人材育成計画は、会社や部署が必要とする人材の姿と今の差を明らかにし、誰に、何を、いつまでに、どうやって身に付けてもらうかを決めた計画です。作り方は、①事業の計画から必要な人材の姿を決める、②今の社員の技能を把握し、差を明らかにする、③育成の方法と時期を決める、④個人ごとの育成計画書に落とす、⑤定期的に進み具合を確かめる、の 5 つの手順で進めます。人材育成計画は、会社全体の計画と、個人ごとの育成計画書の 2 段で作ると、会社の必要と個人の成長がつながります。計画がやりっぱなしになる原因の多くは、進み具合を確かめる場が無いことにあります。

会社全体の計画と個人の育成計画書

人材育成計画は、次の 2 つの段で作ります。

段何を決めるか作る人
会社(部署)の育成計画事業に必要な人材の姿、育てる人数、育成の方法と予算、年間の予定経営者・人事・部署の長
個人の育成計画書一人ひとりが何を、いつまでに、どうやって身に付けるか本人と上司

職業能力開発促進法第 11 条は、事業主に対して、従業員の職業能力の開発が段階的・体系的に行われるよう、計画を作成するよう努めることを定めています。同法第 12 条では、その計画の作成と実施などを担当する「職業能力開発推進者」を選任するよう努めることも定めています。どちらも努力義務ですが、計画を作り、担当を決めて進めるという形は、法律が示している考え方でもあります。

会社の育成計画に書く項目

項目記入の例
目的3 年後の新しい事業の立ち上げに向けて、顧客への提案ができる営業の担当を育てる
必要な人材の姿顧客の課題を聞き取り、提案書を作って説明できる
対象と人数営業部の入社 2〜5 年目の社員 6 名
身に付ける技能・知識聞き取りの進め方、提案書の書き方、商品の知識
育成の方法社内の勉強会(月 1 回)、先輩との同行(週 1 回)、外部の研修(年 1 回)
期間と予定4 月〜翌年 3 月。9 月に中間の確認
予算外部の研修の費用、勉強会の講師の費用など
担当営業部長(全体)、各チームの主任(同行の指導)
確かめ方半年ごとに、提案書の作成と説明の場面を上司が確かめる

個人の育成計画書の項目と記入例

項目記入の例
氏名・所属・期間〇〇 〇〇、営業部、2026 年 4 月〜2027 年 3 月
今の役割と、期待する役割今:既存の顧客の担当。期待:新しい顧客への提案の担当
身に付けたいこと(本人)提案書を一人で作れるようになりたい
期待すること(上司)顧客の課題を聞き取り、提案の方向を自分で決められるようになってほしい
育成の目標9 月までに先輩と一緒に提案書を 3 件作る。翌年 3 月までに一人で 3 件作り、説明する
方法先輩の商談への同行(週 1 回)、社内の勉強会、提案書の添削
支援する人上司、同行の先輩
確認の時期毎月の面談で進み具合を話す。9 月と 3 月に振り返り
振り返り(期間の終わりに記入)できるようになったこと、次の期に続けること

育成の目標は、「提案力を高める」のようなあいまいな書き方ではなく、「一人で提案書を作り、説明する」のように、できるようになったかどうかを確かめられる形で書きます。

作る手順

手順 1:事業の計画から必要な人材の姿を決める

育成計画は、事業の計画から始めます。これから 1〜3 年でどんな事業を伸ばし、どんな仕事が増えるのかを確かめ、そのためにどんな技能を持つ人が何人必要かを決めます。事業の計画とつながっていない育成計画は、研修を並べただけのものになりがちです。

手順 2:今の社員の技能を把握し、差を明らかにする

必要な人材の姿に対して、今の社員がどんな技能を持っているかを把握します。部署の業務と、それぞれの技能を誰がどの程度持っているかを一覧にすると、足りない技能と、育てるべき人が見えてきます。一覧の作り方は、スキルマップの作り方で説明しています。

手順 3:育成の方法と時期を決める

足りない技能ごとに、育成の方法を選びます。仕事の中で教える方法(同行、仕事を任せる、添削)と、仕事から離れて学ぶ方法(研修、勉強会、本や教材での学習)を組み合わせます。技能の多くは、仕事の中で実際に使うことで身に付くため、研修だけに頼らず、仕事の中で試す機会を計画に入れます。

新しく入った人の育成は、OJT が放置になる構造と、オンボーディング標準化の設計手順で、今の仕事と違う技能を身に付けてもらう場合は、リスキリングの進め方で扱っています。

手順 4:個人ごとの育成計画書に落とす

会社の計画をもとに、上司と本人が面談で個人の育成計画書を作ります。本人が身に付けたいことと、上司が期待することを出し合い、期間の終わりにできるようになっていたいことを決めます。

手順 5:定期的に進み具合を確かめる

毎月の面談や 1on1 で、育成の進み具合を話します。半年ごとに、育成の目標に対してできるようになったことを確かめ、計画を直します。

計画がやりっぱなしになる原因

研修を受けさせて終わる

研修を受けることが計画の中身になっていると、受けた後に仕事で使う機会が無く、身に付かないまま終わります。研修の後に、学んだことを仕事で試す場面を計画に入れておきます。

進み具合を確かめる場が無い

計画を作った後、次に開くのが 1 年後の評価の時期、ということがよくあります。毎月の面談で育成の話をする時間を取り、進み具合を確かめます。

教える側の時間が無い

同行や添削を計画に入れても、教える側に時間が無ければ実行されません。教える時間を業務として確保し、教えたことを評価に入れます。

評価や処遇とつながっていない

育成の目標を達成しても、評価や役割に何も反映されなければ、本人の動機は続きません。身に付けた技能を、任せる仕事や等級の判断に使うことで、育成と処遇をつなげます。

出典