管理職の評価は、①部署の業績、②部下の育成、③組織の運営、④自分の判断と行動、の 4 つの領域で項目を立てます。管理職をプレイヤーのときと同じように、個人や部署の数字だけで評価すると、部下を育てる、仕事の分担を整える、といった管理職にしかできない仕事が評価されず、後回しになります。管理職の評価項目を作ることは、会社が管理職に何を期待しているのかを言葉にすることでもあります。
管理職の評価の 4 つの領域
| 領域 | 見ること | 評価項目の例 |
|---|---|---|
| 部署の業績 | 部署として目標を達成したか | 部署の売上・利益の目標の達成、予算の管理、部署の重点の取り組みの進み具合 |
| 部下の育成 | 部下が育ち、任せられる仕事が増えたか | 部下ごとの育成の目標の達成、定期的な面談の実施、後任の候補の育成 |
| 組織の運営 | 部署が仕事を回せる状態を保ったか | 仕事の分担と優先順位の決め方、手順の整備、ほかの部署との連携、部下の働く時間の管理 |
| 判断と行動 | 管理職として判断し、行動したか | 期限までの判断、問題の早めの報告、会社の方針の部下への説明、法令と社内の決まりの順守 |
管理職の役割そのものの整理は、管理職の役割で扱っています。
項目の書き方
評価項目は、目に見える行動や結果で書きます。「リーダーシップがある」「部下の信頼が厚い」のような言葉だけの項目は、評価者ごとに受け取り方が違い、評価の根拠を説明できません。
| よくない書き方 | よい書き方 |
|---|---|
| 部下の育成に熱心である | 部下ごとに育成の目標を期初に決め、月に 1 回以上の面談で進み具合を確かめた |
| 組織をまとめている | 部署の仕事の分担と優先順位を文書にし、変わったときに部下に説明した |
| 判断が早い | 部下から上がった判断の依頼に、決めた期限までに結論を返した |
| コンプライアンス意識が高い | 部署で起きた問題を、決められた手順で期限までに報告した |
行動で評価する項目の作り方は、コンピテンシー評価とはで説明しています。
段階の書き方の例
「部下の育成」の項目を例に、段階ごとの状態を書きます。
| 段階 | 状態 |
|---|---|
| S | 全員の育成の目標を達成し、部下の 1 人以上が新しい役割を任されるまでに育った |
| A | ほとんどの部下の育成の目標を達成し、面談を計画どおりに続けた |
| B | 育成の目標を決め、面談を続けたが、達成は一部にとどまった |
| C | 育成の目標を決めたが、面談が続かなかった |
| D | 育成の目標を決めていない |
段階ごとの状態を書いておくと、評価者どうしで基準がそろい、評価を受ける管理職にも、何をすれば評価が上がるのかが伝わります。
配点の決め方
配点は、会社が管理職に何を期待するかを表します。次は例です。
| 役職の例 | 部署の業績 | 部下の育成 | 組織の運営 | 判断と行動 |
|---|---|---|---|---|
| 課長 | 40 | 25 | 20 | 15 |
| 部長 | 50 | 20 | 15 | 15 |
課長のように部下との距離が近い役職では、育成の配点を大きくします。部長のように部署全体の方向を決める役職では、業績と組織の運営の比重を大きくします。数字は例で、自社の方針に合わせて決めます。評価シート全体の作り方は、人事評価シートの作り方で説明しています。
評価者と評価の進め方
管理職の一次評価は、その上の役職の人が行います。部長や役員が評価者になるため、評価者の数が少なく、評価者の個人の見方に偏りやすくなります。複数の部長や役員が集まって、管理職の評価を並べて比べる場を設けると、評価の偏りに気づけます。
部下の育成や組織の運営は、上の役職の人からは見えにくい仕事です。期中に、管理職自身に取り組みの記録を残してもらう、部下の面談の記録を確かめる、といった方法で、評価の材料を集めます。評価の理由の書き方は、人事評価のコメントの書き方と例文が参考になります。
業績だけで評価したときに起きる問題
管理職がプレイヤーに戻る
業績だけが評価されると、管理職は部下に任せるより、自分で売上を上げるほうが評価につながると考えます。部下は育たず、管理職が抜けると部署の業績が落ちる状態になります。
部下の育成が後回しになる
育成は結果が出るまで時間がかかります。業績だけで評価される管理職は、今期の数字を優先し、育成の時間を削ります。数年たってから、次の管理職の候補がいないことに気づきます。
昇進の基準とずれる
プレイヤーとして成果を上げた人を管理職に上げ、管理職になってからも業績だけで評価していると、管理職に必要な力が育たないまま役職が上がります。昇進の基準の作り方は、ピーターの法則とはで扱っています。
評価の面談で伝えること
管理職の評価の面談では、段階の結果を伝えるだけでなく、領域ごとに、評価の根拠になった事実と、次の期間に期待することを伝えます。管理職は、部下の評価を行う立場でもあります。自分が受ける評価の面談が、根拠を示して次の期待を伝える形になっていれば、管理職が部下に行う評価の面談も同じ形になりやすくなります。反対に、管理職の評価が「今期は数字が良かったから A」のような伝え方で済まされていると、部下の評価の面談も同じように簡単に済まされがちです。
また、部下の育成や組織の運営の領域で評価が低かった管理職には、何が足りなかったのかを一緒に確かめ、次の期間の目標に落とし込みます。部下との面談の時間が取れなかったのであれば、管理職自身の仕事の量や、プレイヤーとして担当している仕事の割合を見直す必要があるかもしれません。評価の結果を、管理職個人の努力の問題だけで片付けず、管理職が管理の仕事に時間を使える状態になっているかを、上の役職の人が確かめることが大切です。
評価項目を定着させる
評価項目を作ったら、評価の時期だけでなく、期初に管理職と上の役職の人が項目を確かめ、今期に何を重く見るかを話し合います。新しく管理職になった人には、評価項目を使って、管理職として期待されることを説明します。新しく管理職になった人の研修の組み立ては、新任管理職研修が意味ない理由と機能する設計の手順で扱っています。




