採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)は、採用の業務の一部または全部を外部の会社に任せる方法です。任せやすいのは、応募者への連絡、面接の日程の調整、応募の情報の管理のような、手順が決まった業務です。一方、どんな人を採るかの決定、選考の基準、最後の合否の判断は、社内に残すべき業務です。採用代行を使っても採用がうまくいかない原因の多くは、社内に残すべき業務まで任せてしまい、自社に合う人の基準が社内で決まっていないまま、採用の数だけが進むことにあります。任せる前に、社内で決めることと、任せることの境目をはっきりさせることが大切です。
採用の業務と任せやすさ
| 業務 | 中身 | 任せやすさ |
|---|---|---|
| 採用の計画 | 何人、どの職種を、いつまでに採るか | 社内で決める |
| 求める人の定義 | 仕事の内容、必要な経験や技能、選考の基準 | 社内で決める。整理の手伝いは頼める |
| 求人の原稿の作成 | 求人の媒体に載せる文章 | 任せやすい。内容は社内で確かめる |
| 求人の媒体の運用 | 掲載の管理、スカウトの送信 | 任せやすい |
| 応募者への連絡 | 応募の受付、書類の案内、選考の結果の連絡 | 任せやすい |
| 面接の日程の調整 | 応募者と面接官の日程の調整 | 任せやすい |
| 書類の選考 | 決めた基準での一次の確認 | 基準が明確なら任せられる。判断に迷うものは社内へ |
| 面接 | 応募者の見極め | 社内で行う(一次の面接を頼む場合も、基準と質問をそろえる) |
| 合否の判断 | 採るかどうかの最終の判断 | 社内で決める |
| 内定後の連絡 | 入社までの連絡や手続きの案内 | 一部は任せられる。重要な連絡は社内から |
「社内で決める」の業務を任せてしまうと、代行の会社は、自社の事情を知らないまま、条件に合いそうな人を集め、選考を進めることになります。その結果、書類の上では条件を満たしていても、仕事の中身や職場に合わない人が選考に残りやすくなります。求める人の基準を明らかにする方法は、採用ミスマッチの原因は要件の曖昧さ。選考基準を可視化するで扱っています。
依頼の前に決めておくこと
採用代行に依頼する前に、社内で次のことを決めておきます。
- 採用の計画:職種、人数、入社の時期、採用にかける費用
- 求める人の基準:必ず要る経験・技能と、あればよい経験・技能を分けて書く
- 選考の流れ:書類の選考、面接の回数、各段階で誰が何を確かめるか
- 判断の分担:どこまでを代行の会社が行い、どこから社内が判断するか
- 応募者への対応の決まり:返信までの時間、連絡の文面、よくある質問への答え
- 数字の報告:応募の数、各段階を通過した数、辞退の数などを、いつ、どの形で報告してもらうか
数字の報告は、採用の流れのどこで人が減っているのかを確かめるために欠かせません。段階ごとの通過の割合の見方は、採用の歩留まりとはで説明しています。応募者の情報を代行の会社と共有する場合は、採用管理の仕組みでの共有の範囲と権限も決めておきます。採用管理の仕組みについては、採用管理システム(ATS)とはが参考になります。
契約で確かめる点
契約の前に、次の点を確かめます。
| 確かめる点 | 中身 |
|---|---|
| 業務の範囲 | どの業務を、どこまで行うか。範囲の外の業務を頼むときの扱い |
| 料金の決まり方 | 月ごとの定額か、業務の量に応じた料金か |
| 個人情報の扱い | 応募者の情報の保管、利用の範囲、契約が終わったときの返却や消去 |
| 報告の形 | 報告の頻度、報告する数字、報告の場 |
| 担当者 | 誰が担当するか。担当者が替わる場合の引き継ぎ |
| 募集に当たる業務の扱い | 下の「委託募集」に当たるかどうかと、その場合の許可 |
採用の業務を外部に任せる場合、任せる業務の中身によっては、職業安定法の「委託募集」に当たることがあります。職業安定法第 36 条では、労働者を雇用しようとする者が、自社の社員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならないとされています。報酬を与えずに従事させる場合は、届け出が要ります。応募者への連絡や日程の調整のような事務の代行と、募集そのものに従事させることの線引きは、業務の中身によって変わります。契約の前に、代行の会社にどう扱っているかを確かめ、判断に迷う場合は、所轄の労働局に相談してください。
任せても採用がうまくいかない原因
基準を決めずに任せる
求める人の基準が社内で決まっていないと、代行の会社は、分かりやすい条件(経験年数、資格など)だけで応募者を選ぶことになります。基準は社内で決め、代行の会社と共有します。
報告を受けて終わる
代行の会社から応募の数や面接の数の報告を受けても、それをもとに手を打たなければ、採用はよくなりません。報告の場で、どの段階で人が減っているか、その理由は何かを一緒に確かめ、求人の原稿や選考の流れを直します。
社内の担当者がいなくなる
採用の業務をすべて任せると、社内で採用を分かる人がいなくなります。代行の契約を終えたときに、社内で採用を回せなくなるおそれがあります。少なくとも 1 人は、採用の全体を把握する社内の担当者を置きます。
実行時の落とし穴
面接まで任せきりにする
面接は、応募者を見極める場であると同時に、応募者が会社を見極める場でもあります。応募者は面接官を通じて職場の様子を知ります。面接は社内で行い、質問と評価の基準をそろえます。面接の質問の作り方は、中途採用の面接質問例で扱っています。
応募者への対応の決まりを共有しない
代行の会社の担当者の対応が、応募者から見た会社の印象になります。連絡の文面や返信の時間の決まりを共有し、定期的に応募者への対応を確かめます。
契約の範囲があいまい
どこまでが代行の会社の業務なのかがあいまいだと、応募者への連絡が漏れたり、二重に連絡したりします。業務の範囲と分担を一覧にし、双方で確かめておきます。
出典
- 職業安定法(e-Gov 法令検索):https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141




