営業とマーケティングの連携がうまくいかない原因は、多くの場合、担当者の相性ではなく、部門ごとに別の目標を追い、見込み客の引き渡しの約束が言葉になっていないことにあります。マーケティングは見込み客の件数を、営業は受注の金額を目標にしていると、「質の低い見込み客ばかり来る」「渡したのに追ってくれない」という対立が必ず起きます。連携を作るには、①両部門が共通に追う目標を置く、②引き渡しの約束(SLA)を文書にする、③月に 1 回、同じ数字を見て約束を直す、の 3 つを整えます。

連携が崩れる構造

目標が別々になっている

マーケティングの目標が見込み客の件数だけだと、件数を増やすために条件を緩め、営業にとって追う価値の低い見込み客が増えます。営業の目標が受注だけだと、今月の受注に近い相手を優先し、まだ検討の早い見込み客は後回しになります。どちらの部門も自分の目標に沿って正しく動いているのに、全体として売上が伸びません。

引き渡しの条件が決まっていない

どの状態の見込み客を、いつ、どの形で渡すのかが決まっていないと、渡す側と受ける側で判断がずれます。見込み客の定義の決め方は、MQL と SQL の違いと定義の決め方で扱っています。

結果が返ってこない

営業に渡した見込み客が商談になったか、なぜ見送ったかがマーケティングに返らないと、マーケティングは何を直せばよいか分かりません。結果が返らない状態が続くと、両部門は相手を責める材料だけを集めるようになります。

共通の目標を置く

両部門の目標に、共通の数字を 1 つ入れます。多くの場合、次のどちらかを使います。

共通の目標向く場面
商談の件数(SQL の件数)商談から受注までの期間が長く、受注の数字だけでは月ごとの成果が見えにくい
マーケティング経由の受注の金額商談から受注までの期間が短く、受注の数字で成果を見られる

部門ごとの目標(マーケティングの見込み客の件数、営業の受注の金額)は残してかまいませんが、共通の目標の達成度を両部門の評価に入れます。そうすることで、マーケティングは「営業が追える見込み客」を、営業は「マーケティングから渡された見込み客」を大切に扱う理由が生まれます。

SLA に書く項目

部門間の約束(SLA)は、1〜2 枚の文書にまとめ、両部門の責任者が合意します。

分類項目書き方の例
マーケティングの約束渡す見込み客の数「月に○件の MQL を渡す」
渡す条件「業種・規模の条件を満たし、料金のページを見たか問い合わせをした」
渡す情報「会社名・担当者・閲覧した資料・問い合わせの内容」
営業の約束最初の連絡の期限「渡されてから 2 営業日以内に連絡する」
判断の期限「最初の連絡から 2 週間以内に、商談にするか差し戻すかを決める」
記録「差し戻すときは理由を選択肢から選んで記録する」
共通見直しの場「月に 1 回、両部門の責任者で数字を見る」
見直しの頻度「四半期に 1 回、条件と件数を見直す」

約束は、両方向に書くことが大切です。マーケティングだけに件数の約束を求め、営業の対応の期限を書かないと、約束は一方的なものになり、守られなくなります。

月次の会議の進め方

月に 1 回、両部門の責任者が同じ数字を見ます。1 時間以内で終わる形にします。

  1. 約束の数字(15 分):渡した件数、期限内に連絡した割合、商談にした割合、差し戻しの理由の内訳
  2. 共通の目標(10 分):商談の件数、または受注の金額の進み具合
  3. 直すこと(25 分):数字から、渡す条件、渡す情報、対応の手順のどれを直すかを決める
  4. 次の月の予定(10 分):展示会やセミナーなど、見込み客が一度に増える予定を共有し、営業の対応の段取りを決める

4 つめの予定の共有が、見落とされがちです。展示会の後に見込み客が一度に増えると、営業の対応が追いつかず、約束の期限を守れなくなります。展示会の後の段取りは、展示会後のフォローのやり方で説明しています。

連携が崩れたときの直し方

数字から、どこで崩れているかを確かめ、直す先を決めます。

崩れている場所疑うこと直す方向
期限内に連絡した割合が低い営業の手が足りない、見込み客の質を信用していない最初の連絡を担う人を置く、渡す条件を見直す
商談にした割合が低い渡す条件が緩い、渡す時期が早いMQL の条件を厳しくする、情報提供を続けてから渡す
差し戻しの理由が記録されない記録の手間が大きい選択肢を減らし、1 回の操作で記録できるようにする
商談は多いが受注にならない商談にする判断が甘い、提案の進め方の問題SQL の条件を見直す、失注の理由を確かめる

最初の連絡を担う人として、インサイドセールスを置く方法があります。役割と引き継ぎの基準は、インサイドセールスの役割と引き継ぎ基準にまとめています。

実行時の落とし穴

約束を作って終わる

SLA を作っても、月次の会議で数字を見なければ、数か月で誰も読まなくなります。約束は、会議で数字を見るための物差しとして使い続けて初めて意味を持ちます。

数字で相手を責める

会議で相手の部門の数字の悪さを責めると、次から数字を出さなくなります。数字は、約束のどこを直すかを決めるための材料として扱い、責任の追及には使いません。

仕組みを先に入れる

顧客管理の仕組みを先に入れても、目標と約束が決まっていなければ、両部門が別々の使い方をして、データがかみ合いません。仕組みを入れる前に、共通の目標と約束を決めます。仕組みの選び方は、SFA と CRM の違いと導入の順番が参考になります。