今の仕事の成果だけでなく、周りの人を巻き込んで仕事を進めた経験、新しい仕事に挑んだ経験、本人の意向を合わせて選びます。今の仕事で成果を上げている人が、必ずしもリーダーに向いているとは限りません。プレイヤーとしての成果と、人を率いる力は別のものだからです。この点は、ピーターの法則とはで詳しく扱っています。

3. 育成計画を立てる

候補ごとに、今の力と、必要なリーダー像との差を確かめ、その差を埋めるための計画を立てます。計画には、任せる仕事、身に付けてほしい知識、振り返りの場を書きます。育成計画の書式は、人材育成計画の作り方を参考にしてください。

4. 経営陣が進み具合を確かめる

半年に 1 回など時期を決めて、経営陣が候補ごとの進み具合を確かめます。任せた仕事でどんな判断をし、何を学んだかを、本人から聞く場を設けると、経営陣が候補の成長を直接知ることができます。進み具合によって、候補の入れ替えや、任せる仕事の見直しを行います。

育成の方法の組み合わせ

方法中身身に付くこと
仕事の経験部署の立て直し、新しい仕事の立ち上げ、ほかの部署への異動など、今までより大きな判断を任せる判断の経験、人を率いる経験
振り返り任せた仕事について、上司や経営陣と定期的に振り返る経験から学ぶ力
相談相手経営陣や先輩の管理職が、候補の相談相手になる視野の広がり、判断の考え方
研修経営の知識、財務、人の管理などを学ぶ知識の土台

育成の中心は、仕事の経験です。研修で知識を学んでも、実際に判断を任される経験が無ければ、リーダーとしての力は育ちません。任せた仕事の後に振り返りの場を設けることで、経験が学びに変わります。候補の相談相手を決める仕組みには、メンター制度があります。進め方はメンター制度とはで説明しています。

任せる仕事の選び方

任せる仕事は、候補にとって少し背伸びが必要な大きさのものを選びます。失敗しても会社の存続に関わらない範囲で、候補が自分で判断しなければならない場面がある仕事が向いています。例えば、小さな事業や店舗の責任者、社内の改善のプロジェクトのまとめ役、新しい取引先との関係づくりなどです。

任せた仕事の途中で、上司が細かく指示を出しすぎると、候補は自分で判断する経験を積めません。判断を任せる範囲と、上司に相談すべき場面を最初に決めておき、その範囲の中では候補に任せます。任せ方の考え方は、権限委譲とはで扱っています。

候補の情報をまとめる

候補ごとの経歴、評価の推移、任せた仕事と振り返りの記録、本人の意向を 1 か所にまとめておくと、経営陣が候補を比べたり、次に任せる仕事を決めたりしやすくなります。社員の情報を集めて人事の判断に使う取り組みについては、タレントマネジメントとはで説明しています。

中小企業での進め方

社員の数が少ない会社では、大がかりな選抜の仕組みや、候補だけを集めた研修を用意するのは現実的ではありません。その代わり、経営者と候補の距離が近いという強みがあります。経営者が候補と月に 1 回程度、仕事の進み具合や判断に迷っていることを話す時間を取るだけでも、候補は経営者の考え方や判断の基準を直接学べます。

また、中小企業では、次のリーダーの候補が 1 人か 2 人に限られることが多く、その人が辞めると計画が振り出しに戻ります。候補を 1 人に絞りすぎず、若手の中からも、少し大きな仕事を任せる機会を意識して作っておきます。社外の勉強会や、業界の団体の活動に参加してもらうことも、社内だけでは得にくい経験と人のつながりを得る機会になります。

候補との面談で話すこと

候補との定期的な面談では、任せた仕事の結果だけでなく、どんな場面でどう判断したのか、判断に迷ったときに何を手がかりにしたのかを聞きます。判断の理由を言葉にしてもらうことで、候補は自分の判断を振り返り、次の判断に生かせるようになります。経営陣の側も、候補がどんな考え方で判断する人なのかを知ることができ、登用の判断の材料になります。

面談では、本人のキャリアの考えも確かめます。リーダーの役割を望んでいない人に、会社の都合だけで役割を押し付けると、本人にとっても会社にとっても良い結果になりません。本人の意向が変わった場合は、専門性を生かす別の道を用意することも考えます。

うまくいかない原因

研修だけで育てようとする

研修を受けさせることが育成の中心になると、研修が終わった時点で育成も終わってしまいます。研修は知識の土台と考え、学んだことを試す仕事の機会を用意します。

経営陣が関わらない

育成を人事の部署に任せきりにすると、経営陣は候補の成長を知らないまま、登用の時期を迎えます。登用を決めるのは経営陣であり、経営陣が育成の途中から関わることで、登用の判断の材料もそろいます。

候補を固定する

一度選んだ候補を何年も見直さないと、ほかの社員の成長を見落とし、候補の意欲も保ちにくくなります。候補は定期的に見直し、新しく力を付けた社員を加えます。

忙しい部署から候補を出さない

優秀な社員ほど今の部署で頼りにされ、上司が異動や新しい仕事を任せることを嫌がることがあります。候補の育成は会社全体の課題として、経営陣が部署をまたいで仕事の機会を決めます。