NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客に「この会社(商品)を友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか」と 0〜10 の点数で聞き、9〜10 点の推奨者の割合から、0〜6 点の批判者の割合を引いて出す指標です。1 つの問いで顧客との関係の強さを測れるため、多くの企業で使われています。ただし、NPS の値を測るだけでは何も改善しません。点数と一緒に理由を聞き、批判者への対応と、理由の集計による改善を決まった手順で回すことで、解約の防止や商品の改善に使える指標になります。

NPS の計算方法

NPS の区分と計算は次のとおりです(出典:Bain & Company ほか「Measuring Your Net Promoter Score」)。

区分点数意味
推奨者9〜10継続して使い、周りにもすすめる可能性が高い
中立者7〜8満足しているが、他に乗り換える可能性もある
批判者0〜6不満があり、解約や悪い評判につながる可能性がある
  • NPS = 推奨者の割合(%)− 批判者の割合(%)

例えば、回答者 100 人のうち推奨者が 40 人、中立者が 35 人、批判者が 25 人なら、NPS は 40 − 25 = 15 です(数字は説明のための仮の値です)。中立者は計算に入りませんが、乗り換えの可能性がある層として見ておきます。

なお、Net Promoter、NPS などの名称は、Bain & Company、NICE Systems、Fred Reichheld の登録商標です。

NPS が形だけになる構造

値だけを報告している

NPS の値を毎月の会議で報告するだけで、値が上がった・下がった理由を確かめないと、値は「見るだけの数字」になります。値が下がったときに打つ手が決まっていないためです。

理由を聞いていない

点数だけを聞く調査では、なぜその点数なのかが分かりません。批判者がどこに不満を持っているのかが分からなければ、改善の手の打ちようがありません。

回答の後に何も起きない

低い点数を付けた顧客に何の連絡もしないと、顧客は「聞くだけで何も変わらない」と感じます。次の調査で回答しなくなり、不満を抱えたまま解約に進みます。

値を担当者の評価に直結させる

NPS の値を担当者の評価に直結させると、回答を頼む相手を選ぶ、高い点数を付けるよう頼む、といった動きが起き、値が実態から離れます。

調査の設計

決めること決め方
対象契約中の顧客のうち、実際に使っている担当者(契約の担当者と使う担当者が違う場合は両方)
時期定期(半年や年に 1 回)と、導入の直後・サポートの対応の後など出来事の後の 2 種類
質問すすめる可能性(0〜10)と、その点数の理由(自由記述)の 2 問を基本にする
回答の手間1〜2 分で終わる量にする。質問を増やすほど回答が減る

理由を聞く質問は、「その点数を付けた一番の理由を教えてください」のように 1 つに絞ると、具体的な答えが返ってきやすくなります。

改善につなげる運用

NPS を改善に使うには、個別の対応と、全体の改善の 2 つの流れを決めます。

個別の対応(回答から数日以内)

  • 批判者:担当者か責任者が数日以内に連絡し、不満の中身を聞く。すぐに直せることは直し、直せないことは理由と見通しを伝える
  • 中立者:「何があれば 9〜10 点になるか」を聞く機会を作る
  • 推奨者:お礼を伝える。導入事例や紹介のお願いは、関係を損ねない範囲で行う

批判者への連絡は、解約の兆しを早くつかむ機会です。利用の状況などと組み合わせて解約の兆しを点数にする方法は、ヘルススコアの作り方と使い方で扱っています。

全体の改善(四半期ごと)

理由の自由記述を、商品・サポート・導入の支援・料金・営業の対応などに分類して集計します。批判者の理由で多い分類から、改善の担当と期限を決めます。改善したことは、次の調査の案内や顧客への連絡で伝えます。「声を聞いて直した」ことが伝わると、次の回答率も上がります。

顧客の声を商品の改善につなげる流れは、顧客の声を商品に活かす仕組みも参考になります。

始めるまでの手順

初めて NPS を取り入れるときは、次の順に進めます。

  1. 目的を決める:解約の防止に使うのか、商品の改善に使うのかを決める。目的によって、対象と時期が変わる
  2. 対応の担当を決める:批判者への連絡を誰がするか、理由の集計を誰がするかを、調査を送る前に決める
  3. 小さく試す:顧客の一部に送り、回答率と、理由の自由記述の中身を確かめる。質問の言い回しが分かりにくければ直す
  4. 全体に広げる:定期の調査の時期を決め、年間の予定に入れる
  5. 振り返る:四半期ごとに、値の推移、批判者の理由の内訳、個別の対応の結果をまとめ、改善の担当と期限を決める

2 の担当を決めずに調査を送ると、低い点数の回答が届いても誰も連絡せず、「聞くだけで何も変わらない」状態が最初から生まれます。調査を送る前に、回答が届いてからの流れを決めておくことが大切です。

調査の案内の文面では、回答の目的と、回答がどう使われるかを短く伝えます。「いただいた声をもとに、サポートの改善を進めます」のように具体的に書くと、回答率が上がりやすくなります。回答した顧客に改善の結果を伝える機会を設けると、次の調査への協力も得やすくなります。

実行時の落とし穴

他社の値と比べる

NPS の値は、業界や商材、調査の時期や対象によって大きく変わります。他社の公表した値と比べて一喜一憂するより、自社の値の推移と、批判者の理由の変化を見ます。

回答の少ない時期の値で判断する

回答が少ない時期の値は、数人の回答で大きく動きます。値の変化で判断するのは、回答が十分にたまってからにします。

満足度と売上を混同する

NPS が高くても、売上が伸びるとは限りません。満足している顧客が追加で購入しているか、解約が減っているかを、売上の数字と合わせて確かめます。満足度と売上の関係の見方は、顧客満足度と売上が相関しない理由で説明しています。

出典