展示会で集めた名刺が商談にならないのは、多くの場合、会期の後に「誰が・いつまでに・どの相手に」連絡するかが決まっていないからです。会期が終わると営業は通常の業務に戻り、名刺は入力待ちのまま数週間たち、来場者の記憶が薄れたころに一斉にメールが届く、ということが起きます。フォローを成果につなげるには、①会期中に来場者を分ける、②会期後の日程と担当を出展前に決める、③分けた相手ごとに連絡の仕方を変える、④終わりの条件と結果の記録を決める、の 4 つを整えます。

フォローが止まる構造

名刺の入力が後回しになる

会期中は接客で手が回らず、名刺の入力は会期後になります。入力の担当と期限が決まっていないと、名刺は営業の机に残り、フォローの開始そのものが遅れます。

全員に同じ対応をする

すぐに話を聞きたい来場者と、資料をもらいに寄っただけの来場者に、同じお礼のメールを送って終わりにすると、見込みの高い相手を他社に先に取られます。逆に、全員に電話をかけようとすると、件数に追われて見込みの高い相手に時間を割けません。

営業の評価に入っていない

展示会の名刺のフォローが、営業の目標や評価のどこにも入っていないと、今月の商談を優先するのは当然です。フォローが止まるのは担当者の怠慢ではなく、仕組みの問題です。

会期中に来場者を分ける

フォローの速さは、会期中にどれだけ分けておけるかで決まります。名刺を受け取ったその場で、次のような区分を付けます。

区分目安会期後の対応
A:すぐ商談具体的な課題と時期を話した。見積や訪問を求められた営業が 3 営業日以内に電話し、面談の日程を決める
B:関心あり課題はあるが時期が未定。資料を求められたお礼のメールと資料。2 週間以内に電話で状況を確かめる
C:情報収集話は短く、課題がはっきりしないお礼のメールのみ。以後は定期の情報提供へ
対象外競合・営業目的の来場・学生など記録のみ

区分は、名刺の裏に記号を書く、アンケートに区分の欄を設ける、名刺の読み取りのアプリで印を付ける、などの方法で残します。区分の判断に使う聞き取りの項目は、展示会アンケートの項目の作り方で扱っています。

会期後の日程と担当を決める

出展の前に、会期後の日程表を作り、担当者の名前を入れておきます。

時期やること担当
出展の前お礼のメールの文面・資料の用意、区分の基準を共有マーケティング
会期中(毎日の終わり)名刺の入力と区分の確認、A の相手を営業に割り振るマーケティング・営業
会期の翌営業日全員にお礼のメール(区分ごとに文面を変える)マーケティング
3 営業日以内A の相手に電話し、面談の日程を決める営業
2 週間以内B の相手に電話し、状況を確かめる営業またはインサイドセールス
1 か月後区分ごとの商談の件数を集計し、振り返るマーケティング

会期中の毎日の終わりに入力を済ませる決まりにすると、会期の翌日にはフォローを始められます。インサイドセールスの担当がいる場合は、B の相手の電話をそちらに任せ、営業は A に集中する分け方が取れます。役割の分け方は、インサイドセールスの役割と引き継ぎ基準が参考になります。

連絡の仕方

お礼のメール

お礼のメールは区分ごとに文面を変えます。A と B には、会場で話した内容に触れる 1 文を担当者が書き足すと、定型の文面より返信が得られやすくなります。すべてのメールに、送信者の名称、受信を拒否するときの連絡先、住所、問い合わせ先を入れます。特定電子メール法では、名刺などの書面で自らアドレスを伝えた相手への広告宣伝のメールは、事前の同意の例外に当たりますが、表示の義務はかかります(出典:日本データ通信協会 迷惑メール相談センター「特定電子メール法」)。

電話

電話では、会場で話した内容の確認から入り、「その後、社内でお話は進みましたか」と相手の状況を聞きます。いきなり面談を求めるより、相手の検討の段階を確かめ、次の一歩を一緒に決める進め方のほうが断られにくくなります。聞き取った内容は、予算・決裁者・必要性・時期の欄に残します。欄の作り方は、BANT の 4 項目と判定基準で説明しています。

終わりの条件

連絡を続ける期間と回数の上限を決め、上限に達したら C の区分に移します。C に移した相手は、定期の情報提供の対象として関係を保ちます。この段階の関わり方は、リードナーチャリングの進め方にまとめています。

実行時の落とし穴

名刺の枚数で成果を測る

名刺の枚数を目標にすると、会場で区分の聞き取りをせずに名刺を集める動きが起きます。展示会の成果は、区分ごとの商談の件数と、その後の受注で測ります。指標の置き方は、展示会 KPI を商談の件数で設計する方法で扱っています。

フォローの結果を残さない

電話やメールの結果を記録しないと、次の展示会で同じ相手に初対面のような対応をすることになります。結果は顧客の台帳に、日付と区分の変化とともに残します。

次の出展に振り返りを活かさない

1 か月後の集計で、区分ごとの商談化の割合、区分の付け方のずれ(C にしたが後から商談になった相手など)を確かめ、次の出展の区分の基準と日程表を直します。

出典